逆転開始
パチン、と。アルギュワが指を鳴らすとゲームがリセットされる。先程の日本の風景は消え、元の宇宙空間に戻っている。どうやら本当にリスタートらしい。
術式が起動していく。また同じように浮遊感が表れ、ゲームがスタートされる。髪はなびき、目は開き、意識を高く保つ。
一応戦略としては、アルミシアに何とかしてもらう。だが最悪俺の固有魔法を使おうかな。ただ使いたくない。正直あの願いで固有魔法が構成されたのなら、発動した瞬間何が起こるかわからん。
この戦略の壁は一つ。
1・どうやってアルミシアを説得するか。
――正直これにかかっている。どうするか…うーん。まぁなるようになるか。
前を見ると、アルギュワが笑っている。どうやら先行は譲ってくらるらしい。では――と一言目を言おうとした時、止める声があった。
「待つのです。クスノキ」
「なんですか?」
「1番最初は私が言うのです。黙ってろなのです」
「そうですか。ではお好きに」
どうやら杞憂だったらしい。俺が何も言わなくても彼女はやる気になったようだ。それが俺が無能だからというのだからお笑い草である。
アルミシアの手に魔力が込められる。そして深呼吸…からの魔法を発動する。その表情は少し不安げで、だが堂々と前を見て発する。
【固有魔法! 電脳世界】
ここでアルミシアは、切り札を使うことになった。
++++
アルミシアの固有魔法である、電脳世界の能力は至ってシンプル。
【自分が望む最適解を計算によって導き出す】ものだ。電脳世界であるブレイン出身の彼女だから芽生えた能力であり、その力も現実も言うよりは、電子の世界に近い。
固有魔法とは、本人の人生の具象化とも言える。どうなりたいか。どう生きるか。どう戦いたいか。
彼女はこれに【戦いたくない】と答えた。これは臆病ではなく、剣を使わず、血を流さずに相手を殺す方法を知っているから。
情報、言葉。それは第二の見えない武器である。彼女の固有魔法は、それを駆使して戦う。
彼女の固有魔法が発動されると、魔力の向きが全て一定に操作される。今までちぐはぐだった魔力に指向性を持たせられる。
そしてその魔力一つ一つを繋げ、まるで蜘蛛の巣のように一つの巨大な網を作る。繋がった魔力は双方が作用し合い巨大な構築術式を作り上げる。
それはまるで、インターネットの二進数のようだ。彼女はその構築術式から演算を開始し、調子が良ければ未来予知すら可能である。まぁ今回はそこまで魔力操作ができていないのであるが…
+++
(使ってみたけど、ここの魔力特殊すぎるのです! クソ空間が!)
アルミシアの額に汗が出る。魔力を繋げるなど、普通の人間じゃ言葉にすら出ない。不可能だとわかっているからだ。だが彼女の固有魔法はそれを可能にする。それはメリットだけではない。繋げる為には相当の集中力が必要になる。
一番のデメリットは、タイムリミットがあること。繋げて演算が始まると、彼女の脳には大量の情報が流れ込んでくる。時間は五分。それを過ぎると、彼女の脳は焼き切れて、細胞崩壊が始まってしまう。
「クスノキ…もうすぐ演算が発動するのです。タイムリミットは五分」
「そうですか。十分です。始めましょう」
「フフ…随分と他人事なのです。これ割とキツイのです」
であれば急ごう。演算がどれ程のものか、それは分からない。でも何とかなるだろ。ケ・セラ・セラじゃい!
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