白の王
「ここが――」
「えぇ。ここが奴隷ゾーン。全ての罪人の行き着く果てなのです」
何かをしている集団がいる。見た目的には調理。大きな鍋で何かを煮ている。そんな様子だ。
環境も変で、壁の塗装は剥がれて、奴隷も弱っている。例えるなら腐った果実みたいな顔してる。
「やっと…辿り着いたのです」
「え? アルミシアさんは、ここに来たかったんですか?」
横にいた彼女がため息をして、説明を始める。その目は"ほんとに分かってなかったのか"という哀れみの目をしていた。
「このVIPルームのクリア条件を知っているのです?」
「それは、オーナーを二人見つける事ですよね?」
「そうです。一人のオーナーは、VIPルームで堂々と佇んでいるのです。ですが、もう一人はこれまで一度も見つかっていないのです」
確かに、エドももう一人のオーナーが見つかっていない、と言っていた。
でもよく考えたらおかしい。まずオーナーが二人いる必要なんて無い。そして、これまで一度も見つかって居ない。VIPルームから奴隷になることはほぼ無い。
まさか――
「もう一人のオーナーは、奴隷ルームにいると?」
「やっとわかったのです? でもまだ確定じゃないのです。ただ、ここに来る為には、VIPルームを通らなきゃ行けなかったのですから、何かあるはずなのです」
一理ある。それに奴隷が何を煮ているのかも気になる。てか湯気くさ! 死体みたいな臭いしているんだが! おえ!
「――うぅ」
「どうかしたのです? クスノキ」
「…いや、どうかって。この臭いがちょっと…」
「匂い? クンクン、特に感じないのですが?」
いや、強がりはいいよ。何この匂い? 普通の人なら気絶レベルの――
「おや、防護壁を貼っているので、匂いは届かないはずですが、相当鼻が良いのですね。お客様?」
後ろから声がした。それも耳元で。完全に後ろを取られた。であれば!
「フォールアウト!」
「――お待ちください。争いたいとは思っておりません」
…何が起きた? 今俺は剣を抜いたはずだ。なのに、剣は鞘に入っており、また後ろを取られている。
不味い…こいつ。魔王レベルだ。
「…いきなり話しかけるとは、世間知らずですね」
「不法侵入された方に言われましても…ね」
男だ。アニメで言う執事のような格好。老人で白髪、大きな髭を生やした七十歳ぐらいの男だ。一体なんだと? なぜこんな実力者がここにいる? 何者だ。
だがそれを聞く前に、アルミシアが口を開く。
「…噂には聞いていたのです。このホワイトハウスには、二人の王がいると。一人が酔王、ウイスキー。そして――白王【ギラリス・ナイフバーント】」
老人は笑う。不敵でも、怪しくでも無く、ただ明るい、まるで子供をあやす老人のように。
「では私から自己紹介を。ギラリスと申します。この奴隷ルームの最高責任者であり、奴隷ルームオーナーの側近てもあります。以後お見知りお気を」
認識が甘かった。楽な仕事だと思ったが、どうやらそうでも無いらしい。
今の俺の気持ちは、アルミシアの予想が当たって嬉しいのが三割。面倒事で落ち込むのが七割だ。厄介な事になりそうだ。
読んでいただき本当にありがとうございます!
VIPルーム編は、三パートにわかれます。
クスノキ、アルミシア視点
モルト、エド視点
ウイスキー視点の三つです。長くなりそうですな。
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