眠れない国
世界は回る
「という訳でよろしくお願いしますね。エドさん」
「何がという訳でだ。全く俺以外にも適任がいたろ」
俺とエドはすでにアルピスを出ていた。ムーンがサッと送ってくれたのだ。
挨拶をしていきたいと言ったが【間に合わなくなりますので】と一言いわれた。どういうことなのか?
今俺たちは埠頭へと向かっている。何故そこなのか? と聞いてもエドもムーンも「行けばわかる」の一点張りだった。
「───で? なんで俺を選んだんだ? クスノキ」
「⋯たまたまって言う理由じゃダメですかね?」
「俺がチンパンジーなら可能性があったかもな。それで? 話せよ。⋯いやちょっと待て!」
ん? 何? 今から正直に話そうとしていたんだが?
「───そう言えば俺は探偵だ。当ててやろうお前が俺を選んだ理由を。
まず俺は転生者だ。それが一枚目の手札。
次にディスガイアとあっているそれが二枚目の手札
最後に次に行く国がギャンブルの国だ。
つまり【お前はディスガイアに何かを言われた。それは恐らく転生者に関する事、そしてホワイトハウスでも使えそうな俺を徴兵した】で違うか?」
⋯やっぱり危険だなこいつは、味方にしておくに越した事は無い。
そして恐らくそれが──────
「エドさん、当たりですよ。なのでこちらからもお返しです。それがあなたの【固有魔法】ですよね?」
「!! へぇ、なんでそう思ったんだ? 聞かせてくれよ。俺は推理をするのは好きだが、他人の推理を聞くのはもっと好きなんでな」
エドの目に映るのは期待の目、であれば受けて立つ! 適当に言ったのに意外と大事になってしまった!
「では⋯
まず貴方が探偵であること、固有魔法とはその者の人生そのもの、であれば固有魔法もそれに近い可能性が高い。
そして貴方が推理している所を見ない事、これはただ単に私が見ていない所でやっている可能性もありましたが⋯
そして最後に、なんかそっちの方がかっこいいからです!」
「⋯へぇ、いいね。最後以外は合格点だ。教えておこう、俺の固有魔法は【小さな探偵】だ。俺は頭の中で超人的な推理をする事が出来る。簡単に言えば同時分裂思考だな。意外とレアなんだぜ? この能力は」
ふーん。なんか意外としょぼいな。多重人格かと思っていたけども⋯⋯
「なんか思ったよりもしょぼいなって顔やめろ」ってすぐにバレました。
◇◇◇◇
さてと埠頭に着いたけど何なんだ。だれもホワイトハウスが何処なのか誰も答えてくれないし、しかもそんな話をしている人もいないし。
「そういえばクスノキ、ひとつ言っておくことがある」
「───? 何ですか?」
エドは俺の近くに顔を出して、ひっそりと話しかけふ。どうやら聞かれては欲しくない話の様だ。
「いいか、これから俺達はある場所に行く。ただ【お前は何も言うな。全部俺がやる】。いいな?」
「...えぇ、それでいいのなら」
「そうかならいい」とエドは近くのバーに入る。
コンコンとドアをノックして入る、ギギギと建付けが悪いドアを開けてミシミシと鳴る床を歩きコトっと木のテーブルに何かを置く。
「店主さんよ、何か今日はいい事あったかい?」
「⋯⋯特に無いな。お前さんは?」
「俺も無いな、、ただ【これから探したいと思っているよ】ドアを開けてくれないか?」
「今日の深夜一時だ。南の埠頭に行け、いい夜を。名前は?」
「こちらこそ───エドとクスノキだ」
俺達はそう言って外に出た。
一度もだ、一度もエドとバーの店主は目を合わせていない。それでも【お互いの目的を叶える為に】何も口にせず、ただ終わった。
…そういえば─────
「エドさん、店主の机になにか置きませんでした?」
「あぁ、あれが合図だよ。あのバーであの場所にあれを置く。それが【今日】の合言葉さ」
「...というか! そろそろ場所を教えてくれませんか!?」
「ははっ。見たらわかるさ」
またそれか、もういいや。とりあえず深夜一時まで待ていいんだろ? えっ、待って?
「エドさん、深夜一時までまてって言ってましたけどどうするんですか? ホテルとかですよね?」
「はぁ? 今日だぞ? ベンチとかで待てばいいだろ? 安心しろ職質されたら身分証明書もあるから」
やっぱりかー!! えぇ、、また…野宿か。
◇◇◇◇
野宿なので公園のベンチで二人で座る。時折痛い視線がこちらに刺さるが、今日の深夜までだと思って耐えるしかない。
「…お前、ディスガイアに何を言われた?」
エドが話しかけて来た。恐らく会話がないから探していたのだろうが、一番聞いて欲しくない事聞いてきたな。
「何を───とは? まぁ言われたのは【転生者を許さない】って事だけですよ。私や貴方も殺す対象らしいですよ」
「ディスガイアか⋯名前すらも聞いた事ねぇな。ハクアに懐かれて王政を聞いていたが、一言も無かったはずだ。あっ今のはハクアに内緒で」
意外と冷たいんだなコイツ⋯エドになら聞いてもいいのか?
「私が聞いていたのはムーンが作った世界を乗っ取った神と聞いています。なので我々の敵のはずなのですが、あの目はこの世界を思っていたと思います。転生者は悪なのでしょうか?」
「悪では無いだろうな。ただ正義でも無い。悪や正義なんて右から見るか左で見るか、それだけの違いだ。
日本の原子力だって、社会史から見たら悪だが、エネルギー理論から見たら正義だしな。それでも⋯おっともう一時近いな。行くぞ」
俺がふと時計を見ると、いつの間にか十二時半だった。エドは今の立ち位置に納得しているのだろうか? 転生者が勝手に呼び出されて悪と呼ばれているこの現状に。
「エドさん、ここは?」
「見たらわかるだろ? 港だよ」
「見て分からないから言っているんですが?」
何も無い場所。今日は船が一隻もない、波の音だけが聞こえる空間。
そこに俺とエドの少し白い吐息が不純物のように上に昇っていく。空には満天の星、日本ではまず見られな天の川が俺達を照らしていく、まるでこの先の世界の運命を見ていないかのように。
「いい加減教えてくれませんか?」
「言ったろ? 見れば分かる。これはそれだけの意味じゃない。お前の戦場がそこだからだ。てかそろそろ【聞こえてきたんじゃないのか?】」
⋯聞こえるって、何も⋯何この音、、ポーって音、まるで船みたいな。
────待って、船、港、誰もホワイトハウスの話をしない、秘密の合言葉⋯まさか。
「エドさん、まさか!」
「そのまさかだよ。ホワイトハウスは土地を持たない、ただ一個の豪華客船がそのまま国になっている。そこでは暴力行為以外が全て合法だ。
【白昼国】ホワイトハウス
別名 ”眠れない国”。今から俺達が歩む国だ」
ボーっと汽笛を上げた大きな船がこちらに来た。一つの通路が開き、俺達はそこに入る。
「お待たせしました。エド様とクスノキ様でございますね。こちらは豪華客船【ホワイトハウス】どうぞお通り下さい。
そしてこちらを、このカードがこの船での身分証明書です。もし無くされた場合、侵入者と見なされそのまま海に落とされますので無くさないように」
エドと俺はカードを渡される。
俺のカードにはこう書かれていた。
クスノキ ID f―258758438 ランクG
エドのも見せてもらったが、IDは見えない。本人にしか見えない特殊な仕様があるらしい。だがランクはEだった。
「クスノキのランクは⋯Gか。ずいぶんと低く見積もられたな」
「どういう事ですか?」
「最低ランクって事だよ」
そして俺たちは豪華客船にはいる。
まず目に入るのは天井を占めるシャンデリア、そして下にはルーレットやトランプで一喜一憂している奴ら。
優雅にワインを飲んでいるやつや、泣き叫んでいる奴もいる。
「ここは国だから、宿泊施設や風呂もある。まぁ勝てればだがな」
エドの忠告を俺はこの後、嫌でも知る事になる。この国は文字通り「勝ったものが勝者」なのだ。
ここは闇と金の国【ホワイトハウス】、一歩間違えたら地獄行きのこの船で俺達の大人ゲームが始まる。
涙花寵愛編(前編)~完~
次章
涙花寵愛編(中編)
”黄金変容編”
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