閉話 世界を救うだけの話
あなたは自分が生きている世界が一週間後に滅ぶとしたら何をしますか?
少しだけ、少しだけ本当に少しだけ過去の話。
「今日地球は滅亡します。生きている皆さんは自殺するかそのまま死んでください」
アナウンスが流れる。それは最後の音声。それを機に全ての機械は息を揃えるように停止した。
もちろん人は死にたくない。
走る。どこに? どうやって? なんで? どうして?
そんな霧のように先が見えない疑問だけが心の中を支配した。
【────というのがこの世界の未来なんですが、それで良いですか?】
「いや、いいわけねぇだろ?」
特に何も無い、二人の会話。特徴をあげるとしたら現実ではない場所で話しているという点だ。
二人はこの時契約した。何を? それは分からない。朝起きたら夢だった様に薄れていくクレヨンのように地獄の未来だけがキックリと脳を支配する。
「おはよう」
それは学校で会話する。ある種の法螺話─────
「おう、おはよう。そういえばお前はどうだ?」
「ん? どうって何がだ?」
「あー昨日のテレビを見てねぇな? ある預言者が『一週間後に世界が滅ぶ』って発言してからTwitterも何もかも大慌てよ。
それでお前はどうだ? 「もし一週間後に世界が滅ぶなら何したい?」って話」
歯車は動き出している。もう二度と部品は取れず未来だけを引き寄せていく。
たとえ望まない未来だろうと、今すぐに目を離したい現実でもそれはやってきてしまうのだ。
「世界が滅びます。ここまでこの世界を支えてきた生命さん、お疲れ様でした」
一回目の滅亡が始まった。それは人類の意思でも星の意思でも無く、【神の意志】。進まない世界を切捨てた、理不尽な決定が産むシャボン玉だった。
海からは津波。山からは噴火、地面からは地震。空からは止まない雨。
これでもかと、生命を掃除するように全てを壊していった。
時は先程に戻る。
少しだけ契約をした話に戻る。ある契約とは──────
【貴方は家族、友人、関係の無い人、全てを救いたいと? それが傲慢だと分かっています?】
「もちろんだ、それでも救える未来があるのなら俺はそれに賭ける。何をすればいい? 何を捨てればいい?」
『男』が話していたのは、ある『神』。神としてはまだ半熟で踏めば潰れるような若輩だった。
神がもちかけたのは、お互いにメリットがあるwin-winの契約。
【それじゃあ契約をしませんか? 私はまだ神としては不十分なんですよ。なので貴方には世界を救って欲しいんです。一つ────いや二つ。どんな方法でもいい世界を救って下さい。
そしてその功績を私に下さい。そうして大きくなった暁には神としての力を使いあなたの世界を救うと約束しましょう】
「……言ったな? どんな方法でもいいと? たとえ人を全て殺して悪意無い世界にしても良いんだな?」
【えぇ、神は手段に意見を出しません。とりあえず救えればいいんですよ。貴方は孤児で昔から人殺しをしていましたから人を殺す事には長けているでしょう。何人も殺してきたんですから今さら何百万人殺そうが心なんて全く痛まないでしょう?
あぁ因みに名前は変えてください。とりあえず私が送るので『■■■』なんでどうですか? よく分からない穴に入って二度と戻れない。あなたにピッタリの名前でしょう?】
男はある名前を手に入れて世界を救う事にした。全ては自分の世界を救うため。
取るに足らない無駄な足を歩かせて、己が世界の為に、世界を滅ぼす旅に出る。
「さてと、とりあえず最初は救ってみますか」
男も馬鹿じゃない。全人類を殺して世界を救うよりも元凶を殺した方が楽だし早いことを。
結局殺すじゃん。という意見は無しだ。男にはこれしか無い。これで生きてきたのだから。
「結局─────ダメでしたか」
男は勇者として旅に出た。色んな力を得るために、色んなものを犠牲にした。
あぁ、とりあえず世界は救えた。だってもう世界を滅ぼす奴なんて居ない。結局全人類はその男に持って滅ぼされた。
圧倒的力を得た。だがその力を疎まれて、恐れられて、蔑まれて結局的当てのターゲットになるだけだった。
どの世界だろうが人間は変わらない。意志を持ち、悪意と被虐だけを食べて黒く醜く成長する生態は日本だろうと異世界だろうと変わらなかった。
この世界は他の勇者と魔王が元々戦っていたのだが最終的には勇者+魔王+全人類VS男というB級映画にもならない駄作ができ上がる。
唯一自分を慕ってくれた女の子がいたが、その子も自分を逃がすために自首をしてさらし首になっていた。
意志と時間を削り、得たものは力と孤独だった。
【さぁ、どうでした? 最初の異世界転生は? よくあるものと違い、残虐で最悪でしたでしょう?】
「……お前は知っていたのか? あの世界は救う価値がないことに」
【なんの話しでしょう?】とぼやかす神の胸ぐらを掴み、男は叫ぶ。
「何故だ!! 何故あの善人の女の子死ななければならなかった!! なぜ神はあの理不尽を許容する!! 何故放置しながら世界を救えと堂々と言えるんだ!!」
【……そうですね。答えを最初に教えてあげましょう。
貴方は殺虫剤で虫が死んだ時涙を流しますか?神からすればあの世界に生きている人間は世界を成長出来なかった不良品。生かす価値など殺す価値を探す方が難しいレベルのミジンコなんですよ。
残念かもしれませんが、この宇宙にある世界はあんな物ばかりです。どこだろうと弱肉強食、優勝劣敗、適者生存なんですよ】
男は初めて絶望した。少しだけ願っていた。(ほかの世界はまだマシなんじゃないか?)という希望が一瞬で粉々になった。
そして理解する。世界を救うことに価値なんて無い。どうせ滅んでもいい世界だ。俺を救ってくれたあの女の子の様な人間をこれ以上増やしたくない。
「次は最初から世界を滅ぼす。それでいいな?」
【えぇ、お好きな様に。あっ因みに貴方が世界を救ってくれたので少しだけ昇進出来ました。お互いの目的の為に頑張りましょうー!】
to be continued
■■■なので■■■じゃないですか? ■■■とじゃないので■■■■■■ですね。ねねねねねねねねねねねねね。
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