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永劫回帰は夢を見ない  作者: ユナ
黄金変容編
205/275

幕間 【あの日の夜】

本来なら終わったあとに書くべきですが、東京が出てきた事と、書き忘れていた話なので無理やりねじ込みました。特に見なくても不具合は起こらないと思います。

――東京。太陽が近い大都会。アスファルトから出る熱気で、空気が歪む八月の事。人々は半袖や冷たい飲料水で体を冷やしている。


ミーンミンミンミン

ミーンミンミンミン


セミが鳴いている。この時期ならどこでも聞こえる音。名もない音にルビをつけるのは、人間の性と言える。


「ママ、暑い」

「そうね。どこかですずみましょうか」

「うん! ――マ」


どこにでもいる親子。汗が吹き出る子供をあやす親。笑い声が耐えないそんな日のはずだった。

突然子供が絶句する。天真爛漫と言える九歳ぐらい、どれを見ても驚く年柄だろう。

だが、子供が今日見たのはそんな生易しいものじゃない。


歩く。歩く。ずりずり、ずりずり、と。痛みに耐え、視線に耐え、暑さに耐え、死に絶えなように必死にベロを噛んでいた。

歩くのは何か。男? 学生? その姿は制服。ただ【赤い】ワイシャツを着ている。夏服だからろう。動きやすい服にもかかわらず、男は息を切らして震えながら歩いている。


"その男は血だらけだった"


髪、顔、手、腹、足。至る所から出血をし、生きている事が不思議な程、目を逸らしたくなる地獄絵図だった。地面にはレッドカーペットのように赤い鮮血が軌跡を表し、錆びた鉄の匂いは発信機のように人々を振り向かせる。


最初に悲鳴をあげたのは、子供の親。子供の目を隠し抱いて逃げていく。一瞬化け物を見る目で男を見ていた。その顔は、夏というのに青く熟してないリンゴのような顔色である。

その悲鳴で携帯を出す人。救急車? いや動画撮影。ここまで来ても、助けた方が満たされるというのに、承認欲求が勝ってしまう。

無用でモラルの無い盗撮など気にとめず、ただ男は歩いていく。たった一言をずっと繰り返しながら――


「書斎…まで…書斎」


◇◆◆◆


先程も言ったように今は八月。誰もが暑さに耐え、笑っている。

だが、この家は…否。この屋敷は…それも否。この【独房】は…真夏というのに少し肌寒く、薄暗い深海のような雰囲気だった。男の耳に届くのは、自分の吐息と服の擦れる音。そしてそれに驚く小さな虫の羽音だけだった。

男は、一切の迷いなく書斎を目指す。この屋敷は比較的広く、廊下の端から端でも一苦労。それを二階分だ。時間がかかる。もう少し話そう。

男の歩きを耳に止める人は居ない。床を鮮血で汚して怒るメイドも、小さな箱で喜んだ母親ももう居ない。

男は足を止める。その部屋は固く閉じられている。だが、中からは大量のハエの音と、少し油断すれば内容物が出そうになる腐臭が香る。

男は「…マジかよ」と少し落胆して、書斎に向けて歩き出した。


扉を開ける。いくつもの本が積んである書斎。男の狙いはそこだった。

別に、男の目的と今の状況はさほど関係無い。ただ男には少し気になっていることがあって、その為に今日外に出ると36回も死にかけたのだ。

一枚の本をだす。ペラペラとめくる。触れる度にそのページに少しだけ血が滲む。だが、男はそれを機に停めない。もう時間がないからだ。


「…実験開始…目的…異世界…との通信。この世界は…違う世界の影響…を受けている」


ペラペラとページをめくるのが早くなる。読んでない訳では無い。ただそこは関係無いと本能が選別する。


「この世界…は、異世界との影響…根拠として…ピラミッドや…過去文明…特にあの遺物…は、破壊するべき…」


日記だ。誰かの科学者の日記。文字の大きさや文法が丁寧な事から、その人間の知性が伺える。

科学者は何かを破壊しようとしていた。ただそれは不可能だと諦めてしまっている。何が起きたのか? いやそれは今は関係が無い。本当に彼には時間が無い。出血量的にも外部的要因についても、同じ意味の時間が無いと言える。


「…あった。20××年。11月9日 ある人間の実験。その人間の、自己回復能力は課題にするべき程酷く、そこから名称を――壊れた世界という名の【アリス】と名付ける事とする。今後実験に進展無しと見れば、廃棄も案に――」


腹が熱くなる。いきなりの激痛。いや今までも地獄の痛みに耐えていたが、これは違う。なぜなら腹から刺さっているのは紛れもない【包丁】。三枚に下ろすかの如く軽く腹に刺さっている。


「…バッドエンドたね。誰が悪いか? もちろん君だよ。君が死にかけたもの、何もかも君のせいだ」


後ろの人間は慣れた手つきで、腹から包丁を抜き、それを男の首に当てる。まだ少し温かく、切れ味の鋭い包丁。そこから放たれる鉄の匂いは本来か、それとも血液かは判別が付かなかった。


男は死ぬ。最後まで何も分からなったバッドエンドに直行コースのふざけたシーンだ。

指した人間は出血多量で、倒れた男を見て一言だけポツリ――


「何もかも忘れなさい。君の役目はもう少し先。それまではこの世界で幸せに暮らしなさい。ねぇそうでしょ? (くすのき) 亜蓮(あれん)君?」


これは8月に起きた東京で起きる少し怖い難事件の始まりだった。


幕間 第一話 【結果:腹を刺されて死亡】


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