なんでもないそんな日
「は?」
ここはテイキョク。涙王の本体がいる間。和室ときらびやかな装飾、少し黒いお茶を飲む着物姿の酔王がそこに居た。
彼女は感じ取った。ホワイトハウスに行った分身が死んだ事を。命令を完遂できず、無様にカオリに負けた事を。
彼女の持っていたコップが割れる。握りつぶし破片が畳にまう。お茶のこぼれは、彼女の怒りを表すように中々吸収されていない。
太陽が輝く。
「申し訳ありません。ディスガイア…様」
彼女の目から涙が一滴流れる。ガラスのように小さく冷たい涙滴。
「クスノキ…何なのですか? お前は」
その問いに答える者はいない。涙王の間に居るのは彼女一人。彼女が見る青空は、自分の沈んだ気持ちとは正反対に、何もかもを爽やかに見せていた。
◇◇◇◇
「初めまして…と。言うべきでしょう。クスノキ」
「貴方は?」
場所は変わり、オーナー室。まず初めにここには何も無い。比喩ではなく、文字通り椅子と少しの机しか無い。
正確に言えば、カオリの固有魔法によってテクスチャが貼られるまでは、無人の部屋なのだ。
逆に言えば――
「ここは窮屈ね」
――カオリが足を踏み鳴らす。ヒールの甲だかい音が小さな部屋で反響する。すると世界が置き換わる。何も無い白い部屋が、一瞬で幻想的な春の草原に変わる。
春の温かさも、草の匂いも、心地よい風も、たまに鳴く小鳥の声も全てリアルに感じられる。
…異常だ。そう思わざるを得ない。俺は唾を飲む。明らかな異質。アリスやムーンとは違う。人を傷付けない圧倒的力。
と言うか、これって固有反転じゃね? という疑問は話をややこしくしそうなのでスキップで。
カオリは指をさす。そこにはふたつの席と机。上には大きい傘が。貴族のお茶会のような場所だった。
「勝者の権利よ。これからあなた達の要望を聞くわ。ただし、一人づつね」
俺、エド、アルミシアは顔を合わせる。どうするか、と。決まりそうにないのでジャンケンで決めた。
◇◇◇
「こんにちは。アルミシア」
「よろしくなのです」
まず始まる面談はカオリとアルミシア。二人は当たり前に初対面。椅子に座り、ただ沈黙が訪れる。
アルミシアはこういうのになれていない。なので目を下にそらしてしまう。
「一応、ルールを伝えるわね。まず勝者の権限として、貴方には【二つ】の権利が与えられた
一・私に一つ質問をする権利
二・私に一つ要望をする権利の二つよ。慎重に選びなさい」
「…要望はどのレベルまで可能なのです?」
「無いわ。要望にレベルは無い。ありとあらゆる手段を使い、ホワイトハウスが全力で叶える。例えば――貴方の要望が、クスノキのフォールアウトだとしてもね?」
「知ってるのですね。何もかも」
悪魔のような小さな笑顔をするカオリ。机をトンと叩くと、何かが出てくる。小さな小瓶、青紫の以下にも――
「毒なのですか?」
「えぇ。あなたが望むのなら、クスノキと話す時に、彼女のお茶にこれを入れてあげるわ。そうすれば毒で死ぬ。そうすればフォールアウトは貴方のものよ」
「――結構なのです。あの女がそんな簡単に死ぬとは思えないし、それに毒殺したところでフォールアウトは私を主の認めないのです」
…そう。とカオリは瓶を消す。ここからはアルミシアのターン。とは行ってもすぐに終わる。
「カオリ。貴方への要望は、私の【革命】の手助け。電王を倒す資金と方法を要求するのです」
「いいわ」
「質問としては……今のブレインはどうなっているのですか? 私が最後に知った情報は、何年も前なのです」
「そうね、多分あなたが知っている情報とそこまで変わってないわ。あの国は今は大人しい。ただあなたが懸念している【計画】が、いつ始まってもおかしくないわね」
その言葉に、アルミシアの顔が強ばる。急がなくては…。と。彼女の戦いが始まるのはもう少しあと。だがそこで、彼女の旗は大きくはためくことになる。
◇◇◇◇
エドの話し合いを見ている俺とアルミシア。結局俺は最後でしたか。まぁ運がいいのか悪いのか。とりあえずどうしようかね。
「あのー、アルミシアさん。できれば」
「――カオリと何を話したとかは、言わないのです」
ですよねー。過去問聞くじゃないけど、ここで知れたら楽だったんだけどね。
因みにその後アルミシアは何も答えなかった。ただ何かを凝視している。あるのは草だが、見ていない。まるで見えない何かを見ているように。
「終わったぞ。クスノキ」
「――早くないですか!? まだ二分経ってないですよね!」
「まぁ、直ぐに終わったしな。早く行け、アルピスの祭りまで時間が無い」
はいはい。という訳でアルミシアとエドをバックに俺はカオリ居るテーブルにつく。
別にどうでもいいが、少し日本のような香水の匂いがした。いや何、オシャレなんかした事無いなと思ってね。
「初めまして、クスノキ」
「あぁ、どうも。初めまして」
これから始まる話し合いにしては、穏やかな最初の挨拶だった。
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