震える手
『キモイ』
昔からエドが言われていた言葉。どんなに昔から言われても堪えるものがあるのらしい。
親・友達・教師・他人。全てから言われたこれは、今でもエドを構成する上で重要な要素だった。
何故なら――キモイという事は、その反対の生命体は好かれているという逆説であるから。
エドは昔からコミ障で、人の心が分からず恋人など一度もできたことすらない、掃き溜めのような人間だ。
だからこそ、異世界に来てからは努力した。コミ障を克服し、何とか人と接することが出来た。母親の影を忘れようとして、探偵の名に逃げる日々。
アルピスでは楽しい日々だった。決して裕福でも幸福でも無かったが、それでも刺激的な日々だった。
だが――どれだけ努力しても、人の心だけは分からない。寄り添っても突き放しても、見えるのは虚無だけ。
結局彼は、人間に興味が無かった。いや正確に言えば、【彼の予想以上に光る人間】がこの世には居なかった。
一人でも彼の心の氷を溶かし、動かした人間はいない。全ては彼の受胎的行動によるものだ。
だからこそ彼は死にたい。死んで楽になろうとも思っていない。ただ少し、期待しているのだろう。己の本心すら惑わす天使のような存在に。
「さてと、次はお前の番だな。プードル、四分の一だ」
「……」
平常通りにゲームを進行するレイズ。そして何も喋らないエド。これ程地獄か似合う状況も無いだろう。
だが、1番追い詰められたのは、紛れもないプードルである。彼女の手には数分前に自分の命を奪おうとした凶器。
震える手で触るこれは何よりも重く、そして奪う命は軽そうに見えた。
プードルは震えている。エドの方向を見ても、何も反応しない。レイズはまだ笑っているが、すぐに機嫌が悪くなり、暴言を吐くに決まっている。
四分の一だ。まだとも、しかないとも言える。彼女が前者か後者かは誰でも分かるだろう。
カチャ。
プードルは自分から頭に拳銃をつける。先程の冷たい銃口が頭につく感触。少し匂う火薬。
…ほんの少し見えてしまった。銃の中に【弾】があった事を。
彼女は理解する。自分の死を。ならばどうするか。
「…ごめんなさい」
震える手。涙の目でエドを見る。そして銃口をエドに向けた。明らかなルール違反。
「…へぇ」
レイズは何も言わない。それどころか進行しようとしている。
だが宣言しておこう。この勝負は、あとひとつの引き金で終了するという事を。
読んでいただき本当にありがとうございます!
星を増やしてくれるとありがたいです。
面白かったと思ったらブックマーク!
感想やレビューもお待ちしております!
星ももちろん大歓迎!
具体的には広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★にね。
そうするとロリのやる気が上がります。




