作戦開始(モルト、エド陣営)
クスノキ達が、奴隷ルームで白王と会う数刻前、VIPルーム表でも動きがあった。
カラカラ、とダイス鳴る。男は、黒を選択しそのダイスは、見事黒に落ちる。
ただその金額ははした金。彼がそれを説明する前に、同行者がついに苛立ちの限界突破した。
「おい…」
「何だ? モルト」
「何だじゃねぇよ。何やっているんだよ、、もう四回目になる質問だぞ」
「見て分からないか? ギャンブルだ」
いるのは、エドとモルト。質問したモルトの"んな事わかってるわ!"って言う言葉は、何とか喉の奥にしまって、冷静に話を進める。
「はぁ!? んな事見りゃわかるわ!」
――冷静には無理だった。モルトの苛立ちにも仕方なのない事があり、エドはもう日本時間で一時間以上適当にギャンブルをやっている。
モルトも、彼がクスノキの、同行者だと分かっているので、多少の信頼はしているが、信用と盲信は違うと思った上で話を進めた。
勿論エドもそれをわかった上で、無視しているのだが流石にウザイなと思ってしまった。
大きなため息をついた後、凪のような目をして話し始める。
「モルト、釣りは好きか?」
「…一応聞くが、関係あるんだよな? 今の状況と」
「いいから答えろ。ダホ」
「(コイツ…)――好きかどうかと聞かれれば、NOだな」
少しだけ、エドの目が変わった。どうやら、それほどモルトの否定が意外だったらしい。
だがその、水面も直ぐに消えてしまい、いつものエドになった。
「そうか、まぁどちらでもいい。…理由を聞いていいか?」
「どちらでも良くねぇじゃねぇか。…まぁいい、強いて言うなら、【金にならねぇ】からだな。釣りするぐらいから、適当にギャンブルしてた方が遥かに稼げる」
エドは「そうか…」と声を出して、またそっぽを向いてしまう。その目線は、白い壁のように、何もかも拒絶するような、冷ややかな目をしていた。
これには、流石にモルトもブチギレる――が、それよりもある疑問が残る。これは、彼がエドにあってから、ずっと感じていた疑問だ。
「おい、お前の質問に答えたんだから、こっちからも質問するぞ」
「…なんだ?」
「お前の事は、クスノキから聞いている。探偵事務所を開いて、いつも明るいとな。"今の俺の印象は、そんな状況とはかけ離れている。"…お前の身に、【VIPルームで何が起きた】んだ?」
後々に判明するが、この質問はこのVIPルームの確執を抉る質問だった。
エドは、口を開く。その言葉から、何が出るのか――だが、その言葉は出ることはなく、全く違う展開が起こりうる。
「――ん?」
「おい、どうした? どこ向いてんだよ」
エドが、ギャンブル台の方を向く。そこにさっきまで無かった、ダイスがふたつ。【1と7】を指している。
それを見て、エドは笑った。やっと釣れたと。大物が引っかかったのだ。
ずっと待っていた。エドがクスノキを置いてVIPルームに行った理由もこれだ。
全ては自分がいると、アピールする為。酔王から言われた、ある一つの情報が、ついに確定したのだ。
「…賽は投げられた、、か。行くぞモルト」
「ん? いや行くってどこに?」
「そりゃ勿論――」
エドは指をさす。二人がいるのはちょうど真ん中、モルトはこの船の構造を把握している。彼の指の先にあるのは。
「――船長室にだ」
…波にゆれ、進行方向を決める舵。その舵は、どこまでの人間の運命を握っているのか。
そんな中、船長室の【彼】が持っていたダイス、小さく音を立てて床に落ちる。そっと静かに落ちた。
「それで? 僕のダイスは、送ってくれたかな?」
「はい、エド様とモルト様は、現在船長室に向かっておいでです。楽しいゲームが味わえる事でしょう」
そうやって、バニーガールが彼に微笑みをかけた時、銃弾が彼女の二の腕を貫通する。
銃声、倒れる音、悲鳴、どれをとっても騒音だった。
「…あのさ、何時から【俺】の事をわかった気になっていたの?」
「…も、申し訳…」
はぁ、怒る気すら失せるな、という目線でバニーガールを見る男。
彼は、手を叩いて負傷した彼女を、手当しろと他の部下に伝える。
そして、皆が即退散し、船長室には彼だけが残る。ここはホワイトハウスの最先端。彼の目線に次の駅がある。だが、次の駅は到底見えず、地平線が彼の瞳を惑わすだけであった。
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