世界の真実
閉話の登場人物はもう言わなくても分かりますよね?
神と人間、どちらが優れているかなど議論するまでも無い。
神は全てを救え、人間は掌にあるものでさえ、満足に救えない。
では、人間が神より優れている点はひとつも無いのか? と言われれば一つあるだろう。
己の責任で事態を悪化させた後神に救いを求める醜悪さが。
───────
馬車が聖堂へと向けて走っている。
「オロロロ!(口からキラキラを吐いている)」
「……アリエルさん、乗り物に弱すぎませんか?」
「そ、そんなことは無いのじゃ! わしは少し乗り物と相性が悪───うぷッ!オロロロ(以下略)」
────今日は食事を終えたら聖堂へと行く手筈。プリスが行かないから一人で行くかと思ったら、代わりに王女が付いてきた。
いくら何でも危機管理能力が足りな過ぎないか? 昨日知り合った奴に普通護衛も無しに王女を任せるもんかね?
まぁいいや、そろそろ聖堂が見えてく───うわ! また吐いた!
~聖堂~
馬車をおりてフラフラのアリエルを無視し俺は聖堂を見た。目の前にはシンボルの三日月のマーク。
俺は元々宗教が嫌いだ。何が好きで救いもしない神を信仰しなくちゃいけない。
神に祈りを捧げている暇があるのなら、その時間で今の現状を変える努力をした方がいい。
そう思ってしまう。だが、ムーンを見ると確かに救いを求める気持ちも分からない訳じゃない。
それでも、救われたいのなら……か。
───────
三日月教のモットーは。
”全ての人間に与えられるべき祝福を”らしい。
そりゃあ大きくて叶えがいのある願いだよ。
その中に俺やアリスは含まれてるのかね? だとしたらどうやって居場所を用意するのか聞いてみたいよ。
ところで少し話は変わるが、三日月教にはもう一つの名がある。
それが【戦う宗教】
三日月教はあらゆる所に支部を持ち、ある時は魔物と戦い、ある時は災害などで家を失った人達を保護している。
────話していて思うが本当にこれを作ったのはムーンなのか? 善意に脊髄が生えた生物が作ったような組織をあいつが? やっぱり同姓同名かな?
────────
【というわけで、お久しぶりですね! また会えて嬉しいですよ! クスノキさん!】
あっ本人ですね! カットが入ったような感じだが、聖堂に入った瞬間信徒たちが俺を拉致した時は、なんだと思ったら、この部屋に連れ込まれて今に至る。
じゃなくて、本当にムーンなのか?
「あなた本当にムーンなんですか?」
【そうですよ? 少し外見が変わってるから分かりにくいかもしれませんが列記とした神ですよ!】
あーうんそう。少し期待したんだけどなー、神も沢山居てこの神はめちゃくちゃいい神! みたいな演出。
なのに、いるのがこいつだもんなー。
【────あの、何考えてるか分かりませんが、その哀れみの目を辞めてくれません? 確実に心の中で馬鹿にしてますよね?】
「いいえ? ただなんかあなたがトップかー。と心の中で思っただけです」
【それを馬鹿にしているって言うんですよ。てか心の中だけで思ってて下さいよ。なんで口に出すんですか】
はいはい、それで何でいるの君。世界には干渉しないという事では?
【───あぁそれは違いますよ? それを言ったのはムーンじゃなく『全能神ムーン』ですよね? 私は唯のムーンです】
「─────??」
【頭に? が浮かんでますね。簡単に言いますと、【全能神ムーン】が本体で私は本体から世界を維持するシステム以外を、根こそぎ奪って降りてきた別本体という所でしょう。
あっ、ですが性能としては殆ど私が持っていますので】
上にいる奴は可哀想だな。
さてそろそろ核心に迫るか───────
「ムーン、貴方はアリスがエルフ神国を滅ぼしたことを知っていますか?」
【えぇ、勿論。私はエルフ神国に囚われていたのでね。彼の目的の為には私が必要不可欠ですから。いずれ助けられる手筈でしたよ。まぁ、滅ぼすのはやりすぎな気はしますがねw。
ですが私としてはメリットしかありませんでした。自由になりながらゴミエルフを処理できたんですから】
やはりそうか。つまり──────
「貴方はアリスと手を組んでいるんですね」
【え? 今さらそこの確認ですか? もう気づいていると思っていましたが、案外鈍いんですね。
少し答えを教えてあげます。根本的に話の土台が違うんですよ。このerrorWorldは私が作った世界なんですよ】
「え?」
【少しは疑問があったでしょう? 異世界なのに日本語だったり、居酒屋があったりね。これらは全て私が日本を真似して作った世界なんですよ。ただその分バグが多くて、色んな人に手伝ってもらっていたんですよ】
「……世界を選定から回避させるという話は?」
【あぁそれは本当ですよ。神共は私が作った世界は嫌いなのようなのでね。世界を救ったみたいな事実があれば守れるでしょうから。
まぁなので貴方はもう大丈夫です。あと時お願いしたのは私が身動きを取れなかったから。今は私とアリスで事足ります。貴方は自由に旅をして構いません。勿論この国で堕落に過ごしても構いません、お金ならいくらでも渡しますので】
空いた口が閉じなかった。いわゆる絶句というもの。
ムーンなりの慈悲だろう。俺はもうお役御免ではなく、あなたがやる必要は無いから好きにしてねという解放だ。
これについて文句は言わない。神と人間じゃ価値観が違う。スケールが違うのだ。
ただ、だからこそ思う。これに面白い顔をさせたいと!
俺はポケットにある【腕輪】を取り出す。手を組んでるのはそっちだけじゃねぇんだよ!!
【……なんですか? その腕輪────は? これはどういう事ですかね? 説明を……いやそれは今から来る相手に聞いた方が良さそうです】
そうだ。この腕輪から通信に出るやつはある意味でお前が最も信頼している破壊者なんだから。
『はいはい、どうした。クスノキ……あれ? 聞こえてる? おーい。どうしたー?』
【どうしたは、こちらのセリフですよ。何故あなたとクスノキさんに繋がりがあるんですか?】
『……今の声ムーン? あーそっかー。クスノキ、バラしちゃったかー。俺ちょっとお腹痛いから保健室に────』
逃がすと思う?
【逃がすと思いますか?】
『無理そうだね。あーはいはい、降参降参! ムーンの予想した通りだよ。俺はクスノキと【不可侵条約】を結んでいる。互いに助け合おうっていうルールをな。なにか不満でも?【どんな事でもいいから世界を救え】って言ったのはお前だろ? ムーン』
【───一体いつから貴方たちは手を組んで? 私は上からクスノキさんをずっと見ていた。見えなかったのはアリスの神域反転の時ぐらい……まさか! そこで!?】
そう、俺とアリスはスプラッタ王国での戦いの時。ユーロが助けに来る前に約束を結んでいた。
【お互い世界を救える準備が整うまで双方に手出ししない】という約束を。
さてさて先程まで余裕だったムーンの顔が苦虫を噛んだような顔になる。驚かせたかったがいい顔になったようだ。
さてさて次はどう出ることやら?
【そうですか、分かりました。では────】
ここにいるのは最弱と最強と最凶
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