王国の歴史
初めの違和感は空だった。
何もかもが、平穏に暮らす今日この頃。
アルピスでは無く、その近くに住む農夫は、一言ポツリ。
「これは、雨が降りそうだな」
曇天の空、空に黒を混ぜた雷雲。祭が始まろうとしている。
近くにいた鳥は避難し、家畜は騒ぎだす。
いつもは賑わう国の門も、今日は綺麗さっぱり人一人居なくなっている。
誰もの本能が訴えていた。
【あの国に近づくな】と。
《超白星祭まで、あと1日。戦いが始まる一時間前》
「ごめんなさい」
アリエルとニャークルは、二人図書館で調べ物をしていた。
アリエルが、クスノキに祭りのことを話した時、明らかなる動揺。確実に祭りには何かがあると、確定せざるを得ないため、調べ物をしていた。
今調べているのは、王族しか閲覧することを許されていない、特記事項でもある王国書。
アリエルはひとつ子供の頃から、ずっと疑問を抱いていた事がある。
それは、この王国には【歴史が無い】のだ。
(子供の頃見た教科書では…アルピスという王国は、災害から人間を守る為に作られたと書いてありましたが、災害も、誰が建てたかも、年代すら明かされていない)
ニャークルの許可を得て、ついに彼女はこの国の真実に辿り着くことになる。
◇◇◇
その昔、アルピスという王国は存在しなかった。
前身となる国は、魔王国「アルカディア」という国であり、そこではある二体の魔族を崇拝し、統治されていた。
名を死王 アンデットバーン。
そして、【狂王 アルレリト】
この二体が国を象徴する悪夢だった。
魔族の圧政は留まることを知らず、最悪の歴史は次々に更新されていく。
民は息絶え、水は汚染され、空は晴れることはなく、暗黒が支配する。
だが、そんな中ある光が空を晴らす。
勇者サタンである。魔王アリスを封印し、英雄となった彼は、この国を救うべく単身で乗り込んできた。
サタンにとって予想外だったのは、王が魔族であった事だけ。
彼は、命令で襲う罪のない民を、覇気だけで気絶させ、何百と襲う魔族の部下を、蹴りだけで消滅させた。
ただ、王だけは魔族の中でもトップクラスであり、消滅させるだけの力が足りなかった。
サタンは言う。
「魔族の王は死んでいない。だが封印をした。だからこそ、数百年に一度封印を開け、新たな封印と交換するのだ」
こうして、民は感謝をし国の名前を変え、平穏に過ごした。
めでたしめでたし。
◇◇◇◇
アリエルは記述を見て、思考が止まる。
そして、回らない脳を無理やり回して、言葉を綴る。
「ニャークルよ。一つ前の超白星祭は、開催されたのじゃよな?」
「……いいえ。確か悪天候が続いた為、中止したと書いてありましたにゃ」
「………その前は?」
「中止…でしたにゃ」
アリエルの思考が加速する。
もし、今までのツケが回って来たとしたら?
クスノキ達に祭りの名前がわからなかったのは、アルピスのせいではなく、既に魔族の王が力を取り戻していたら?
何もかもが終わった国に、まだ恨みを持っていたとしたら?
「――っ! ニャークル! 私は一度王宮に――」
次の瞬間、図書館の外から大きな音がした。建物が崩れるような、破壊音。
聖王と邪王の戦いが始まった。
ここから、戦いは一気に加速を始める。
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