勇者&ハイエナVS北風(1)
穴に落ちる。そこに通じるのは奈落が地獄か。何も分からずただずっと下に落ちていく俺たち。
時間的には1分ぐらいのはず。だが謎の浮遊感と、変わらない壁のせいで時間が長く感じた。
「さぁ着きましたわよ。ここが勝負の場所ですわ」
何も無い場所。ただ床もないのに立つ場所があるだけの虚無の空間。机も無ければ、椅子すらない。
「ここでやるんですか?」
「えぇ、太陽の勝負場は、黄金で埋めつくされ眩しい所ですが、私は好きではありません。勝負とは相手以外に何も邪魔されない、神聖なものであってほしいのですわ」
それを聞いて、俺とアルミシアは納得する。頷き前を向いて、アルギュワを見る。
「――どうやら準備はいいようですね。では始めましょう! 北風の試練【しりとり】を!!」
北風は指を鳴らす。暗い空間が一気に真っ白に塗り変わる。急激な光度変化に少し目が眩むが、そこまで問題では無い。
北風は、俺に手を向ける。
「先行はお譲りしますわ。クスノキさん」
「…舐めてます?」
「えぇ、これ以上無いくらいには」
はいそうですか。では有難く。さて初めの言葉何にするか。普通に『しりとり』でもいいんだが、それだとつまらないし何か無いかな?
…そういえば、これって――いややってみよう。面白そうだ。
大きな声で放つ。俺の最初の言葉は――
「ダイナマイト」
一本の筒が、二人の間に落ちる。北風とアルミシアは不思議そうな顔で見る。火が導火線を伝って本体に着陸した瞬間、二人の目が変わる。
「トーラスライマ!」
ダイナマイトの爆風が俺たちを襲う――はずだった。無傷、いや…爆風すら届いていない。まぁ、そう上手くはいかないか。収穫があったから良しとしますがね。
「魔法ですか? アルギュワさん」
「えぇ、トーラスライマ。正確に言えば魔法具と言ってもいいです。見た目は箱ですが、入ったものを箱ごと異空間にワープさせる代物ですわ」
確かに、爆音すら聞こえなかったのはこのため。さてと、ちょっと整理をしよう。今わかったことは二つ。
1・日本の物も具現化できる。
2・魔法も使用可能(しりとりで成立すれば)
さてと、アルミシアの番だ。面白くしてくれよ。と思ってみると、アルミシアには何か秘策がある感じだった。
「ではアルミシアさん。言葉を」
「その前に一つ質問するのです」
「何なりと」
「しりとりで成立した言葉が具現化する。であれば【元々ある物を言葉する】場合どうなるのです?」
「その場合消滅します。なので服とかはやめて欲しいですわ」
アルミシアは、意を決して喋る。
「魔力」
この瞬間、この空間の全ての魔力が消えた。意外と何も無い。ただちょっと物足りないかな? 位になるだけ、まぁどうせ魔法が使えない俺からすれば、魔力なんて無いようなものだ。
「思い切りましたわね。アルミシアさん」
「これで先程の魔法具も使えないのです。ですから――」
「これで勝負が分からなくなったのでも?」
アルギュワはもう一度指を鳴らす。今度は高らかに、さっきとは打って変わって爆音で。
「場所を変えましょうか。クルーント!」
そして真っ白だった壁が、いきなり南国へと変わる。太陽の暑さが体を燃やす。人々の楽しい声が耳を揺らす。そして鼻が海風を撫でる。
…規模を間違えていた。このしりとり、成立すれば国すら具現化可能なのか。イカれてるだろ。
「良い風ですわね。やはりクルーントの海風は気持ちがいいですわ」
…ちゃっかり北風は南国を楽しんでいるし、アルミシアは「眩しい…」とずっと下を向いている。天国と地獄だなこりゃあ。
――ん? 待て、これって俺の元いた世界のも具現化可能なんだよな? そして国すらもいける。じゃあもしかして…
「さぁ、クスノキさん。あなたの番ですわ」
「えぇ…では――」
久しぶりに帰りますか。我が日本へ! さて鬼が出るか、邪が出るか行ってみよう!
「――東京」
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