地獄の一歩
あけましておめでとうございます。以上!
「こちらの書類をお願いします」
時は戻り、超白星祭まで、あと一週間という所。
ムーンは今日も書類仕事に頭を抱えていた。
アルピスの王であり、教祖でもある彼女は、多忙を極め、対策が何も出来ていなかった。
人間は聡い。少しでも自分の顔が雲れば、直ぐに噂が広まるだろう。それは今の現状では最悪の一手でもある。
こんな時こそ、クスノキの浄化が欲しくなる所ではある。
「どうしました? ムーン様」
「…いえ、少し疲れただけです」
心配する部下に、棒読みで答えるムーン。腹の中では黒く濁る嫌な予感も、今は忘れてペンを走らせる。
無音が続き、耐えられなくなったムーンが口を開く。
「すいません。ひとつ聞きたいのですが」
「はい?」
「最近アルピスで、変な事…とか起こってませんか?」
「…変な事ですか?」
部下は少し考えてから、少し目線を落として答える。
「変な事…とまではいきませんが」
「それは?」
「最近自分の同僚が、地下から異音がすると言っておりまして。彼は夜中に外に出るのが好きで、最近は毎日聞こえると話していました」
「…異音。彼を呼べますか? ここに」
少しお待ち下さい。と部下は外に出る。
ムーンは顎を触る。考えすぎではあると思う。地下から音がするなど、幻聴の一つで弾かれてしまう軽い意見。
ただ、最近クスノキが、中央部を調査した所に涙王がいたのだ。
どこに敵がいるのか分からない。それが彼女の苦悩でもある。
眉間にシワが寄るのを避けて、ペンを走らせるとドアが開き、部下が入ってくる。どうやら、異音がすると言った同僚を連れてきたらしい。
ムーンは彼を通し、早速話を聞く事に決めた。
「話は聞いています。どうやら最近異音がすると?」
「…えぇ。正直ムーン様がこの話題に、興味があると思いませんでしたが、事実です」
「(一言余計だな…)…まぁいいです。それで、異音とは具体的にどんな?」
「それが…日によって変わるというか、叫び声に変わりないのですが、高音の日もあれば、低い日も」
異音は叫び声と分かる。ムーンの予想と違った。
水の音であれば、地下の排水管になにか異常があるととして終わりだが、彼は確実に叫び声だと言っている。
「異音について、他には?」
「他は…そういえば聞いたかもしれませんが、夜に聞こえていました。それに…」
「それに?」
「叫び声は、最初の方に比べて大人しくなった気がします。まるで【学習】しているみたいに」
彼の話に嘘は無い。何かが地下で蠢いている。
そういえば…と。ムーンは報告書を読む。クスノキ達が行った場所では、彼女が一人になった時、化け物と戦ったと記載があるが、それと同類なのだろうか?
だが、何故地下? 地下にいるのは、見られたくないからか、地下から何かを盗んでいるのか…
「分かりました。有難うございます」
「…あのムーン様」
「どうしました?」
「我々は、祭りを無事に終わらせられるでしょうか? なにか嫌なものが迫っている気がして」
「大丈夫ですよ、その為に私がいるんですから」
そう言って部下達を外に出す彼女。クスノキの報告書。地下の異音。超白星祭。
何が嫌な事が起こるには、確実に要素が揃いすぎていた。
(少し調査をするべきでしょうね)
その日より、ムーンは地下を調査するために、教会を留守にする。
そして、祭りの日まで帰ってくる事は無かった。
読んでいただき本当にありがとうございます!
新章開幕です。アルピスの地獄がここから始まります。
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