決壊する感情
アルギュワによるアルミシアの論破。それから少し経った時の事。
アルミシアは、何も言えずそのまま出ていってしまった。俺は見ているだけだが、助けるべきだったが? いや、俺が口出ししても無駄だったろうな。
俺は彼女について、何も知らないんだから。
「 クスノキさん。追いかけないの?」
「えぇ、彼女は少し一人の時間が欲しいでしょうから」
アルギュワは、少し笑っていた。太陽のように微笑み、こちらを見る。
だが、こちらも何も喋らないのは、少し気まずいので世間話でもしよう。
「アルギュワさんは、いつから北風になったんですか?」
「正式になったのは、約五年前。それまでは太陽が一人でここを仕切っていたのですわ。最初は私も彼の下につこうと思っていました。でも――少しづつやつれていく彼を見てられなかった」
甘かった。紅茶でもケーキでもなく、その場の空気が。典型的なラブロマンスをみえいるかのような、自分に縁がない話だったと思っていた。
ただ直接自分の耳で聞くと、少しむず痒いものがある。そう思うには、まだ生きた年数が足りない気もするが、それはそれだろう。
「…そういえばクスノキさんは、どうしてホワイトハウスに?」
「あぁ、それは――」
そして俺は、ペテルギウスという聖剣。アルピスを救うためなど色々なことを話した。
聖剣の話をすると、アルギュワの顔は少し真剣になる。
「クスノキさん。ペテルギウスは確かにこのホワイトハウスに存在しますわ。安心してくださいましてよ。ふふ。でもアルピスを救うとは、なんの為に――」
「超白星祭ですね? クスノキ様」
アルギュワの悩みに、ギラリスが答える。彼の顔は真剣でこちらをじっと見る。
「超白星祭? なんですの? それ」
「お嬢様が知らぬのも無理はありません。この祭りは、アルピスのみで行われる儀式の様なもの。その国の人間で無ければ、参加することすら許されぬ催事です。ですが、クスノキ様がその祭りに首を出すということは、ただ事ではありませんな」
「どういう事ですの? ギラリス」
「…何故ならその祭りは、この世界の【神】が降臨すると言われているからです」
流石、白王色々知ってんね。だがこれ以上は教えてくれないとの事。
そこからは…
「アルミシアさんと一緒に?」
「そうですわね。そろそろいいでしょう、迎えに行ってあげて下さい。きっと泣いてますわ」
アルギュワは、少し俯いていた。言い過ぎたと思ったのだろう。まぁ別に俺はそう思わないが言わぬが仏だろう。
彼女の家を出て、家出少女を追いかけるとしますか。
◆◆◆
「何しに来たのです?」
「迎えに来ました。アルミシアさん」
彼女は意外と近くにいた。奴隷ルームを上からずっと見ていただけ。何故か俺には、直ぐに場所が分かった。
確証は無い。でもきっと…
「似てますね。私達は」
「…目が腐っているのです? 何処がなのです?」
「だってこんなにも、重い運命を背負っている」
「それは…はぁもういいのです。きっと同じなのでしょうね」
きっと俺達は、明日が来ることを望んでない。今日で死ぬのならそれでもいい。そんな自殺願望の塊が俺たちだ。
でも…
「クスノキ…どうすれば良かったのです?」
「…」
「あのアルギュワの言葉に、私は何も言えなかった。正論だと、心の底から納得してしまった。うぅ。父親が失敗したと! 否定したいのに! 何も言えなかった!!」
雨が降っている。ここは室内、雨など降らないはずなのに、俺の目には雨が映る。彼女の目から溢れる雨は、頬を濡らしボトボトと下に落ちていく。
歯ぎしりする音も聞こえる。涙を我慢していた声も聞こえる。誰かにずっと助けを求めていた声も聞こえる。
でも、彼女に救いの手を述べる人は、誰一人としていなかった。
「ごめんなさい」
「…なんで謝るのです?」
「私は、初めてあなたにで会った時に、酷い事を言ってしまいましたね」
「あぁ、そんな事もあったのです。懐かしいのですね」
雨が強くなる。この体になって初めてだ。【涙が溢れ出した】のは。止まらない、決壊したダムのように、止まることを知らなかった。
なぜ涙が出たのか、同情なんてものじゃない。そんなもの俺にする権利なんて既に朽ち果てた。
きっと体が叫んでいる。彼女を救えと、勇者ならば、偽善者ならばここで立ち止まるなと。
だから――
「少し歩きませんか? アルミシアさん」
「いや、私は」
「行きましょう!」
俺は、彼女の手を無理やり握りって、そこから歩く。抵抗される可能性もあったが、彼女にもうそんな気力はなかった。
少しでいい。逃げ出そう。使命も、生まれも何もかも捨てて、二人だけ。
少しだけ無邪気な、お出かけというやつだ。
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