物事は意外といい感じに進まない
「ご主人様、昼食の準備が整いました」
「…十分前に食べたよな?」
「なんと、食欲が無いという事ですか?」
「無いんじゃなくて、満たされてるの! …本当に作ったの? だったら食べるけど」
「十分前に食べたじゃないですか」
「なんなのお前」
居る訳が無い。それは分かっている。ここは日本じゃない。だが…俺の目の前にいるやつは――
「…練魔?」
目の前のクロというメイドは、少しだけ首を傾げた。見えないのに頭の上に? が見える気がする。
「申し訳ありませんが、私の名前はクロと申します」
でしょうね。人違い…にしては似すぎだろ。深海のような目に、白すぎる肌。何よりあの声。幽霊でも見てるんじゃないか、というレベルの平坦な声。彼女の言葉は全て棒読み。感情が籠ってないのだ。
昔聞いた所「疲れるから」と言う理由で、フラットな人間になっている。
「お前の名前なんてどうでもいいのです。オーナーはどこにいるのですか? お前と同じで隠れていたりでも?」
おっと、空気が全く読めないアルミシアがズバッと言いました。
まぁ俺も気になってはいんだがね。オーナーがいるってだけで、声も姿も見た事ない。本当に居るのか? 銅像とかだったらめんどいんだけど。
「申し訳ありません。オーナーは今外出をしております。皆様をお待ちになっておりましたが、あまりにも襲い、とどこかに行ってしまいまして」
そりゃあすんません。でもそれエレベーターに行ってください。もしくはボタン壊したアルミシアに。
「そ、そうなのですねー。なら仕方ないのです!! そう! 仕方ない!! ですよね! クスノキ」
状況を全て理解したアルミシアは、これ以上問題を深堀させない為に、ゴマすりスタイルに切り替えましたとさ。全く、その判断の速さは尊敬に価するよ。そこだけね。
「ではそのオーナーは何処にいる?」
後ろから声がする。聞いた事はあるが、こんなどす黒い声してたか?
来たのはエド。アルギュワの話で太陽と戦っていた筈だが、ここに来たという事は勝ったのだろう。
勝ったんだよな?
「エドさん?」
「何だ?」
「勝ったんですよね?」
「勿論だ」
エドは少しだけ笑顔を見せた。ぎこちなすぎる虚栄。なんでそんなに苦しんでいるのかよく分からなかった。
あるとすれば、彼の服についている少し残った赤色。あれは…血なのかな? それを聞こうとすると、少し彼の顔が歪んだので、そっと心にしまった。いつか自分から話してくれるといいんだけど。
「オーナーは、先に問題を片付けてくるとVIPルームへと出発しました」
「問題?」
「えぇ、今このホワイトハウスに「涙王」が潜入しております」
…また涙王か。アルピスにもいたし、どこにでも居るな。てかしまったな。白王にこれの事聞いておけば良かった。
アルピスに居た涙王は、ムーンが消し飛ばしたって言ってたな。あいつもあいつで、脳筋にも程があるんだかね。
「VIPルームのどこにいる?」
「分かりません」
「いつ帰ってくる?」
「分かりません」
「じゃあ」
「――分かりません」
ピキっ。と質問していたエドの顔に血管が浮かぶ。その後、彼は何も言わずに振り返る。怒るなって言ったら、怒鳴りながら怒ってない! と言った。どう見たって怒ってるじゃーん。
「皆様少しお待ちに」
クロは一回手を叩く。そこから静寂。いや、エドを怒らせたのはお前なんだけど、と思っていたが、それを言わないのが大人だよね。
「――オーナーがご到着なされました」
ここからオーナーがついに姿を現す。だが、それはもう少し後。みんな少し忘れてないか? モルトと酔王の爆弾騒動について。
読んでいただき本当にありがとうございます!
あと6話ぐらいで黄金変容編は終了予定です。もう一度言います。ぐらいです。
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