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永劫回帰は夢を見ない  作者: ユナ
黄金変容編
203/275

そして彼らは走り出す

新芽は日の光を浴びて、土から這い出て美しい花を咲かせる。そして時が過ぎ腐敗を始め、全てはなくなり、そこには土だけが残る。

花があるときは、避けていた場所を平然と踏み荒らす生命体。美しい花弁があった事などとうの昔に忘れられているだろう。

涙王は語る「人間みたいですね」と。


生まれた時、彼女には何も無かった。ただ大地を滑る潤滑剤の塊。俗に言うスライム。それがシャイミールの最初だった。

自我もなく、仲間もおらず、何もかもが無い。最早生きているかも分からない、それが無辜であり、虚無の生き方だった。


そんな彼女が、なぜ自我をもてたのかそれはまた別の機会に。ただ正攻法ではなく、神に喧嘩を売る方法で得たとだけ伝えておく。


◆◆◆


「なんの用? 今忙しいのだけど?」

「えへへ、そう言わないでください。会えて嬉しいですよ? 私は」


涙王と舞王は仲が悪い。それはこの世界で生きているものなら、ほとんどが知っている事。

その為二人が収めている国も、たまに戦争をするほど仲が悪い。

なのでこの状況は、今静観しているウイスキーからしても、本当に不味い。彼は今落ち着いた表情をしているが、本心はめちゃくちゃ焦っている。

なぜなら、もしここで二人が暴れでもしたら、ホワイトハウスなど直ぐに沈没してしまう。

だが、シャイミールから放たれた言葉は、そんなウィスキーの頭を真っ白にする物だった。


「えへへ。この船に爆弾を一つ仕掛けました」

「――は?」

「驚きますよね? ウイスキーさん。えへへ、爆発したらこの船…沈んじゃいますよ?」


ウィスキーの頭に血が上る。いきなりやってきた部外者の王が、いきなりこの船の航路に王手をかけてきた。だが、次に発言する前に、トパーズの手がシャイミールの喉仏を掴む。


「爆弾を解除しなさい。涙王」

「えへへ、そんなに怒らないで下さいよ。お姉様、ただこの船が沈んで大勢が死ぬだけ。それだけじゃないですか」


根本的にズレている。シャイミールは称号を得て涙王になったから、こうなった訳では無い。

元から彼女の価値観はズレている、魔物として生まれ、数多の人間を殺してきた彼女からすれば、人間など虫のように生まれる害虫に過ぎない。

彼女が統治している国も、酷いものだがそれは別の話。


「さぁ、どうしますか? ウイスキーさん。爆弾が爆発したら…あれ?」

「――クッ!」


ウイスキーは、シャイミールの言葉を無視して走り出そうとする。爆弾が爆発すれば、この船が沈没するのは必然。であれば猶予など一刻もない。

だが、ウィスキーの足が止まる。彼が下を見ると、先程シャイミールから溢れ出ていた液体が、足枷のようにがっちりと固定している。


「えへへ、逃がす訳――」


足枷が外れる。トパーズが蹴りで枷を消し飛ばす。そしてウイスキーに目を向ける。「早く行け」と言わんばかりに。

ウイスキーは走り出した。少し彼女に向かって頷いてから。


「だから逃がす訳が無いでしょ!」

「――まず! 避けなさい!ウイスキー!」


シャイミールが手をウイスキーに向けて振ると、二発の小さな針が飛んでいく。それはウイスキーの目に真っ直ぐと向かっていき、その声に振り向いたウイスキーに直撃――


「させねぇよ!」


――する寸前、ウイスキーの目の前を拳が通る。見慣れた拳。下でずっと暴力を奮っていた一匹狼の力だ。


「…モルト?」

「おうよ。助けに来たぜ。後で金払えよ」


拳で針を粉々にしたモルトを見て、シャイミールは首を九十度傾ける。


「あれれ? おかしいな、貴方は後で裏切り者にする為に、拘束をしておいたはずなのに」

「おうよ。だが、あんな拘束具拳で全部砕いたわ!」

「…涙王の力を、拳で? えへへ、どれだけ脳筋なんです?」


ウイスキーの肩にモルトが手を置く。


「行くぞ。事情は外から聞いてた。爆弾が仕掛けられているんだろ? 止めようぜ。俺達で!」

「…本当に何が起きたの? 君。そんな熱血キャラだったっけ?」

「うるせぇ! 行くぞ!」

「はいはい!」


モルトとウイスキーはもう一度走り出す。もちろんシャイミールは止めようとするが、今度こそトパーズが全てを止める。


「ここは私が引受ける! 爆弾は任せたわよ!」

「邪魔をしないでくれません? お姉様」

「お互い様でしょ? 躾てあげる」


一方廊下を走っているウイスキー達は。


「それでウイスキー! 爆弾がある場所の当てはあるのか!?」

「そりゃあね。涙王は、爆弾を一つと言っていた。たった一つでこの船を沈めるのなら、場所も限られてくる。あるとすれば動力室だ!」

「なるほどね。行くか! ――って、こりゃあ」


ウイスキーの足が止まる。廊下にいるのは、シャイミールの液体から生まれた何か。魔獣のような姿をした敵だ。

他の人間には目もくれず、ウイスキーをずっと凝視している。数は百? それ以上かもしれない。


「これは」

「ウイスキー、俺の後ろにいろ。俺がぶん殴って道を切り開く!」

「…任せたよ!」

「おう、その代わり爆弾解除はそっちでな!」

「「行くぞ!!」」


こうして、三者三様。全ての役者が行動に移る。

クスノキ達は、自分の信念を貫く為に。エドは自らの生に終わりを付けるため。ウイスキー達は、この船に明日を残す為に。

このホワイトハウスでの戦いもついに終盤を迎える。果たして誰が生きて誰が死ぬのか、それはここからのお楽しみ。


【黄金変容編 第二部 決着編 始動】

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