きっとキツイんでしょうね
スタスタ…。
スタスタ…。
「あの――」
「はい? どうしました? アルミシアさん」
「――なんで着いてくるのです? 帰ってくれません?」
前回のあらすじ! とりあえず道に迷ったので、アルミシアと二人きりで、移動している。
彼女は、迷惑そうな顔しているが耐えて欲しい。流石にここで餓死は嫌だ。
どこに行っても黄金の装飾品。上には無数のシャンデリア、まるでお城を連想させるが、何故ここまで迷う?
…ん?
「クンクン」
「…何です? クスノキ。キモイのですが」
「――貴方、裏を隠さなくなりましたね。でも違います、何か【臭い】ませんか?」
「何を言って…今の音は?」
ガン、ガン、と。何かを叩く音がする。一定のリズム、金属音のような音が、響き始める。
そして匂いの正体もわかった。これは…血だ。何が起こればここまで血の匂いがする?
「ここなのですか」
「アルミシアさん? 何か知っているのですか?」
「…私が下にいた時に話したのです。この船は金が無くなると、奴隷になると。そして――」
「…そして?」
「――おそらくこの先が、、奴隷ゾーンなのです」
そして彼女は歩き出す。その後を俺も歩く。さっき迄の嫌な感情は感じられない。おそらく彼女の目的地は奴隷コースなのだろう。でも何故? わざわざこんな所に。
「時にクスノキ…聞くのですが、何故あなたはホワイトハウスに来たのです?」
「…それは、アルピスの為に――」
「知っているのです。貴方も難儀なのですね。あんな国の為に闘うなんてどうかしているのです」
「…何を知っているんですか?」
アルミシアは、ため息をして鋭い目をしてこちらを凝視する。その目は、哀れみでも無く、慈しみでも無く、怒りの目だった。
「私の国は【電脳国ブレイン】この世の全ての情報があるのです。だからこそ私は貴方に忠告をするのです。"アルピスに肩入れをするのはやめた方がいいのです"と」
「ですが、あの国には罪のない人々が…」
「だから何なのです? 貴方は落ちたゴミを一つ一つ拾っていくのですか? ゴミは何も貴方に与えないのに? …私は貴方が嫌いです。貴方自身ではなく、貴方の生き方が心底吐き気がするほど嫌いなのです」
言い返せない。別にアルピスの人々をゴミだとは思っていない。だが、思う。俺もこの生き方を好きだと思ったことは無い。俺はヒーローじゃない、英雄じゃない。
ここで「ふざけるな!」と叫べるような、高尚な人間じゃないのだ。
…でも――
「確かにアルミシアさんの言う通り、この生き方は正解じゃないと思います」
「では――」
「でも、ごめんなさい。私はこの生き方をするって決めたんです」
「――は?」
決めた。決めてしまったのだ。俺の人生を一点に搾ってしまった。もうこれ以外の生き方は許されないのだろう。
無意味で無謀な、ただの決意。ただ、水底に娯楽を落とすバカの生き方だ。
それでも、
「私は、スプラッタという国で、ある狼と出会いました。その子との旅は、その国で終わってしまいましたが、それでも「泣かないで」と言われたんです。ですから、泣き言を言いません。自分が守ろうとしたものを、死んでも守り通します」
「…その生き方で、自分の大切なものが全部無くなるとしても? 周りの人間には与えて、自分には何も残らない? そんな地獄をなんで自ら歩くのですか!」
「そうですね。きっとキツイんでしょうね」
「キツイって…なんで、そんなに他人事なのです? 誰も貴方を助けてくれなかったのです?」
「………」
「あぁ、そうなのですね。本当に嫌いなのです。貴方は」
そう言って、彼女は振り返り、音のする方へ歩く。一度もこちらを見ない、ただ前を向くだけ。
彼女は、ブレインの王族だと言っていた。それが真実なら、彼女も民を守るために…
「――行きますよ」
「…え?」
「早く行くのです。クスノキさん。時間がありません」
「……フフ」
思わず笑ってしまった。彼女にも聞こえていただろう。だが、それでいい。彼女は何も言わない。きっと受け入れてくれたのだろう。
思えば初めてだ、自分の中をこんなに赤裸々に話したのは。少し肩の荷が軽くなった気がした。
結局、誰もがレールの上を生きている。それでも決して脱線することは許されない。
辛いと言う理由で、生き方を変えるなんて許されていないのだ。
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