二百越えても結局何も変わらない
二百話突破です。今年中にアルピス編を終わらせたいな。
「嫌いなのです。お前なんて」
「そうですか。で? どこに行きます?」
二人は歩く。クスノキとアルミシアは、二人で手を繋ぎ奴隷ルームを歩く。
時折アルミシアは、手をほどこうとするが、クスノキの力は強く離してくれなかった。
最初はどうやって手を解くか? と考えていたアルミシアも力に観念したとか、ため息をついて前を向く。
周りは石の壁でできており、色々な人間が汗をかいて働いている。
奴隷ルームの仕事は主に2つ。
1・燃料の補給
2・アルギュワのご飯を作る
1は、ホワイトハウスの燃料を補給する仕事。この船は魔力で動いているが、その為に特殊な鉱石を燃料補給の穴に入れる必要がある。
簡単だと思う人間もいるが、実は難しく扱い方よりも運搬方法が難題である。
この石は「魔法石」と言うもので、文字通り魔法で出来ている。
この石が難敵で、1として同じ石がない。例えば普通の魔法石もあるが、高熱を持つ魔法石、触れると皮膚が溶ける毒を放出する魔法石なんかもある。
要は、この魔法石での事故が絶えないのだ。死亡者など腐るほど居る。
だが、見返りも多く1つの魔法石を運ぶだけで多くの金が貰える。ハイリスクハイリターンの地獄だ。
「この人達は随分と必死なんですね。借金を返すのに」
「当たり前なのです。まいた種を刈る…という訳では無いですが、全て自業自得で説明がつくのです。そしてそれは、債務者がいちばん分かっている事なのです」
クスノキは、喋りながら前に進む。振り返らずにただ進む。それは"ただアルミシアの顔を見るのが怖かった"から。
なん事なしに振り返る。そこには、今にも泣きそうな小さい女の子がそこにいた。
「何です?」
「いえ…あなたも泣くんだなと」
「人を人形扱いなのです? そりゃ泣くのです。…こんな人でなしにも涙ぐらい流させて欲しいのです」
プイッと顔ごと逸らす仕草に、少しだけ胸が踊った気がした。別に共感とか、同情とかじゃない。ただ、少しだけ彼女のことが知れた気がして嬉しかっただけ。
だからこそ分かる。彼女は動きはしない。例えどれだけ綺麗事で自分の言葉を飾ろうと、それで彼女の心は動かない。そんな潤滑剤など特に消え失せている。
であればどうするか。答えを教えてくれたのも、また彼女なのだ。だけどそれは彼女には言えない。言ったらどうせ変な事言われるだけだからな。
「アルミシアさん。私はあの北風を倒さなくてはいけません。協力して下さい」
「…勝てるのです? ギャンブルにおいて自信があるやつは厄介なのです。自分の手札を疑わない。勝利を確信している…それは――」
「分かっています。それは難しい勝利になるでしょう。ですが、私はここで足踏みしていられない。そして…」
アルミシアの顔はまだ暗い。やる気が出ていない。子供同じだ、であればやる気を出させるのも簡単。餌を見せればいいだけ。
「アルミシアさん。もし安全にホワイトハウスを抜けアルピスに着けたらフォールアウトを差し上げます」
「…正気なのです? 自分の愛刀なのですよ? それを」
「きっとこの勝負に勝てば剣も貴方を認めてくれるでしょう。だからもう一度言います。どうか私に協力を!」
俺は彼女に向かって、手を差し出す。いわゆる握手という物だ。ここで手を跳ねられても仕方ないと思っている。その時は1人で戦うだけだ。そして――
「ふふ! 来ましたわね! 御二方!」
堂々と仁王立ちしたアルギュワの前に、現れる恐らく最弱の挑戦者。北風であれば、フッと吹けば飛ぶ存在。それでも…私には負けられない理由がある。まだ誰が正義か…アリスが敵かもわからない。だけどきっと俺はアルピスを助けたいんだろう。だから――
「協力はこの船だけなのです」
「はいはい。素直じゃないですね」
「行くのです。ここから始める、都落ちなのです!」
「えぇ!」
「「貴方をここで倒します」のです!」
コクン、とひとつ頷いたアルギュワは、指を鳴らす。その瞬間、床が抜ける。落ちた先は海のように水? のような物質がみちる部屋。だが、落ちた訳では無い。まるで別の空間に移動したかのような…違う世界に踏み入れた感覚だった。
「安心なさい。ここが勝負の場ですわ」
フワッと落ちるアルギュワは、こちらを見てウインクした。少し笑って、解説を続ける。
「――ここは、ホワイトハウス限定の魔法空間です」
アルギュワは、もう一度指を鳴らす。すると色々な情報が世界に映し出される。星屑のように情報が出ては消え、流星のように自分の頭の中に入っていく。そしてここで初めてこのルールを理解する。
「これは」
「…えぇ。クスノキさん、あなたは知っているかもしれませんわ。今から始まる勝負は言葉のみが武器。古来よりこの世界でも遊ばれた言葉遊び。名を【しりとり】と言うものですわ」
「それがこの北風での勝負なのです?」
俺の横で落ちているアルミシアの言葉に、アルギュワは指を振る。どうやらいい線をいっているようだ。
「確かにしりとりですわ。ですが、少し違います。この世界ではしりとりの言葉が現実になる【現実化しりとり】ですわ!」
そして俺達はさらに下へと降りて行く。そこが勝負のフィールドだ。始まるのだ、勇者とハイエナの即席チームが贈るドタバタしりとりが。
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