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永劫回帰は夢を見ない  作者: ユナ
黄金変容編

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小さな兎

轟くのは銃声。雷火は何もかもを蹴散らす。それが転生者であろうと原住民であろうと、何もかも一切合切全て殺す。

それを人は【悪意】と呼ぶのだ。


「さて…と。先行はどっちがやる?」


レイズの一言でプードルとエドは彼を凝視して、何かを訴えている。

それもそのはず。どう考えても先行が有利である。六発からハズレが一発と、五発からハズレが一発。どちらが精神的にも楽かなど猿でもわかる事だ。


「ハハハ! そうだよな。二人とも死ぬのは怖いか。生きてても何もしねぇくせに、ここぞとばかりに助かりたいか! いいね結構! それでこそ人間だ!」


何故か一人で目が血走り、熱くなっているレイズを無視してエドはプードル元い彼女に話しかける。

別にただの雑談、「あいつはいつもああなのか?」と。

彼女は何も答えない。ただ、彼女の目をそらす所作と、少し暗い表情で、【答えば殺される】という答えを導きだす。

(全く奴隷社会も真っ青の政治だ)と、彼は一つの大きなため息をついた。


プードルの容姿は決して悪くない。日本であればモデルになっていた理想体型である。灰髪に少し鋭い目、身長は少し高く胸は結構ある。

ただ少し覇気がなく俯き気味? が印象である。第一印象は七秒で決まると言うが、七秒でここまで分かるのだ。


彼らの間に一つ拳銃が地面を滑りながら、真ん中に止まる。それを持ったのはプードル。それと同時にレイズを見る彼女。

彼は悪い顔をしていた。口角は上がり、目元は伸びて、悪鬼のような顔。

彼は笑いながら、奥にある椅子に行儀悪く座る。片方の足を椅子に乗せるように。そして指をさす。


「プードル。拾ったな。じゃあお前が先行だ。これは主催者権限って奴だな」


これは嘘。レイズは最初からプードルに先行を渡そうとしていた。

別に身内に甘い訳じゃない。むしろ厳しい。そもそも部下に遠回しに『死ね』と言っているんだから、厳しいもクソもないのである。


「頭に当てろ。プードル、引き金を引けば終わりだ」


彼女は慣れた手つきで、拳銃を頭に付ける。安全装置すらない拳銃、倫理を馬鹿にした凶器を密着させる。

そこまでは順調だった。あとは引き金を引くだけ。だが、その少しの力が彼女には入らない。

それも当然。その引金ひとつ。たった六分の一で死ぬ可能性がある。後十秒後には死ぬ可能性がある。それだけ彼女の肉体は震えだし涙を流す。


「何? 早く引き金を引けよ」


この世に空気読めない選手権があれば、優勝候補のレイズの発言。彼からすれば今の状況は、苛立ちを募らせるニトログリセリンに他ならない。

軽やかで愉悦の時間は終わってしまった。顔が嵐の前触れのように曇っていく。


「あのさ、早く引き金引いてくれない? ここそんなに時間かける所じゃないよな?」

「…死にたくありません」


プードル目から大粒の涙があふれる。手は震え、声も掠れる。

彼女もわかっている。こんな事はレイズの逆鱗に触れる着火剤でしかない事に。だが、それでも――


「知るか。さっさと引き金引け。それとも何だ? 俺が殺してやろうか? 今すぐに」


無慈悲。レイズの目は、まるで家畜を見るような、確実に同じ人種に向けるような目では無い。鋭く軽蔑と失望を具現化したような鬼の目。

【逃げることは許さない】、【失望させる事すら許さない】。そんな理不尽が目の前にいる。


「分かりました! すぐに引きます…から」


プードルは怯えに負けた。震える体を必死に止めて、舌を噛み、目を瞑り、体を縮めて、必死に引き金を引いた。

――カチャという音ともに、空音がなる。弾は出ない。引き金は想像以上に軽かった。

六分の一。口では簡単だが、現実で見れば当たり障りのない確率。それをプードルは華麗に避けた。このターン彼女は生き残ったのだ。


「…はい次、エド」


プードルは、息も耐えたえに虚ろな目で拳銃を見ていた。自分が生き残ったという事実。そして逆に自分が死んでいたかもしれない事実。

それが一気に波のように押し寄せ、彼女の心は濁流のように澱んでいた。


――だが、その余韻もすぐに終わることになる。


カチャ。と音がした。プードルは下を見ていて気づかなかったが、その音を少し前に耳元で聞いた気がした。恐る恐る前を向く。

彼女も分かっている。前を向けば、受け入れ難い事実があることを。それでも見るしか無かった。


彼女の目の前には、もう既に引き金を引いた男がいた。自分が決死の覚悟で引いた指を、彼はまるでトイレに行くような感覚で、簡単に引く。

『異質』。これ程この言葉が似合う人間も少ない。プードルはひとつ間違いを犯した。それは目の前の男を人間だと思っていたこと。

勿論、身体構造的にエドは人間である。だが、簡単に引き金を引く、そんな自分の死を軽く見ている人間を彼女は見た事がなかった。


「あなたは…何者ですか?」


畏怖からでた彼女の言葉。震える目にうっすら涙を浮かべながら、彼女は男に問いかけた。帰ってきたのはただ一つだけ。

彼の目は深海のようだった。何も見ていないのに、何もかも見えているようなそんな目。


「――ただの人間だよ。少しだけ死にたがりのな」


読んでいただき本当にありがとうございます!


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