開話<かいわ> ひとつの噂
異世界に行ったら帰ってこないでください。と言ったら誰も行かないのかな?
『■■へ 今日も帰れません。なのでご飯は自分で食べてください』
ある夜の日、少年はその紙を見る。言葉通りだ。母は居ないので即席のカップラーメンで腹を満たす。
もう何年後の生活だろう? そんな疑問すら彼の頭には出てこない。それが彼の普通なのだから。
20■■年 8月 ■■日
ある夏の日、彼は田舎道を歩く。
蝉が泣き、小川の水が響く、なんの変哲も無く、ただごく普通のよくある平和な日常だ。
ただ彼の状態は普通では無い、あるミスをしたからだ。
「はぁはぁ、暑すぎだろ。てか日陰も無いってどういう事だよ。地球温暖化だからとか知らんけど、このままじゃ死─────自販機はっけーん♪」
彼は自販機で飲み物を買う。炭酸で喉を潤し、先に行くやる気をだす。
今日は彼の成績を上げるために夏休みでも学校に行く。いわゆる【補習】と言うものだ。
予鈴が鳴り彼はそれと同時に教室に入る。地元でも頭が良い所なので人は少なく六人しか居なかった。
「ギリギリだったな、遅刻したら明日もだったぞ?」
「るせー、間に合ったんだからいいだろ」
良くない。
簡単な挨拶をして補習が始まる。今日は英語、彼は旅行する予定などは無いので英語など要らないと思っている人間だ。
まぁ実際その通りだが、四の五の言わずにやって欲しい。
一時間ぐらいたっただろうか? 少しづつ集中力が切れてくる。
「なぁ、お前はあの噂知ってるか? 番組でもやってた【異世界への行き方】ってやつ」
「───あー、飯食ってたから話半分だったな。出ていたタレントがタイプだった事しか覚えてねぇ」
横にいた女の子も話に入る。
「あーそれ知ってる! なんでも、丑三つ時に廃墟の屋上の扉を開けると異世界に行けるってやつでしょ? そんな事信じてるの? 男子ってバカー」
「るせーな!! 入ってくんなよ!」
その言葉で彼は思い出した。その番組では確かに異世界の行き方を特集していたが、それはバライティーでは無くドキュメンタリーだった。
事件発生は約四日前。ある二人の女子高生が行方不明になる。
警察が一万人を動員して探したが、発見どころか死体すらも見つかっていない。
理由は遺書や監視カメラなどにほとんど映らずに失踪してしまったからだろう。
だが手掛かりがない訳では無い。行方不明になる日、女子高生二人の机には同じメモがあった。
【落ちろ 落ちろ 丑三つ時に あそこに行け 落ちろ 降りろ はぐれ者よ 廃墟の屋上 扉を開けろ そこに 天国は 待っている ■■■ ■■■を ■すために】
最後の方は黒塗りになっていて分からないが、これが唯一の証拠で、警察も必死に探しているが見つからない。
だからだろう、ある噂が流れ始めた。
”あの二人は異世界にワープしてしまったのでは?”という根も葉もない噂が情報社会を網羅した。
彼は思う(くだらない)とどうせ何処かで迷子になっているだけ、もしくは家出だろうと。
この世の全ての現象は科学で説明がつく。つかないのであればその現象は起こることがないという証明だ。
だがここは友人として話しておこう。
「本当に異世界に行ったのかもしれないな?」
「ほらな! お前は分かってくれると信じていたぜ! さすが俺の親友だ!」
「ばっかじゃないの? 男子ってこれだから」
そして、その後三人は喋っている事バレて更なる補習が出されたのだがそれは一人には関係ない話。
~丑三つ時~
「見てなさい。動画を撮ってあいつらに恥かかしてやるんだがら!」
昼にいた女の子が深夜家を抜け出して廃墟の屋上へと階段を歩く。
廃墟は14階の高層ビルだ。……なんでこのビルにしてたんだろう?
「ぜー、ぜー、なんでこんなに高いのよ! 隣の小さいビルにしておけば良かったわ。足がガクガクよ」
当たり前だ。因みに横のビルも七階あるのでまぁまぁきつい。
トントンと誰もいない場所を懐中電灯一つで歩いていく。
割と中は綺麗で取り壊しが決まっているから清掃が入ったのだろう。
夏の暑い日なのでムシムシとしているのは自業自得である。
「さてと、着いたわ屋上!」
意外と早くついた。屋上の扉を開けると、涼しい空気が肌を舐めて体温が下がっていく。
思っただろうか? 屋上の扉を開けたじゃんと。
場所が違う。更に言うなら屋上の用具室を開けると…だ。
「ここね、ここを開けて何も無ければあいつらにマウントが取れる」
何に対してマウントを取れるのか、それは彼女のプライドの問題なので考えるだけ無駄だ。
彼女の手がドアノブに当たる。普通だ。回して扉を開ける。中は暗い用具が沢山入っていた。つまり普通だった。
「なんだ普通じゃない。やっぱり噂は噂ね。さてととりあえず中を少しだけ動画で─────え??」
彼女が中に入るために足で部屋に踏み入れる。するといつの間にか場所は森に変わっていた。
だが不幸な事がある。場所が場所だ。
森は森でもそこは─────森が一望できるほど高い空中だった。
「きゃあぁぁぁあ!!!!!」
銃力が働き自由落下運動で彼女は落下する。ガサガサっと森に落ちて枝が身体中に刺さる、刺さる。
「グエッ、アベっ! ギャべ!」
刺さる。刺さる。心臓、胃、肺、至る所に枝や石が刺さる。
急斜面に行き、そのまま大岩から削れた小石のように崖を転がり落ちていた。
彼女は死亡した。
翌日行方不明になっていた女子高生が見つかる。メモも全ては自作で混乱させる為の自演だったと白状した。
異世界騒ぎはこれでおしまい。
なぜなら死んだ彼女は異世界ではなく少し先の森に落ちた。警察が翌朝死体を発見して自殺と断定。捜査は終わった。
だがこれを見ている人はわかっているだろう。
ここから始まった。
彼女こそが、この日本で長く戦う【急死転移落下事件】の始まりの被害者だった。
「なぁ昨日の」
「彼女、丑三つ時に廃墟の監視カメラに写っていたらしいぜ?」
「まさか本当に転移したと?」
「まさかw 手の込んだ自殺だよ。そう思い込め……じゃないとお前も食われるぞ」
「食われるって何に?」
「それは────魔王にだ」
■■■なのか? いえそれは違う。■■■である必要なかった ななななななななななな
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