序章への一歩
一ヶ月書いてなかっただと!?
話し合い始まった。
でも特にそこまで苦戦はしない。ペテルギウスに関しては、直ぐに終わりそうだ。
だけど最初に確認しなければいけないことがある。それはあのうるさいオオカミのことだ。
「オオカミ? あぁモルトの事ね」
「えぇ。彼も私達の仲間なので、出来れば同じことをして欲しいですね。あと彼はどこに?」
「彼なら今、涙王がしかけた爆弾を解除しているわ。まぁ。もう終わったけど、涙王からの傷があって、彼とは会えないわね。
でも安心して、ちゃんと傷がいえたら彼にも同じ事をしてあげるから」
俺は頷くしかない。おそらく全てが本当。涙王の気配は感じていた。だが、なんかいつの間にか消えていた。あいつの目的はなんなんだろうな、考えるだけ無駄だろうけど、敵で…いいんだよな?
そんな俺を何も喋らず待つ彼女。
「あぁ、すいません」
「別に待ってないわよ? ただ、不思議ね。貴方はあっち側だと思っていたけど」
あっち側? 何の話だ? 何も分からないが、ひとつ分かるとすればディスガイア関係だろう。恐らく台風の目はあいつであり、陣営があると?
「何もムーンから聞かされてないようだから、教えてあげる。この世界はね、生まれた時に二つの陣営どちらかに所属させられる。ムーン側かディスガイア側か。貴方はムーン側かしら?」
…どうだろうな。この姿にムーンが関わっているのなら、確実にムーン側だろう。
話から推測するに、涙王はディスガイア側なのだろうな。あんなのしか居ないの? あっち。
「さて、本題に入りましょう。貴方には二つの権利がある。一つ目は私に一つ要求する権利、そして質問する権利よ」
「随分サッと言いますね」
「耳を立てていたのだから、これもさっき聞こえていたでしょう?」
分かってたか。という事は、聞こえるように話していたということ。意外と曲者だな。取引には律儀と思っていたが、変なところを見せると、足元をすくわれそうだ。
「私の要求は、ここにあるペテルギウスという剣が欲しいです」
「えぇ、渡してあげるわ。勝者にふさわしいからね。質問は?」
「質問は――」
正直無いんだよねー。あるあるだけど、質問していいと言う時は、大して思い浮かばず、終わった後閃くんだよなー。これが。
ただ、ここで変な質問したら、また聞き返されて泥沼にハマりたくない。であれば、適当でも真面目に聞くか。
「――貴方は、どちら側ですか?」
「…どちら側でも無いわ。私は選択するのが遅かったの」
カオリはその質問に、目を細めて横にそらす。相手の顔を見たくなく、相手に瞳を見せたくない様に。
…失敗したかな? 変な質問しちゃったから、変な雰囲気になってしまった。カオリも俺も黙っちゃって、何も喋らなくなってしまった。
「えっと、じゃあ質問を変えます。私が困ったら、助けてくれますか?」
「…!? ………えぇ、助けてあげるわ」
目を見開いたカオリは、その後聖母のように笑う。
確証は無い。証拠も無い。ただ信じてみようと思う。カオリが味方だと、あの笑顔が真実であると。
話し合いは終わり、俺達は合流する。そして最後の挨拶が始まった。
「アルミシアさんは?」
「私はブレインに帰るのです。目的の物は…まぁ、手に入ったと言って過言では無いのです。じゃあ部屋に戻るのです――」
不器用な人だ。最後まで、自分の本意が気づかれないと思っている。アルピスが無ければ、一緒について行きたかったけど、終わってからだな。行くとしても。こうして俺は、彼女が扉を閉めるまで、見ているしか無かった。
「エドさん」
「分かっているさ。ここからが戦いだ。俺もお前も、来週は生きているか分からんな」
「逃げます?」
「馬鹿言え」
そう、もう逃走なんて選択肢は残っていない。ここで俺達が逃げれば、アルピスの人間は全滅するだろう。
まだ、戦う理由は確実に固まっていない。最後の1ピースが足りない気がする。近くにある気がするのだか。
「クスノキ」
「カオリさん…その剣は」
「ご所望の品よ。「滅剣、ペテルギウス」どうぞ」
渡されたのは、柄は黒く、刀身の赤い少し大きい太刀のような感じだった。
俺の体では、少し扱いずらいが、まぁ慣れるだろう。意外と、センスあるっぽいし。
「エド、クスノキ。次の目的地をアルピスに変更したわ。だけど、最高速で行っても、着くのは祭り当日になるでしょうね。それまで、寛ぎなさい」
◇◇◇◇
「アルミシアさーん!」
「…クスノキ。あの別れから、追うのです? 普通」
忘れ物があった。渡さなければいけないものがある。ここまで彼女には、頼りっぱなしだった。
だから――
「これを渡そうと思って」
「何を…正気なのです? これは【フォールアウト】なのですよ?」
「えぇ、助けてくれたお礼です」
アルミシアは口を噤む。
勿論受け取りたい。フォールアウト無しでは、彼女は戦えない。例えブレインがこの世界とは全く違う物理法則だとしても、あると無いとでは、全く難易度が変わる。
ホワイトハウスからの援護あっても、彼女の革命はそれほど不利な盤面の上にあった。
だが、手が伸びない。「受け取れ」という心の中に、ほんの小さな「いいのか?」と言う声がある。
フォールアウトは見ていた。今であれば、主と認めてくれるだろう。
だが、アルミシアもここで成長をした。今気にかけているのは、革命の事では無く、目の前の小さな勇者の事。
彼女はこの剣無しでいけるのか? 戦えるのだろうか? アルミシアには、アルピスの戦いの規模が分からない。だが、勝ちに来たのなら、激戦になるのだろう。
目の前の勇者からは、瞳の奥に覚悟が見えた。であれば、自分の番はその後でいい。
「必要無いのです」
「え?」
「勘違いするな。なのです。ただ預けておくのです! 終わった後届けに来い。その剣をもらって、お前が死ぬのは、夢見が悪いのです」
「……そうですか」
「何笑っているのですか!!」
いや何、少し素直になったな。って感じただけ。ただそれを言うと、ビンタされそうなので黙っておく。
という訳で、もう少し力を貸してくれ。フォールアウトよ、最後の戦いだ。
「クスノキ」
「はい?」
「死ぬな。ブレインで待っているのです。それから…………ありがとう……ございました」
「……ふふっ。こちらこそありがとうございました。また会いましょう。では」
こうして、誇る俺と照れるアルミシアは、互いに振り返り別れていく。ほんの少しの小さな別れ。
戦いが始まる。アルピスの明日を分ける最後の戦いだ。魔族と人間。どちらが勝つか。それは、次の朝日が決めることだった。
次回【アルピス編。終幕 涙花赤銅編】
◇◇◇◇
「怪我の具合はどう? オオカミさん」
「知るか。俺抜きで話をしやがってよ」
「そう言わないで、モルト。貴方の話は彼等には余計だもの」
「…何の話だか。それで? 答えは?」
「YESよ。ホワイトハウスから、情報を提供しましょう。そろそろ涙王には、退場してもらわないとね」
「……テイキョクは、どんな感じかね?」
「きっと天国よ。色々な意味でね」
【黄金変容編 ~完~】
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次回より、バトルメインになります。年明けになりそうですね
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