誰かの物語
あらすじ なんか溺れた
ゴポゴポと音がする。これは口から出る俺の空気。
あぁそうか、俺は今溺れているのか。体に力が入らない、終わりか。短い命だったが…楽しかったな。
「でもそうなのかな?」
…何だ? 今どこから声が? 違う。これは俺の者なのか? いやこれは【誰の記憶】だ?
◇◇◇◇
「そうなのかな? って何だよ。天国があるかどうかの話だろ? 無いって言って何が悪いんだ」
「そうだね。ごめんね、でもさ少しつまらない感じがしちゃってさ」
放課後、夕日に照らす教室で男女二人喋っていた。これは誰と誰だ?
だが何故だろう? この二人を見ていると安心する。まるで友達みたいだ。
「つまらないって? 今まで死んだ人間が天国にいくのなら今頃ぎゅうぎゅうだろうよ。逆にお前はそんな所に行きたいのか?」
「うーん、行きたいかどうかと言われると行きたくないけどさ、天国が無いのは悲しいかな。君も私もこんなに生きている。もちろん私達より年上の人はもっと苦しんで生きている。なのに、生まれて、苦しんで、苦悩して、別れて、泣いて、その先が暗いなんていくら何でも悲しくない?」
…俺は転生した。あれを天国というのだろうか? おじさんがクネクネしていたが、それでも苦しくは無かった。じゃあ天国はある─────
「それだよ、それが気に食わない」
「何が気に食わないの? いいハッピーエンドだと思うけど」
「天国は罪の無い人間が行くんだろ? そんな人間なんかいない。人間どれだけ聖者だろうと、一つは罪を犯している。動物を食べ、生命の命を自らの糧にする。
他の動物もやっている事だが、それでもそれは悪だろう。己の為に他の命を食べる。それが悪じゃないなら何が正義かも分からないからな」
「…それぐらいは閻魔様も把握してるんじゃないかな? 地獄でも食事をするだろうし」
…これは本当に何の記憶だ。特に女性の方、俺は確実に見た事がある。何故だ、何故思い出せない? 頭の中から引っ張りだそうとすると、何かがそれを邪魔する。
なぜ、思い出そうとすると、こんなに頭が痛くなるんだ?
「誰…仲間…あれが…始ま」
頭が…痛い。
「じゃあ、さ」
「殺してみ」
「ヒーロー」
「明日を」
「救っ」
頭が…ダメ…だ意識が…朦朧と、、
「そうでしょ? ねぇ、魔王アリス」
◇◇◇◇
「クスノキさん! 大丈夫ですか!? 今水を吐かせます!」
「ゲボ! ゲボ!」
「あぁ良かったです! 意識が戻ったんですね! 死んでしまうかと思ったのです!」
「……ここは?」
目の前にいるのは、ハクアか。確か、俺が溺れたからもう一人水に飛び込んだことは覚えていたが、君だったか。
うぷっ。水がまだ胃に大量に入ってるな、見た所陸地があって助かった……これは助かったのか? なんだここは?
「…ごめんなさい、クスノキさん。ここからは地獄かもしれないのです。帰ったらアイリスに問い詰め無きゃ行けないのです───生きて帰れたらの話なのですが」
よく分からない通路。それが第一印象。そして次に地面を触って絶望する。
これは……コンクリートだ。
「ハクアさん、コンクリートって知ってますか?」
「コン…なんて言いましたです?」
───知らない。つまり、これはアルピスも知らない人工物という事か?
……一か八かだな。鬼が出るか蛇が出るか、行ってみないと分からないか。
「進みましょう、ハクアさん。何かあったら私が守ります。助けてもらった恩も返したいですし」
「…そんな恩なんて、本来ならこの問題は……いえ、もう隠している場合じゃないのです。クスノキさん。このアルピスでもう少し経つと祭りが開催されるのです。それかご存知ですか?」
「……えぇ、名前は知りませんけど、大きな祭りとはアリエルさんから聞きましたよ」
「祭りの名前は■■■■祭と言います」
「……何て? ごめんなさい。耳に入らなかったというか、ノイズが入ったというか」
「…やっぱり名前が聞こえないんですね。先生にも名前が聞こえていません。聞こえるのはアルピスで生まれた人間だけです」
…どういう事だ? なぜ祭りの名前を隠す必要がある?この国は何を隠している? 恐らくムーンも知らないだろう、あれば言ってくるだろうし。
まずい気がする。おそらくこの先だ。この先に答えがある、何か黒い奴がいる。
「ハクアさん、祭りの件は後で考えましょう。今は進むべきです。おそらく勘ですが、この先に答えがある気がします」
「…分かったのです。フォローは任せて欲しいのです。急ぎましょう」
俺らは通路を進む。進まない方がいい、場所をスタスタと進む。良くあるだろう? 心霊スポットとかに行くと途端に足がすくむあれ。
あれとは恐怖のレベルが違うが、本質は同じ。帰りたいと心の底から思えてしまうほど、目の前には虚無しか無かった。
「…ハクアさん、あなたは引き返した方がいいかもしれません。少し経てばエドさんが迎えに来るかも───ハクアさん?」
「……クスノキさん、さっきまで私たちがいた場所が……ありません」
そんな訳!? …本当に無い、いやさっきまで確実に出口はあった。つまり出口が無くなったのだ。
こんな感覚を俺は知っている。ついこの前魔王にボコボコにされた時展開された。固有魔法を極めた者が使うもの。
これは…固有反転だ。
───認識が甘かった。あっても危険生物だと思っていたが、まさかこんな……
~一方エド達~
「クスノキ! ハクア! 返事しろ! いなくても返事しろ!」
「いや、いないのにどうやって返事をするんだよ」
そんなコントをしている場合じゃないが、エドたちはボートを使って二人を探す。
幸運にもギアルがいるので、あそこから流れ着いた場所を、虱潰しに探していく。
「カゲ、見つからないか? このままポンプ室に行った方がいいのか? ギアルの予想なら、ポンプ室当たりにいる可能性が高いんだろ?」
「……確かに、その可能性が高い。だが、そう簡単な問題じゃないかもしれない」
「どういう事だ?」
「エド、君には言ってなかったが、私が君たちに着いてきたのには理由がある。最近この場所で奇妙な噂が流れ始めていてな。排水量が低下しているのも、全てこれに関係しているのかもしれない。……いやもしかしたらこれが原因なのかもしれない」
「……その噂ってのは?」
そしてギアルは口から告げる。その噂を─────
「ハクアさん、離れて下さい。こいつはまずい。出来る限り、隅に入って、早く!!!」
「は、はいなのです!」
────その噂は本当だった。ほんの少し前から言われていた、”アルピスに何かが住み着いている”という噂。
黒く、爪が生えた、大きく、くまのような、竜のような、化け物で、おぞましい、怪物がそこにはいた。
「あれは…一体? アルピスが汲んだ海の水を片っ端から飲んでいる? あれが原因? いやそれにしては……」
「(こっちを見る)ヴァァァァ!!!!!」
「!? バレましたか! では戦いましょう! やっぱりどの国でも戦うことは避けられないんですね!」
またもや始まった、怪物との戦い。また俺が負けると思ったか? いいぜ、見せてやるよ。俺がプリスにボコボコにされた一ヶ月の修行の成果を見せてやる!!
読んでいただき本当にありがとうございます!
最初は涙花寵愛編は戦い無しの明るい章を目指したのですが、やっぱりダメでした。
星を増やしてくれるとありがたいです。
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