三人の王
場面は変わり、エドでもモルトでも無く、ウイスキーに移る。
彼と舞王の話し合いはまだ続いていた。雰囲気は重く、時間は流れ、それでも結果はほぼ生まれない。要は時間の無駄だ。
トパーズは目を閉じて話す。ペラペラとツラツラとなんかよくわからない芸術論を話している。
ため息が出るウイスキー。ちらっと彼女を見るが、聞こえていないのか、話は終わらない。少しの安堵と(勘弁してくれ…)のふたつが心を支配した。
だったら話を遮ればいいと思うかもしれないが、ウイスキーにそんな度胸は無いし、第一ペースを崩された後のトパーズは機嫌が悪いのだ。
「で? あなたは【どっち】よ? ウィスキー」
「…ん? え!? 何? ごめん!」
いきなりの話題に驚くウイスキー。いつの間にか芸術論は終わり、こちらに問い掛けるものになっていた。
話はここから少しづつ加速する。
「あの…トパーズ。どっちとは?」
「だから声よ! あなた酔王になった時に声が聞こえたでしょう? 男? 女? どっち?」
「…えっと。女だったはずだよ」
「そう」
少しウイスキーの昔の記憶。彼が酔王になった時。頭がぼうっとしてよく聞こえなかったが女の声が聞こえた気がしていた。
【おめでとうございます! この世界のメインキャラクターとして、盛り上げて下さい!】
と、相手の事情も分かってなさそうな、空気のような軽い言葉が通り過ぎた。
「え? そうって…終わり?」
「えぇ。因みに私も女。聞きたい? なんでこんなことを聞いたのか」
「…うんそうだね」
「答えが遅い。黄金律を目指しなさい。簡単に言うと、称号を貰う…つまり力を授けられる時、女性と男性のどちらかが聞こえるという噂があるのよ」
「それに違いが?」
「さぁね。でもひとつ言えることは、何かしらの意味があるということよ。私達はもしかしたらチェスのような駒なのかもしれないわね」
「…力を授けた物がプレイヤーと?」
「さぁね」とトパーズは鼻で笑う。聞いた限り全て憶測だから、ウィスキーも4割ほどしか信じて居ない。
ただ(面倒事には巻き込まれたくない)とため息をひとつついた。
「二人だけで内緒話か? 俺も混ぜろよ」
トパーズとウィスキーは目を見開く。そして振り返り、ウィスキーのみさらに目を見開いた。
そこに居たのは、先程まで味方として行動していたはずの、男がそこにいたのだから。
「おかしいね。ここには結界を貼っておいたはず。普通の人間は入って来れない。しかもなぜ君がここにいる? 【モルト】」
「道に迷った…じゃだめか?」
「【本物】は何処にいる!!」
「落ち着けよ。眠っているだけだ。まぁ、次に目覚められるかは分からんけどな」
その時机と完璧な平行線の斬撃が、モルトを襲う。大きな音を立て、扉が結界事吹き飛んでいく。
だが、それでもモルト(?)は生きている。【人外】のような形状で。
モルトの首は取れている。だが、そこから血が吹き出すことはなく、透明な青い液体が出ては消滅を繰り返している。井戸水のように無限に溢れ、空気のように跡すら残らず消える。明らかに異常だった。
ウィスキーはモルトの正体がわかっていない。このホワイトハウスで、【彼女】が侵入していると知っていたのは、ごく数人だろう。
そして、このモルト(?)化けた人間を探すために、トパーズはここに来たと言ってもいい。彼女の目は、本物の宝石のように、瞳孔が赤く光り睨みつける。
「もう良いでしょ。そろそろ正体を見せなさい! それとも言ってあげましょうか! 涙王【シャイミール・アクアマリン】!」
モルトは、ニヤッと笑う。そして体が流体化を始める。彼女はこの世界で初めて意志を持って生まれた魔物。
それ迄は、魔物は何も考えず全てを食らう生命体だった。言い得て【初めて進化した魔物】と表せる。
ある場所では、魔物と呼ばれ、聖女と言われ、神とも言われる醜悪の権化。
そして元【アルピス】の王。それが【六王 第三の王】シャイミール・アクアマリンである。
ウイスキーからすれば、今の状況だけでもめんどくさい。だがこの問題をさらに加速させるのが――
「えへへ。お久しぶりですね。トパーズお姉様」
「えぇそうね。久しぶり。我が妹、まぁ会いたくなかったけどね」
――こいつら姉妹である。全く似てないのは、愛嬌という事で。
読んでいただき本当にありがとうございます!
状況がカオスになってきましたね。
星を増やしてくれるとありがたいです。
面白かったと思ったらブックマーク!
感想やレビューもお待ちしております!
星ももちろん大歓迎!
具体的には広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★にね。
そうするとロリのやる気が上がります。