魔王VS最狂
「⋯魔王?」
「知らねぇか。まぁいい、称号も戻ってないし、そういう事なんだろ」
アリスはハクアの態度に頭を搔く。
その態度は実に人間らしく、そして子供らしかった。
ハクアの目に映る人間は魔王ではなく、ただ少し悲しい目をした大人の姿だった。
化け物が雄叫びを上げながら、突進してくる。
当然ハクアの目にも映り、顔に焦りが出る。
「あー、ちょい待っててくれ」
化け物の拳を人差し指で受け止めた。化け物も目を見開き、もう一度反対の拳でアリスを攻撃する。
「――待ってろって言ったろ!」
アリスは拳を受け止めず、スレスレで交わし変わりに回し蹴りを化け物に贈る。
メリメリと潰れる音を奏でながら、化け物は遥か奥に吹き飛んだ。
ハクアは呆然とそれを見ていた。目の前にいる人間は、自分と対して変わらないのに、その力は天と地の差がある。
「⋯何をしている? 早く行け」
「――っ! は、はいなのです!」
アリスの言葉でハッとしたハクアは、何とかカゲを担いで逃げる。
アリスは知っている、その先の道に出口があることを。つまり、もう彼女を心配する必要は無い。今意識をするべきは――
「さてと、またせたな。来い!」
化け物が後ろからアリスを攻撃する。アリスと拳が当たり、魔力のぶつかり合いで衝撃波が出る。
「悪いがここから先へはいけない。強制イベントだ。――簡単に死ぬなよ。化け物が。」
化け物の認識が変わる。目の前の男が【獲物】から【敵】に変わる。自らを殺しにくる狩人だと分かった。
だからこそ本気で目の前の男を殺す。油断もせずに。
「⋯ほぉ? まぁ流石に使えるよな。【固有魔法】ぐらいな。だが⋯ぬるいぞ」
化け物の顔に、アリスの蹴りが炸裂する。化け物も油断していない。だがその張りつめたセンサーをくぐり抜け、一蹴した。
「BOM!」
アリスが指を鳴らすと大爆発が起こる。石を融解させ火花が上がる。
口角が上がる。温度で空間が歪み、水溜まりに自分の顔が映る。
(あぁなんて魔王なのだろうか?)
そう思う人間だった。
「⋯頑丈だな。コインでも入ったか? ゲームクリアなんて無いぞ?」
化け物が起き上がる。焦げた肌が再生する。何も無かったようにコンテニューだ。
拳を握って魔王に殴り掛かる。
「芸の無い⋯――!!?」
咄嗟にアリスはガードする。ミシミシと手にヒビが入る。ただの殴り、それだけでアリスは後ろに大きく吹き飛んだ。
そして軽々と着地して、前を見る。
「⋯何をした? 拳の威力が跳ね上がったぞ」
別になんてことは無い。ただ化け物の固有魔法【相手よりちょっと強くなる】が強いだけ。
それだけだ。
「⋯死ね。死ね死ね、魔王の前に死ね。俺に勝てるのは勇者のみ、少なくともお前じゃない。
だがそれじゃつまらんだろ? だから全力で来い。お前の欲望を満たす捕食者が目の前にいるぞ?」
化け物とアリスの拳がまだぶつかる。同じ様に衝撃波が起こるがレベルが違う。国を揺らす。世界を揺らす災害として動き出す。
◆◆◇◇
「いやー、まじまじまじですかー。ご主人様が帰ってきてから来たらいいものを」
プリスは走る。魔王に加勢する訳ではなく。このままだとアルピスが崩壊するから。
また国が揺れる。水面にある筈の国が、地震とは縁がない国が揺れる。
「あぁまずい! このままだと本当に――」
「どうなるというんだ?」
「――!!!!??」
プリスは顔面を殴られる。その凄まじい勢いで、建物を幾つも貫通して吹き飛んで行った。
「⋯何がどうなっている? 何故お前が? いやそんな事はどうでもいい。そうだろ?"邪王 ディスガイア"」
「そうだ。どうでもいい。お前は今日死ぬ。それだけだ」
プリスの凹んでいた顔が元に戻る。彼女の本質は【再生】であり、創造だ。
聖王の称号は伊達では無い。それを今から証明する。それだけの戦いだ。
【――固有魔法発動】
プリスの踏みしてた地面が光り輝く。それは希望の光。悪しきを打ち破る絶対的な正義の光である。
誰もが願う【幸せに生きたい】。その具現化と言ってもいい。
名を――聖王の道
「久しぶりだな、聖王の腐った光。それを見るのは」
「だろうな。あの時"私が殺した"と思っていたがな。のうのうと生き残っていているとは。敗北者が」
「そうだ。だが今日は逆の結果になるだろう。死ね」
【聖王、邪王、魔王】 ここに、三人の王が揃う。戦いが始まる。
アルピス⋯いや、世界そのものを巻き込んだ。ただ迷惑な戦いが。
この戦いはアルピスの祭【1日前】の出来事である。
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