砂時計は回る
トランプは人生に似ている。誰かも分からないやつからカードを渡されて、競いたくもない相手と同じ席に座る。
知りたくもない手札を見ながら、自分の手札を見て苦虫を噛む。手札を交換して、時に捨て、時に引く、そうして自分の理想の手札を作る。
···何が違う? 生まれの環境を最初の手札とするのなら、今の自分の手札はレイズをする程だろうか?
そうして初めて自分は、今持つ手札を見る。少なく、そして汚れている、まさに反面教師の手札だった。
だが一枚のジョーカーが来た。
これはムーン? アリス? それとも自分? 否否否、いつか知るジョーカーは、クスノキの心をエグるのにさほど時間はかからなかった。
◇◇◇◇
「おめでとうございます、クスノキ様」
勝った、勝った。ブラックジャックで勝った俺は生まれて初めて、脳からアドレナリンが出ることを感じる。
たった一度の勝利がここまで高揚感を与えるのか、こりゃギャンブル中毒が生まれるわけだ。
まぁでも俺はそこまで中毒になりそうにない。
何故かって? 隣がうっさすぎるんだよ。
「オイラが何故負けるんだー!! どうびでー!!」
···うるさい、耳に響く。ユーロと言いカウノと言い、この世界の人間は何故こんなに声が大きいんだ?
見たところ、全チップをかけて大爆死という所か? なぜ全賭けした? こんな運とディーラーの気分で勝敗が変わる茶番に。
ケモ耳がある狐のような少女。服はオンボロだが技でピカピカにしている。
茶髪の中身長は───────
「ディーラーさん! オイラにどうかご慈悲を!」
「アルミシオ様、回収させていただきます」
「なんでー!!」
···本当に全部もっていかれたな。お悔やみ申し上げます、と。さて一勝負勝ったことだし部屋に帰りますか。どこかわかんないけど···さすがにあるよね?
「あのー···ちょっといいですかね? クスノキさん、いや! クスノキさま!」
何? 金無しが話しかけてきたな。
「何ですか?」
「お金を貸して貰えませんかね?」
「お断りします(即答)では私は部屋に帰りますので」
「待ってーー!! 少しだけ! はなしをきいてー」
五分後、まだついてくる。俺の姿が幼女だからか、それとも素人だから借りやすいと思っているのか。
···本当にこいつは手癖が悪いな。普通やるかね? まぁいいや、その度胸に免じて話だけでも聞いてあげよう。
「···あの、さっきからなんで着いてくるんですか? 部屋違いますよね?」
「いやー、でも私たちって同じギャンブルをした仲間、いや親友じゃないですか! まずは握手を!」
君達も嫌いな食べ物ってあるだろ? あれは大体食べてすぐに分かるものだ。
俺も本能的に分かる。俺はこいつが大嫌いだ。
言葉が軽い、いや軽いというか無い。こいつは今話した事、全部嘘。自覚がある虚言癖だ。
嘘を嘘で塗り固めて真実よりも分厚い壁にする。実に簡単な嘘の付き方だ。いけない···少し油断すると殺気が漏れてしまいそうだ。本音は顔に出るって言うしな。
もうひとつ、俺がこいつを嫌う理由がある。それは───
「えっと、アルミシオさんですよね?」
「はい、どうしました? 握手しましょ?」
「そうやって、握手させている間に財布を抜き取るのが、貴方の世界の親友なんですか?」
「···は?」
彼女の顔が固まる。少しづつ冷や汗をかいていく。気づかないと思っていたのか? 握手をして居るうちにもう一つの手でポケットから財布を盗む。姿からも分かる通り狐のような奴だな。
「···オイラは」
「あぁもういいです。どうせ『やるつもりは無かった』とか『言い掛かりだ』とでも言うつもりでしょ? そんな空気よりも軽い言葉を吐きながら、貴方がここでどれだけ甘い汁をすすって来たか知りませんが、イライラするんですよ。見てて吐き気がする。そうだろ?」
この時、ある現象が起きた。あまりの嫌悪か、イライラかは分からないが、ムーンが付けた喋る言葉が敬語になる呪いから少しだけ開放された。
もちろん、この時俺は知らなかったが、久しぶりに思い通りに言葉が出ると気持ちの良いものだった。
「───消えろ! 俺の視線に入るな!」
それが俺の本音。これ以上二人がいても何も無い、ただその近くに『あいつらやばくね?』って言う空気を出すだけだった。
アルミシオはとぼとぼとその場を離れていく。これで良かったのだろう、少しはこれで懲りてくれると良いのだがね。
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