VIPルームの支配者
一・ギャンブルはイカサマしない。
二・節度を守る。
三・バニーガールの話はちゃんと聞く。
――これが、彼女――バニーガールから聞いた言葉。うーん、普通だ。やっぱり、これを聞く必要なかったんじゃないか? てか話長い。
だが、、モルトはそれを真剣に聞いていた。もしかしてこの話が大事なのではなく、【話を聞くこと自体】に意味があるとか? いやまさかな。
そんな時、おれの視界の端に映るものがある。
「てめぇこのバニーガール風情が!!」
「や、やめてください! 暴力は!」
…襲われるバニーガールと、襲う男の太っちょ。実にありふれた光景だ。すっごい遠く、端から端までの距離があるだろう。見た感じ、大方八つ当たりだろうな。別に助ける義理は無いんだが…みんな見て見ぬふりしてるしな。見た感じバニーガールに、彼を倒す力など無い。魔力がないんだもん。
でも、話を聞くこと自体が大事なら、聞かなきゃダメか?
否、それは夢見が悪い!
「…がこの話で――クスノキ様?」
「すいません、ちょっと失礼!!」
これで、ダメだったらそれはそれだ。一気に足を踏み込んでダッシュしよう。ヌルヌルと人の群れを避け続けて…間に合うか? いや間に合え! ギャンブル台なんか考えるな! そんなの踏み越えろ!
「てめぇのせいで、俺は金を!」
「――そこまでです」
俺はずっと、男とバニーガールの間に入り、その争いを牽制する。バニーガールは涙目になっている。嘘くさいがな。
さてと、これで懲りてくれればいいが、どうやらそうにもいかない。男の目は全く変わっていなかった。仕方ない、実力行使で行くか。
「どけ! クソガキが!」
「…全く!」
男のグーパンを、ずっと避け、そのエネルギーを利用して、大外刈だ。学校で最低限の柔道をしていたのが、功を奏したな。
「――やめろと言っています!」
「ぐはァァ!!」
男は打ちどころが悪かったのか、気絶してピクピクしている。どうやら争いは治まったかな?
さて――ん?
「あ、あのありがとうございました! 助けてくれて! あ、あの?」
「……」
こいつ、さっきまで何も魔力を感じなかったのに、この男が倒れた瞬間、とんでもない魔力を出しやがった。これ程の力があれば、あの男なんて殴っただけで消し飛ばせるんじゃないか? もしかしてあの男被害者?
「――フフ。バレちゃいました? 大丈夫ですよ。クスノキ様。私は貴方に敵意を持っていません。もう一度感謝を…」
名前まで知っていると。まぁここまで来て、何も言わないのは不自然だから、素直に受けとっておくか。
「いえ、大丈夫なら何よりです」
「お優しいんですね。では手を出してくれませんか?」
「はい?」
俺は言われるがままに、手を出す。するとバニーガールは胸からペンを出して一枚の紙に、「一A」とかかれた紙を渡してきた。
「あの、これは?」
「それはあなたの席です。今日私がいる場所のギャンブルに来てください! ご奉仕しちゃいます! 」
「…は、はぁ」
バニーガールは、そのままスタスタと、どこかに行ってしまった。うーん、まぁいいか。てかやべ! 話聞いてた途中だった! 走れ!
「あのすいません! いきなり飛び出しちゃって」
「いいえ、こちらから見ておりました。スタッフを助けていただきありがとうございました」
どうやら、誤魔化す必要ないようだ。てかそちらからも確認出来ていたのなら、助けてやれよ。
まぁあのバニーガールなら、俺の助けも要らなかったと思うけどね。
「では、クスノキ様。詳しい話はモルト様よりお聴き下さい。楽しいギャンブルを――」
「え?」
そう言って、バニーガール達はどこかに行ってしまった。えー、取り残されたんですけど、俺だけ。
「モルトさん、バニーガールの話は?」
「ん? あぁ、特になんでもない世間話だったぞ。だが、やはり噂は本当のようだな」
「噂?」
「それは、今から答え合わせだ。そうだろ? 酔王?」
モルトの先には、拍手をしている酔王がいた。エドも何も言わずただ頷いている。
「だから言ったろ? ウイスキー。こいつらは心配いらないと」
「いやー、でも心配するじゃん! ここでもし話を聞かなかったらって可能性があるんだし」
…やはり、重要なのは、バニーガールの話ではなく、話を聞くこと自体なのか? だがそれは――と、聞こうとした時、ウイスキーが答えを教えてくれた。
「モルトは気づいていたけどさ。このVIPルームでの絶対的支配者は、客でもギャンブラーでも無いんだ。ここはバニーガールが支配する監獄なんだよ」
…マジか。いやまぁ薄々勘づいてたけどね、だって下にはバニーガール一人も居なかったもん。
酔王は、クスクスと笑っている。機嫌がいいようだ。もうちょい聞けるかな?
「酔王さん。【支配】とは、どの位まで?」
「そりゃあ全部さ。ギャンブルの結果はもちろん、配当、その日の食事、何もかもバニーガールを怒らせ嫌われれば、地獄になってしまう。だから君がさっきした事はナイスだったよ。見ず知らずのバニーガールを助けたなんて、好感度ぐっと上がったんじゃない?」
更には、バニーガールには不逮捕権のようなものがあり、イカサマをしても何も怒られないらしい。そして酔王が指さす。バニーガールを怒らせた末路が【あれ】らしい。
「ハハハ! 何も無くなっちゃったァー! 妻も子も財産も全部売って、得た金が全部パー! ひと勝負で全部なくなっちゃった〜。アハハハ!」
先程の男とは違い、痩せた優秀そうな男が鼻水や涙を流して奥へ連れていかれる。あの先は酔王曰く知らなくていいらしい。知っても意味が無いし、想像の通りだと。
はぁ、どうしよ? つまりこれって、バニーガールと友好を作る乙女ゲーみたいなものでしょ? そして結果でギャンブルの結果が良くなると…。
「じゃあ、俺とエドはバーで待ってるよ。とりあえず二人は少しVIPルームを回ってきな。そこから作戦会議をしよう」
――と、酔王は、エドを連れて行ってしまった。モルトも一緒に行動するか? って聞いたらさ。
「めんどい」
って、却下されました。とりあえず俺は一人か、どうしよ。アルミシアを探す? 探して見つけたところで…か。
仕方ない、助けたバニーガールのところに行ってみるか。
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