噛み跡は全て噛んだからできる
クスノキ「浄化」
エド「へぇ、本当に怪我が治るとは半信半疑だったがな、俺も最近腰が痛くてな、治せないか?」
クスノキ「運が悪いとパリピになりますが、それでもやります?」
エド「失敗のデメリットデカすぎないか?」
「……さてここが、パイプ室って所でいいんだよな? ギアル」
「そうだね。エドの言う通りさ、ただそんな目で見ないでくれ……私も混乱している。何が起きたんだ?」
……二人が困惑しているのも理解できる。俺達は確かにパイプ室に辿り着いた。
ただそこで目にしたのは、何本ものパイプが破裂している地獄絵図だった。これじゃあ排水が機能しなくてもおかしくない。ただ……妙だな。
「カゲさん、このパイプの破壊後って」
「……クスノキ殿も勘が良いでござるな。これは破裂した跡ではないでござる。自分で言ってて困惑するが何者かが【噛み付いて】壊したのでござる。でもなければこんな歯型はできないでござる」
そう、俺達が見ているのは全てのパイプにある【噛み跡】。
到底人間の口の形ではない。異型だ、ライオンとワニを合わせたような横にも広く縦にも広い、そんな歯型だった。
「ギアル、お前はこれをどう見る? 何者かが破壊した跡だが、理知があると思うか?」
「エド、もうこれは何者かじゃない【何か】だよ。何本か、同じ目的地に繋がるパイプなら目的も予想できるんだけど、本当にランダムだ。法則性なんかない気がする。
ただ、これを治すのは骨が折れるね。……とりあえず、何本壊れてるか確認したい、散策しよう」
「わかった。───こっちは、クスノキとハクアを預かる。ギアル、お前はカゲと行動しろ」
ギアルと話していたエドが帰ってきた。どうやら三対二に別れるらしい。あっちの二人は大丈夫と聞いたが、あの二人も強いらしいので、大丈夫だと言うこと。
そして、これをした者はエドの予想ではここにはいないと。
「先生、なんでこれをした犯人が、ここにいないとわかるんですか?」
「ん? あぁ、法則性が無いからな。ランダムにパイプに噛み付いたのは【興味があったから】だろう。
目的の物はここには無かった。だからこそ、くわれていないパイプがある。もう飽きたんだろ、だからここにはもう居ない、わかるな?」
「……では、なぜパイプに噛み付いたのでしょうか?」
「ふっ、ハクア。それについても検討がついている。簡単な事だ。【パイプが目的の物】に似ていたんだろう。どんな国も闇があるとは自覚していたが、ここまで深いと闇よりも泥に近いな。クスノキ…お前なら分かるだろ? 問題だ。パイプに似ている物でそいつが探していた物はなんだ?」
……こっちにいきなり振らないでくれないかな? んな事言ったって、分かるはずもない。
だが、少し発想を変えよう。エドがもしも【自分を転生者と知っていたら】と。日本にあったものであんのものあったっけ?
んー……噛んだって事は、そこまで気密性というか、割れ物とかじゃないのか?
それともあれを破壊する事が目的だったとか? だから適当に噛み付いた、そして目的のものはなかった。
…だが何本も壊れているということは、挙動自体は目的の物と一致していたのか? そして何本目かで何かが違うと気づいた?
つまりこれはやはり壊す事で目的を達成するもの……そして壊れると水が出るもの……あるにはあるけどホントにあるのかな?
「クスノキ、随分と長考しているな。答えが信じられないだろ? だがそれが真実だ────
When you have eliminated the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth*.
全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる。
───俺が好きな探偵の名言さ。難しく考えんな。お前の考えが正しいよ。まぁただ、これが外れていて欲しいんだかね」
歩くとパキッと音がする。あぁそうか”当たり”か。踏んだのはガラス、そして近くには培養液。
もう分かるはずだ、あるのはカプセルだ。それも特大の小さい家族なら全員入れそうな大きさの。
「先生……これは?」
「分からん。なんだろうな、ただ一つ言えるのはここになにかが入っていたと言うこと。そして、ガラスの破片が外側にあるということは、内側から壊したんだろう。これはもう外に出ている。何かがアルピスの内部で蠢いているな」
……壊れている。至る所から穴が開き、水が出ている、何度も殴ったのか? …なんの為に?
「クスノキ、とりあえずギアルと合流するぞ」
「検証などはしないんですか?」
「やめておけ、この液に人間が触れたらどうなるかわからん。それに【もう本体はここにはいない】。最後にギアルもなにか掴んでいる頃合だろう……いい報告だといいんだがな」
そうして俺達は、ギアルと合流する。
エドの言う通り、ギアルも情報をつかんでいた。予想とは反対の醜悪なる報告を。
「……ギアル、その報告は本当か?」
「信じられない? エド、君らしくもないね。信じられないものを信じるように推理する、それが君の流儀じゃないか。
でも確かに、理解できないものも分かる。これはそれ程の報告だ。でもバカみたいだろ? こんな逃避行が、これを生み出したんだから」
”対ムーン用決戦人造人間 バイオ研究所 5604号”
それがこの国の闇だった。見ようとしなくても闇が見えてしまう。知らないままだったら、良かったのにと、後悔する時間もなく事実は既に目の前に迫っている。
「全ては中央機関室か…」
「そうだね。そこに全ての答えがある、てか無いと困るけどね」
引用元 *シャーロック・ホームズ 『白面の兵士』
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