醜い黒い子供
勇者の冠を持って、敵を殺す。その冠があれば全てが正義だ。悪だとしても、私がすれば正義になる。これがせかいだ。
醜い、醜いアヒルの子だ。目を覆い隠したくなる、背けたくなる程の視界に入れるのすらおぞましいそんな存在だ。
「オギャー」
「あぁ、生まれてしまった。こんな母から、なんで生まれてしまったの? お前も【迫害されるんだよ?】怖くないのかい? あぁそうか、生きたいのかい。そう――」
母親は世話をする。産みたくなかった厄災を。こんな自分から清い子供が産まれてくるわけが無い、それを自覚して。
事実、その子供は後に色々と悪事を起こし、最終的に母親を殺す事になる。
「――お前の名はマネー 他は自分で考えな。この世界はお前を憎んでいるだろう、それでも生きたいのならこの名を受け継ぐんだ。かつてお前のお父さんが持っていた忌み名を――【魔族の子】という人類に仇なす存在を」
◇◆◆◆◇
ゲームが終わる。ブラックスワンが見つかった。
だが【これが結末】かと思うと少しやるせないな。
「…何が起きた?」
「見てなかったでありんす? お前の負けだ。クスノキがお前の【ブラックスワン】を当てた。見事にお前は撃ち抜かれたんでありんす」
「――そんな訳ねぇ! ふざけんな、あの時! あの時…待て、、お前、クスノキ、まさか最初から?」
少し時を戻そう。とは言っても簡単だ。俺は最初からあいつのカードかわかっていた。
別にシグレに教えられたとかじゃ無い。なんというか本能的? に分かったんだ。あいつはこのカードにしそうだなって。
「モルト――貴方のブラックスワンは【ハートのキング】でしたね?」
「クスノキ、、一体どこから俺のブラックスワンに気づいた!」
「あなたが今言ったでしょう? 最初からです。まぁ※カードカウンティングしてたので、どちらにしろ判明してましたがね」
※カードを数学的に計算して残りの手札を導き出すイカサマ
モルトの目が変わっていく。何が起こったらこんなに捻れたヤツになるんだか。
物理的にでも、生き方的にでもない、根本というか何もかもがねじれている。
…試してみるか。そのためにはもっとモルトを挑発しないと――
「…無様ですね」
「何がだ? モルト様の何が」
「許してあげましょうか? アルミシアに土下座して靴をなめればこの勝負をなしにしてあげてもいいです」
「…ふざけんな、そんな事俺ができるわけ――」
「弱い犬ほどよく吠える。お似合いですね」
「てめぇ!」とモルトが俺に殴りかかってくる。試してみよう。こいつほど捻れたやつでも善人になれるのか。
それとも何も起こらないのか、、さぁ見てみようか!
「浄化!」
久しぶりに力を使う。その光は俺とモルトを包み込み、そして視界の全てを奪っていった。
◇◆◇◇
「ここは?」
俺の目には荒廃した都市が写っている。スラム街のようなやせ細った人しかいない廃棄された都市だ。
上には排気ガスを出す飛行機が、だが俺自身の感覚がない。砂煙が顔にあたろうと、人が俺にぶつかろうと、何も無かったように全てすり抜ける。
これは夢に近い感覚なのだろう。でもなんでこんな事に――
「やーい! 魔族の子がいたぞ! いじめろ!」
「やめてよ、やめてよぉ!」
視界の隅で子供が虐められている。日々の鬱憤を晴らすようにいじめっ子は棒切れを使って相手を殴っている。加減は無いようで当たった所に赤い痣が出来ている。
「やーい! 魔族の子 モルト! 」
「やめてよぉ」
…は? 何? 聞き間違いか? いや確かにあの子はモルトと言っていた。つまりここはモルトの過去? なんでこんな事に…とりあえず助けないと――
「やめろ」
俺の手を掴む奴がいる。その手はさっき俺の顔を殴ろうとしていた大きい手。だが握る力は優しく掴まれていた。
「貴方は――モルト?」
「それ以外何に見えてんだよ。てかこの景色はなんだ? 嫌な思い出を蘇られやがって」
「先程の子はモルトと言われていましたが、まさか?」
「あぁ、間違いない。ここは俺が生まれ育った街、廃国ダスト。そして、俺の過去だ」
そして俺は知る。少しだけこの世界の暗いところを。
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