月王VS狂王(1)
垂れる血が一つ。
それは、命という壺を内側から支える力が徐々に壊れていく様。
誰もが【それ】を見ただけで死ぬ。それが彼の呪い。幼い頃から苦しめられ、そして今は見知らぬ人を苦しめる。
それは、呪いだった。人は見て、呼吸困難を引き押したり、アナフィラキシーを引き起こす。
彼の呪いは、人が死ぬ時を強制的に今に引きずり出す力。
死王 アンデットバーンは、ここにいる。この世の誰も必要としていない、絶対悪がここにいた。
◇◇◇◇◇
(何ですかね。この気配、いきなり生まれましたが…)
地下で戦うムーンは、地上で生まれた強い気配に少し気を取られる。上でプリスが戦っているのは知っていたが、そことはまた違う場所、もっと中心部に近い、面倒な場所である。
(めんどくさいですね。さっさとこいつを殺さなければ…だが)
問題は二つ。まずここが排水施設という事。ここに傷がつけば自分がアルピスを滅ぼすことになる。
もうひとつは彼女の事。確かエドの弟子か何かと認識していたが、ムーンは人の名前を覚えるのがそんなに得意では無い。
逃げなよ。と思っても彼女は足ひとつ動かさない。面倒この上ないが、死なれれば更にめんどくさい。排水施設から、血が流れるのはごめんなのだ。
そして、理想的な勝ち方は、排水施設を傷つけず誰一人死者を出さずして敵を殺す。脆いシャボン玉を手に置くぐらいの難題だが、やるしか無い。
その為にも――
「貴方をどうにかしなくてはね!」
「どうやってて? 殺すす?」
狂王アルレリトの固有魔法は【爆弾】。既に魔法の成長は止まっており、これ以上進化しないが、それ故に能力を使いこなしているとも言える。
狂王が、落ちている石ころを蹴る。それはムーンに直撃する時に大きく光り、ナパーム弾のように弾けて体に突き刺さる。
痛みはない、石は彼女に刺さる時に一瞬で塵になる。それはいい。だが、問題はそれによって傷つけられた壁や機械だ。
ムーンは悩む。ここから離れようものなら、狂王はついてくるがエドのコバンザメは死ぬだろう。かと言ってここで戦えば排水機能が死ぬ。
こっちが立てばこっちが立たずの平行線。であれば、ここで狂王を殺し、尚且つ排水施設を傷つけず、後ろの女を守るしかない。
一番簡単なのは、ムーンと狂王二人ぐらいが入るドームがあれば、彼女も安心して戦える。だが、それをムーンは持っていない。なので――
「狂王ってこの程度ですか?」
「は?」
「なんというか期待はずれですね。弱王の方がいいのでは?」
餌を垂らす。
ムーンは確信していた。必ず乗ってくると。狂王のようにプライドが高そうな奴は尚更、自分が馬鹿にされることを許さない。
そしてムーンの狙い通りお得意の語尾を忘れるほど、狂王の導火線は短かった。
「ほざくな! 狂王が貴様ごときに下に見られる筋合いは無いわァ!!」
…キレすぎだろ。と思ったが、それを突っ込むのもめんどかった。
正直目的は達成されている。狂王の怒りは、とても凄かったようで、虫けらのように見るムーンの目が本当に許せなかったのだ。
【固有反転!!】
狂王は指を鳴らし、領域を構築する。天井があるので小さく、エドのコバンザメを巻き込まず、二人だけの世界が作られた。
固有反転は基本的に構築した方が有利となる。だからこそ狂王は油断をしていた。
ムーンの狙いがそれであったのにも関わらず…
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