昔の記憶
Q・クスノキに対する好感度は?
エド――どうでもいい
アルミシア――嫌いなのです♪
モルト――好感度…ねぇ。変な奴だなとしか
酔王――それ酒のつまみになる?
クスノキ「ねぇ! おかしくないですか! こんなに嫌われる主人公います!?」
この世界には、二種類の人間がいる。死にたい人間と生きたい人間。だが千差万別あろうと、前者の人間は少ないだろう。
それでも、彼は心の底から死にたいと思っていた。名を――江戸川銀次と言う名前で。
彼の人生を一言で言うのなら、極端だろう。彼は生まれた時から天才だった。右から聞いた一の知識を、口から百の知識として吐き出す。誰もが出来ないことを、簡単にやるそんな男だった。
大学に首席で入り、色々な賞を受賞し華やかな人生を送る彼。それでも、彼の心は満たされなかった。
「江戸川さん。この現象は、神が与えてくれた祝福ですよ! おめでとうございます!」
「えぇ。あの、治すことは?」
「そんな勿体ない! あなたは選ばれた人間なんですよ!!」
彼には、祝福という名の欠陥があった。それは【一度見たものを忘れられない】と言うものだ。学名で言えば、完全記憶能力という物で、誰もが羨む能力だ。
だが、それは第三者から見た感想であり、本人からしてみれば地獄でしか無い。
「母…さん」
江戸川の母は、彼が十歳の時に自殺した。首吊りによる簡易的な物。
原因は、勤めていた会社でのストレス。朝から晩まで無理な仕事を続けていたせいで、精神が壊れてしまった。
この時、江戸川は母親を見てしまった。相手は目が合うはずのない死体。だけれども、その死体はこちらをずっと見ているような気がした。
江戸川は、今もずっとその顔が記憶から剥がれ無い。忘れたくても忘れられない。死体の匂い、痙攣した体、虚ろな目、綺麗な字で書いてある遺書。
どれもが、江戸川の人生の片隅で燻っている。朝起きる時も、昼間も、寝る時も母親の顔が離れない。
「母親の死が忘れられない? マザコンが! 気持ち悪いんだよ!」
もちろん、江戸川も誰かに相談はした。だが、帰ってきたのは罵詈雑言。
誰からも理解されず、誰も愛せない。それが江戸川の人生だった。
「死にたい。死ねば楽になれるのか?」
江戸川は、いつの間にか崖にいた。下には、大いなる海。落ちればまず助からない、地獄の穴だった。
今頃、江戸川の遺書を読んだ他人は、必死に彼を探しているだろう。彼はそれを見ても何も思わ無いほど、もう誰にも期待していなかった。
彼は目を閉じる。重力で、体が落ちていく。崖から登る潮風に揺られながら、彼は海に落ちた。中は激流、彼の唯一の幸運は、落ちた衝撃で意識を失った事だろう。
「ここは?」
だが、江戸川は死ねたが、死ねなかった。いきなりの転生だ。何も情報も、武器すら与えられず、見ず知らずの世界に放り投げられた。
幸い、彼には日本での知識があり生きるのにな困らなかった。
だが、江戸川の欠陥は終わる所かさらに悪化していた。
それは「日本にある全ての記憶が、異世界に言った瞬間にバグり、江戸川の感じられる世界の認識が希薄になる」という最悪の結果だった。
それでも彼は明るく演じる。探偵事務所で、よく見えない字を見て、よく聞こえない耳で会話を聞き、ホワイトハウスで味が分からない酒を飲んでいた。
モルトが言っていたように、アルピスでの彼は、偽物の姿。彼の本質は、誰もいない場所で、ただ風が吹いた場所を向く風見鶏のような存在がエドだ。
彼のホワイトハウスでの目的は、死ぬ事。誰にも迷惑かけずに、石が下に落ちて砕けるように死にたい。
それが彼の望み。もちろん【太陽】は分かっている。だからこそ、彼との勝負はしない。なぜなら彼が負けても勝っても、どちらにしろエドは死ぬからだ。
ロシアンルーレットで死ぬのは誰か。それは分からない。だが確かなのは、エドが銃口を向けている時も、目を閉じれば母親の顔が彼の心臓を握り潰そうとしているということだけだ。
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