海と雨は紙一重
俺たちは水路を進みながら、中央機関室を目指す。したの水は魔力を搾り取られ、もう燃えカスのようにサラサラと流れている。
特に何も無い道を、意味の無い水が、余裕もなく流れているのを見ていると、少し心が洗われた。
「クスノキ、少し問いたいんだが」
ん? どした? エド
「お前が、はぐれた時バケモノと戦ったろ? 恐らくあれも対ムーン用決戦人造人間だ。戦ったお前から見て、あれは脅威か?」
「……いえ、脅威にはならないでしょう。確かに【固有反転】を使えましたが、私が勝ちました。私に負けてるようじゃ、ムーンに勝てるわけがありません。
例え、私が百人で戦おうとムーンは【百匹の蟻】としか見てないでしょう」
そう、あのポンコツでも神なんだ。あの化け物に負けるとは思えない。
でもそうじゃないんだろ────
「エドさん、あなたの意見は?」
「……まぁ俺も九割同じ意見だ。確かにあの王様が負ける姿は想像できない。でもだからこそだ、人造人間なんて生み出せる技術を持つやつが、そんな事も分からないもんかね?」
───そうだ、俺もそこが引っかかっている。もしもこの組織がムーンに戦いを挑む気なら何か奥の手を持っているはずだ。
……まぁそれが中央機関室にあるんだろうけどね。そういえば中央機関室って何なんだろうか?
「エドさん、中央機関室って何なんですか?」
「あぁそれは俺に聞くよりも、ギアルに聞いてやれ、あいつ今暇してるからさ」
そう言ってエドが指さした場所を見ると、プラプラと壁を見ている、ギアルがいる。確かに暇してそうなので、聞いてみよう。
「ギアルさん、今よろしいですか?」
「ん? どうした? スリーサイズ意外なら答えますよ? 言ってもいいですけど、あなたのも教える交換条件で可能だよ」
んな事言っても自分のスリーサイズは知らない。いやそういうことじゃないから─────
「そうじゃなくて、中央機関室って、どんなところなんですか?」
「あぁ、そんな普通の質問だったか。でも本当に言葉通りだよ。中央機関がある室、それだけ。
よく分からないか? じゃあもうちょいだけ詳しくね、この下の魔力が空っぽの水に魔力を流す場所だよ」
「え? 水から魔力を抜いたのに、魔力をまた入れるんですか?」
「私達は自然破壊者じゃないんだ、出来る限り自然には、影響を及ぼしたくない。こんな魔力が空っぽの水を海に流せば死海も当然。住める魚などいなくなる。なので海の生命が生きられる魔力を注いで返しているんです」
……リサイクルみたいなものか、そんでまた魔力を得た水を回収すると、上手くできたもんだね。
「しかもね、クスノキ。この案はムーン様が考えたんだ」
「え? ムーンが?」
「うん、『私達は海と生きているんでは無い、海に生かされてもらってるんです』って祖先に言って、このシステムを考え出したって聞いたよ。だから誇らしい、私達の王様はちゃんと臣民だけじゃなく、その先も生かそうとしている心優しい人だってね」
……なんだ、ちゃんと神をやってるじゃん。アルピスだけを守るのではなく、他の場所まで。
へー、ん? なんか今変な門を通ったな。
「ギアルさん、今の門はもしかして……」
「うん、中央機関室の入口だね。さてさて、鬼が出るか蛇が出るか、見てみようじゃんか」
……ギアルによれば、中央機関室には人がいないらしい。全ては機械が制御している。逆に人がいると不備が生じる可能性があるらしい。
だから人はいない───それが事実だったはずなのに…
「ん? えっ!? なななんんすか!? どこから、ここには、、ひとがいないっていう…はずなのに」
いや、そりゃあこちらのセリフだけど……誰?
「あの、誰ですか? なんでここに人が?」
「……えっと、私が弱ってたら、排水管に入っちゃって、そのまま迷ってたらここに辿り着いて……今になります。え、えへへへ。以外と居心地いいですね。ここに私がいることは、、水に流しましょう。アルピスだけに……なんちて──」
なんだコイツ。頭の髪から水が出ている。貝殻のような杖を持って、瞳が水の雫のような形をしている。
そして、体は小さいから騙されるかもしれないが、化け物のような魔力量だ。本当になんだこいつ。
「──あっ! そそ、そういえば私自己紹介してませんでした! 私は【涙王】”シャイミール・アクアマリン”です。どうぞ、宜しくえへへ」
俺の目の前にいるのは、世界に涙を流す慈愛の王。
彼女が涙を流せば、争いが終わる聖女と呼ばれる存在。彼女が祈れば雨が降る祝福の王。
実態はこれだが、これから起きたのは全てが奇跡。
ある人間が左を通る。すると後ろから来る人間は多少なりとも左に舵をとる。
逆もまた然りだ、右に行けば多少なりとも右に行く。
シャイミール・アクアマリン
固有魔法”私の涙が雨となる”能力『運命操作』
だがアクアマリンが歩いた道はそれが真実になる。後ろにいる人間は全てその後ろを歩く。
見ろ聖者の行進を。全ては海に帰るのだ。
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