ハイエナの記憶
アルミシア視点です。
「私は、この世界の善が嫌いなのです」
――そう、私ことアルミシアは、考えるのです。ある冬の日に、誰かも知らない孤児を、助ける人を見ていると思わず蹴りたくなる。そんな、ゴミのような倫理を持つのが私なのです。
分かっているのです。人を助けるのは、良い事。決してその先の顛末が、どれだけ汚れていようと、助けたという事実は美しい。ジュースを注ぐ前のグラスが美しいように、その願いを汚すことは出来無いのです。
――それでも。私はそれが嫌いだったのです。孤児だろうと、犯罪者だろうと、誰にでも救われる権利はある。
分かっているのに、それでも看過できない。救われているだけがいる。という事実が私の心を掻き乱すのです。
ただ泣いているだけ、ただ俯いているだけ。なぜそんな奴に神は微笑み、立派に生きている人間を、救わない。
なぜ神は、あの結末を許容したのです…
「アルミシア、将来お前は人を救いなさい」
――今でも、お父様から言われた言葉を思い出す。お父様は、誰にでも優しくそして、私には厳しかった。
それを恨んではいないのです。でも、お父様の背中はいつも大きく、誇らしかったのを覚えているのです。
お父様には信条があり「救われるには、相応の誠意が必要」と。気高く、そして無謀な政策でした。
例えば、腕が不自由な男の子には、それの治療をします。でも、その前に少しの努力。仕事などをさせて治療費のほんの少しを稼がせます。
これは、代金の負担ではなく、【救われる事を当たり前と思ってはいけない】という、当然のことを教える為のやり方なのです。
「分かっている。きっと、こんな政策しない方が民は楽のはずだ。それでも――私は、彼等の進化を信じたい。ただ、泣いていても誰も救ってくれないと教えなくてはいけないのだ」
目を背けたくなる光。民は虫のように、お父様を心酔し仕えていました。
でも私は、それがどうしても、居心地が悪かったのです。子供の時には、理由を理解出来なかったのですが、今ならわかる。
きっと【一番救われなきゃいけないのは、お父様】と心のどこかで思っていたからなのです。
そして、電脳国ブレインは、発展していきました。電脳世界、言葉は良いですが実態は普通の国と変わりありません。貧富もあれば、葛藤もある。
だからなのでしょう。お父様の光は、強く人々の心を奪いましたが、同時に【闇を産む】と因果応報が起きたのです。
「お…父様?」
死にました。死んだのです。食事の日、お父様が酒を飲んだ瞬間、苦しみ始めそしてこの世を去ったのです。
あれだけの努力をして、民を救おうとし、正義を成していたお父様が【毒酒如き】で死んだのです! あの時のお父様の目を未だに夢に見る。まるで【死を受けいれた】様な、暖かい目を。
なんでなのです? これが。罰なのですか? 自分を救わず、ただ相手救っていた偽善者の末路が【これ】なのです?
更に、そのあと酒に毒を入れた犯人が捕まりました。私はそれを見て――唖然としたのです。
"犯人は、腕が不自由だった。お父様に救われた男の子だったのです"
最初は見間違いだと思った…思いたかったのです。でも肩には、治療の跡。そして「お久しぶりです」と、私に言って来たのです。
私は問い詰めたのです。なんで? と。すると【ウザかったから】と帰ってきました
真っ直ぐな無垢の目。何もかも吸収し、離さない黒い渦のような目は、こちらをずっと凝視していたのです。
そしてその後、すぐにその子は王族を殺したとして、処刑されました。それが結末なのです。
…お父様は、誰を救ったのです? 何かを助けたのです? 自分も、私も何も助けず、そして自己満で助けた男の子に殺され、何をしたかったのです?
「アルミシア、お前は人を救いなさい」
――これがその結果なのです? 誰も救えず、誰にも覚えられず、ただ自分だけが苦しんで死ぬ。そんな結末がこれなら。私は【人を救いたく無い】のです。
その日から、偽善者を見ると、吐き気がします。今すぐにでも殺したくなるのです。ましてや偽善者が私を助けたなんて、考えるだけで全身に鳥肌が出るのです。
人を救わない。救うのは自分だけ。それで良いのです。結局全ては無に帰るのです。毒酒で死のうが、処刑で死のうが、天国と地獄があろうとなかろうと、きっと全員が罪人なのですから。
そして、ホワイトハウスである偽善者に出会ったのです。クスノキと言う、ゴミに。最初こそ拒絶されましたが、何とかバカを演じて懐に入ったのです。
目的は腰の剣。寝ている時を見て、首チョンパでも良かったのですが、それだとすぐに犯人だとバレてしまうのです。
結局、フォールアウトは取れず、クスノキには正体がバレ、逃げる様に、拒絶するようにVIPルームに向かったのです。
まぁ、結局VIPルームで再会してしまったのですがね。
彼女見ていると、お父様を思い出す。誰よりも明日を見ていた偽善者の末路なんてたかが知れているのですから。
「貴方が嫌いなのです」
この言葉に虚偽は無いのです。でも――それは貴方ではなく、貴方の正義なのです。
ほんの少し、私が汚れていなかったら、あなたが汚れていたら、友達になれていたのでしょう。
…でも目で分かります。きっと貴方は、こんな汚れた私でも救おうとするのです。お父様とおなじ目を背けたくなる光。
――お願い、、なのです。お願いだから、どうか、、、これ以上、私の汚水に飛び込まないで。貴方を…否定したいのに…。
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