北風もいつか止む
「終わりました。あなたの負けです。アルギュワさん」
「…そうですね。私の負けです」
勝負は終わった。割とあっさり、カーテンコールを降ろすように全てがエンディングに向かっていた。
勝因はアルミシアの固有魔法だろう。まさか4手先ぐらいまで読めるとは。
だが、それでも勝つには至らなかった。そこから先は企業秘密。少しだけ俺がイカサマしただけです。はい終わり。
「…大丈夫ですか? アルミシアさん」
「は、話しかけるな…なのです。体が…動かないので…す」
固有魔法の使いすぎで動けないアルミシアを尻目に、こちらはこちらで話を進める。
少しだけ聞きたいこともあるしね。
「ではアルギュワさん」
「はぁ、分かってますわ。約束通り負けを認めます。目的はペテルギウスでしたわね? ここにはありません。オーナーの所に行ってください」
「オーナー? まだ上が?」
アルギュワは小さく頷く。だが、安心して、と。どうやらオーナーは勝負事に弱く、辿り着いた時点で望みの物を与えるとの事。
行こうか。アルミシアが回復したらそこに――
「クスノキさん。少し最後に」
「? 何ですか?」
「超白星祭の事です。アルピスで行われる祝祭。何も知らないのは不公平過ぎますわ。なので一つだけ」
アルギュワは、ひとつの指を立てる。そこから口を開き伝える。
「超白星祭で崇められている魔族は【二つ】一つは不明です。ですがもう一体なら。
その魔族は昔、勇者アリスによって討伐。そして封印された全ての国を内部からカビのように、腐敗させ滅ぼす。正に【最悪】名を――」
”死王 アンデットバーン”ですわ。
「それが、私の敵ですか?」
「それはどうだか。実際それが封印されてからかなりの年月がたっています。自我があれば大した物レベルですわ。ですが、超白星祭をやるからには意義があるのでしょう。お気をつけを――あぁ、アルミシアさんが回復したら知らせて下さい。出口を教えますわ」
そして彼女は振り返り、後ろの扉のドアノブを掴もうとする。だが――
「待ってください」
――俺の口からそんな言葉が出た。ここからはほんの少しプライベートだ。アルビスの未来も、このホワイトハウスも何も関係の無い話。
「…何ですか?」
「アルギュワさん。貴方は私の過去を知っているんですよね?」
「断片的ではありますけども…それが何か? 等と惚ける気はありませんわ。聞きたいのはあれでしょう?」
アルギュワは分かっていた。恐らく俺の記憶の中でもあれだけは異常だ。だからこそ聞きたかった。許されるのかどうかじゃない。あれは――
「私の罪はどう償えば良いでしょうか?」
「…償うのは不可能でしょう。貴方が生きていた世界はもう無いのですから。ですが、それを罪と呼ぶのであれば、私は【少しだけ貴方が嫌い】ですわ」
そう言ってアルギュワは今度こそドアから出ていった。その後に残ったのは少しの静寂。後まだ魔法で苦しんでいるアルミシアの声だけだった。
…あれが罪と呼ぶのか? 償うのは不可能? そんなのは俺が一番よく分かっているよ。だってあれは、全て俺が悪いんだから。
――妹は俺が殺したんだよ。クソッタレ。
◇◆◆◆
舞台は変わり、エドに移る。レイズによるロシアンルーレットの始まりだ。
だが、少しだけ勝負は中断している。電話のベルがなったからだ。
「おう。は? お前まじかよ笑 負けたか! 馬鹿じゃねぇの!? あー愚か愚か」
レイズの表情は正に悪ガキ。彼は別に勝敗は気にしない。勝つか負けるかなんて神次第だ。という屁理屈で太陽の名を冠している。
電話が切られる。その後も少しだけレイズは笑っていた。そして一瞬でその笑みは消えエドを睨む。
「おい、俺は少しお前らを見くびっていたらしい。まさか…北風を負かすとはな。どんな手段を…いやそもそもあのゴリラをどうやってだ? なぁエド」
「単純な運と実力じゃないか? だからこそ良い行いをしようとしている彼女らは勝てたのさ」
「…運ねぇ。俺がいちばん嫌いな言葉だ。まぁいい再開するぞ。てめぇの仲間はゴールに到達するチケットを手に入れた。それだけ。お前が行けるかはプードルの命次第だな」
――じゃあ再開するぞ。ロシアンルーレットを!!
読んでいただき本当にありがとうございます!
星を増やしてくれるとありがたいです。
面白かったと思ったらブックマーク!
感想やレビューもお待ちしております!
星ももちろん大歓迎!
具体的には広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★にね。
そうするとロリのやる気が上がります。




