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永劫回帰は夢を見ない  作者: ユナ
黄金変容編
169/274

勝負はここからだ

「友達? ふざけた事言わないでください」


俺はモルトという男と初めて会合した。


「⋯どうしてこんな事を?」


「どうして? そんな言葉が出てくるとはな。ギャンブルで"対等"に戦い、"平等"に金を得ただけだ。文句を言われる筋合いはない」


無いだと? ふざけんな。これのどこが平等なんだ。


「平等? これがですか? 貴方たちはずっとアルミシアさんを落とそうと策を練っていたのでしょう?」


「⋯だと言ったら?」


「ッ!!─────」


人間には二面性がある。正義と悪。誇りと驕り。

だがこいつは悪で誇りなど無く、傲りを食べて生きるエゴイストだ。

こいつを許してはいけない。


「───あなたいい加減に!!」


だが、俺が足を進めようとした時、足が止まる。恐れやそういう事じゃない。

ただ単に()()()()()()()()()()


「何をしているんですか、アルミシアさん! 離してください!」


「⋯ダメです。このまま貴方が行ってしまえば、貴方まで奴隷になってしまいます」


「そんなこと関係ありません! あなたはいいんですか?

こんな理不尽な勝負に負けて、奴隷に落とされて納得できるんですか!?」


「⋯じょ⋯ぶですから────」


彼女の手は震えていた。現実は既に肩に乗っている。

ここから奴隷になり、死ぬまでこの船で労働をする。それでも彼女は顔を上げた。俺を心配させない為、罪悪感を感じさせない為に⋯


「───私は大丈夫ですから⋯」


ただそう言って笑っていた。鼻水が出て、作り笑いもいい所で、泣き跡が顔についている。



あぁ昔もあったな⋯こういう事。


◆◆◆◆◆◆


「ねぇ、楠君。少しいい?」


「んだよ?」


「⋯君は死にたくなる事ってある?」


昔、まだ日本にいた時、俺の人生を変えた言葉が()()あった。病室で男女が話している。何気ない会話だったはず。だからこそだろう。


「そんなことに答える義理はない」


「え? そんな酷い。私からしたら重要な質問なんだけどな⋯」


彼女は病気だった。心臓の余命がもう1年無いガラスのような命だった。

まぁ俺からしたら、彼女が元気過ぎてそれすらも嘘じゃないかと思えるほどだった。

今の俺なら"ある"と答えるんだろうな。


その瞬間がここだった。


「先生! 脈拍が止まりました!」


「手術中止! 心肺蘇生だ、急げ!!」


⋯ただのミスだった。執刀医のたった一つのミス。それだけで彼女は死んでしまった。

この手術が成功すれば、無事に生きられる可能性がある。そんな甘い罠に、刺がある事など分かっていたはずなのに。


俺は誰もいなくなった病室で、一人絶望していた。

何ができた? 何をしてやれた? 俺は彼女と違って、健康な体も時間もお金も沢山あるのに、何も出来なかった。

何も生み出せなかった自分に腹が立つ。


病室に少し優しい風が吹く。窓が空いていたので、カーテンが揺れ、枕の下の紙が揺れた。


「何これ⋯紙?」


紙は俺への手紙だった。要約すると、"有難うとこれからも頑張ってね"だった。


『もしも生まれ変わった私に出会ったら、あの時の質問に答えてあげてください。私と友達になってくれてありがとう。君の友人コードネーム"アルミシア"より』


手紙が濡れる。一滴一滴、水玉が紙を少しづつ濡らす。

それは雨でも無く、血でもなく、俺の涙だった。


◆◇◇◆◆◆


そうだ。そうだよ。確かに俺はアルピスを助けたい。ハクアやアリエルを助けたい。でもそれはそれ。

【今助けなきゃ行けない人】を救わずに、何を救う?


「ごめんなさい、アルミシアさん」


俺は彼女の手を振りほどく。彼女に俺をもう一度掴む気力はなく、ただこちらに手を伸ばすだけ。


「何故、何故そこまでするんですか! クスノキさん!」


「何故ですか⋯すいません、今から言うことは戯れ言だと思って下さい。あの質問の答えは、私は⋯"無い"と言います。これは嘘ではありません」


「何を言って⋯待って、待って! お願いやめてー!!!」


俺はモルトの前に立つ。


「なんだガキ。失せろ、俺はいま金を数えるので忙しい」


⋯ごめんな、エド。少し寄り道する。でも分かってくれるだろ? お前も俺もどっちもお人好しだ。目の前の人間一人見捨てられない臆病者だよ。

それでも、やれと言う。俺じゃなく、俺の魂が。奴を許すなと、弱気を守れと吠えている。

なら従わなくては、じゃないと俺は、いつまで経っても変われないんだ!!!


「勝負を受けてください、モルトさん。私の全財産を賭けて」


「⋯断る。お前とやっているほど暇じゃねぇんだこっちは。それに少しはマナーってもんを─────」


「え? もしかしてビビってます?」


「────あ?」


俺は中指を立てて挑発する。また俺の口調が元に戻る。

怒りで魔法を打ち消していた。


「ごちゃごちゃうるせぇよ。とっとと勝負しろこの薄汚ぇペテン師が。お前を打ち負かして、俺はVIPに上がる」


「⋯それは面白い冗談だ」


こうして俺とモルトの全てをかけたギャンブルが始まった。

読んでいただき本当にありがとうございます!


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そうするとロリのやる気が上がります。

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