舞台を整える時間
「ここは?」
泥水のような匂いがする、水道管を歩くムーン。
調査に出たはいいが、普通に道に迷っていた。
部下を従えてなかったのが、幸いなのかもしれない。もし見られていれば、信頼なんて崩れ落ちただろう。
いや、部下がいればそもそも迷わなかったのかもしれないが…
「Aの21…なぜ同じ番号? もう少しわかりやすい感じにしてくださいよ。梅田駅ですか? ここは」
薄暗く、肝試しのような雰囲気のある水道管。
照明もあるが、何故か効き目が悪いようだ。
辺りを見渡しても、あるのは色々な出口だけ。
少し思うのは、話が違うということ。思ったよりも、壁に腐敗が進んでいる。話では、頻繁にメンテナンスがあると聞いていた。
「はぁ、せめて異音でも聞こえれば――」
その時、ムーンの耳に確かに叫び声が聞こえた。
だがこれは、男の証言とは違う。化け物の声ではなく…どちらかと言えば。
「女性の…悲鳴?」
◇◇◇◇
「さてと、やりますか!」
魔王アリスと化け物の戦いが始まる。
アリスは構え、化け物の動きを見ていた。
だが、化け物も動かない。両者共に、相手が動くのを待つ。
風貌、威圧、声からして、知性が無いように感じたが、どうやらそうでは無いらしい。
アリスの構えを真似ているという訳でもなく、確実に自分の技を持っていた。
「そうかい、意外と利口だな。じゃあ、こっちから行くぞ!」
アリスは、化け物に向かって走り出す。待ってたかのように、化け物は拳を突き出し、またもや両者の拳が衝突する。
魔力が溢れ、二つの魔力は溶け合うことなく、磁石のように反発し合い、青白い火花を産む。
彼の力は、全盛期の約十分の一程になっているが、それでもこの国を揺らすほどの力を持っている。
(さてと、俺の目的のためには、こいつを外に出さなきゃいけない。問題は二つ。まず、ここからどう出るか…と、なんか外でも戦いが起きている事だな)
その間も化け物との硬直は続くが、ついにもうひとつの手で、殴り掛かる。
つまらなそうな顔で、化け物の拳を受け止めようとするアリスだが、一瞬何か嫌なものが過ぎる。
(…! 雰囲気が変わった!)
体を回転させ、拳をかわしながら、その場から避難する。見ると拳の当たった地面が、徐々に溶けている。
これは――
「毒…だな。(だが妙だ。毒が使えるのなら、なぜ最初から使わなかった? )。まぁいい! それなら――」
彼の目線に、何かが入る。脇腹がめり込む。一瞬、右腹に痛みが走り、大きく吹き飛ぶアリス。
壁に激突し、瓦礫をはらいながら、ため息をつく。
だがこれは、自分への叱咤である。
「いいね。一体では物足りなかった。二体だな。いいぜ! 来いよ!」
【地下水道 中央部付近 アリスVS対ムーン戦闘兵器二体】
◇◇◇◇
「貴方は?…確か、エドさんの弟子でしたか?」
「…ムーン…様?」
必死の形相で、相方を連れて逃げてきたハクアは、ムーンに遭遇した。
だが、ハクアには疑問が現れる。彼女は、逃げると言うより、危険から逃れる為にあえて奥に入った。そして、彼女はムーンに出会う。
つまり、ムーンは奥から来ていたのだ。
「ムーン様。この奥に何か?」
「(言えない…迷ったなんて)私には私の考えがあります。それに――」
ムーンの目線に、一瞬の光が見える。あれは攻撃である。
ムーンは杖で攻撃を払う。砕かれた光は、それだけでも、周りの壁を破壊する。
ムーンの顔が少し曇る。見てわかる通り、黒幕の登場である。
「…貴方は?」
「おや、随分と悠長ですねね。あなたを殺す為に、何年も準備しているというのにに」
暗闇から、笑いながら歩いてくる奴がいた。足音は軽快で、敵がいるというのに、真っ直ぐムーンに歩いてくる。
「だからこそ、あなたはダメだだ。やはり、世界を導くのはあの方のみみ――」
一瞬で、腹が貫かれる。黒幕の腹は貫通して、闇に解けていく。それを見て舌打ちするムーン。
「はぁ、質問聞いてました? あなたは誰だと聞いたんですよ」
「なるほどど。私は狂王 アルレリトと申しますす。私のサーカス見てみますかか?」
「…遠慮します。饗宴は、あの魔王だけで十分ですよ」
その言葉と共に、月王と、狂王は、魔法を放つ。
その衝突は大きな風をうみ、何が何だか分からない、ハクアがちょこんと、そこにいた。
【地下水道 排水施設 ムーンVSアルレリト】
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