にゃーは悪くない
クスノキ「ん? 『鎧でアルピスにいるんですか?』って …脱いでるに決まっているじゃないですか、今はフリフリのスカートですよ。いちいち言わせないでください」
ぴょんぴょんと屋根を飛ぶ俺とアリエル。
たまにささっと路地裏をぬけて、マントを被って何とか王宮の前まで辿り着く。
正直ここまでは余裕だった。だが本番はここからだ。王宮に入るにしても、忍び込むにしても門番をどうするか、そこが課題になるな────ん? 何やってんだ? アリエル。
「し! ここから入るぞ、ここからならば門番に見つからずに図書館まで行けるルートじゃ」
「……これは通気口ですか?」
「さよう、ワシは何度も脱走しておる。その時はいつもその通気口を使っててな、ワシレベルだと何処がどこに繋がっているかなどお手の物よ」
…確実に誇れることでは無いことで胸を張っている事はまぁ、放っておこう。
さて、いきますか────通気口だからわかっていたが狭いな。
「さてと、ここを右じゃな。埃っぽいのう、掃除をサボるでないわ!」
「それはそうでしょう。人が入る事なんて想定してないでしょうし。少しどいてください─────【浄化】」
「ほぉ!? ワシも見ない魔法を使うのじゃな、これはさらにワシの手元に置いておきたくなったぞ」
「私は一つの国に永住するつもりはありません」
「フカフカのベットじゃぞー?」
「──────……」
「真面目に考えておるのー、分かりやすい奴じゃ」
───うるさいな。こちとら転移してからフカフカのベットなんて入った事ないんだよ。
スプラッタもエレシュキガルも財政難でベット硬かったもん。
てかまだ着かないの? 『着いた』? 随分とタイミングがいいな。
「まぁ、そういうな。ここまで来ればもう安心じゃ」
「そうですか、では私はここで」
「衛兵呼ばれたいか? 嫌ならワシの横にいろ。どうする?」
「はぁ、そうですか。分かりましたよ」
「うむ、物分りの良い奴は好きじゃぞ。ウンウン」
「さてと」と振り返りアリエルは、目の前の大きな扉を開ける。
中はまぁ、言っていたからわかるが図書館だ。だが、驚いたのはその量。四方八方全てに本棚があり、数万? 数十万の本がきちんと並んでいる。
おとぎの国に迷い込んだかのようなそんな気持ちになった。
ふとしてアリエルを見ると先に進んでいるので、追いつくか。
「お主、この景色に見惚れるのは良いが迷子になるなよ? この図書館は広い。迷ったら次発見されるのは1年後になるかもしれんぞ?
さてそろそろ受付じゃが────おっ、いたいたニャークルじゃ」
あるのは大きな一つの机。そこに一人の女の子が寝ている。疲れているからなのかは分からないが爆睡である。
さてと、その子が王女の切り札なら見せてもらおうじゃないか。その手腕を。
「起きよ、ニャークル。王命令じゃ!」
もう開き直ったな。王って言ってるし。肝心のニャークルは全く微動だにしないで爆睡していますが。
「ニャークル……起きよ」
「にゃー、すやすや」
「ニャークル!!」
「うるさいにゃー!」
ザシュッっと爪が王女の顔面にヒットして薄い傷が出来た。自業自得だから何も言えん。だが困ったな、ここまで起きないんだったら────アリエル?
「あー! ここにマタタビがあるのじゃ!」
「マタタビ! どこにゃ! ってあれ、王女様だにゃ」
いやそれで起きるのかい! 確かに猫にマタタビはあるあるだが異世界でもそうなんだな。てかなんで異世界に猫がいるんだよ。
ん? てか──────
「アリエルさん、別にニャークルさん以外の司書さんでも良かったのでは?」
「別の? ここにはニャークル以外おらんぞ」
「え?」
「言葉の通りじゃ、この図書館はニャークル一人で管理しておる。そういう固有魔法があるのじゃ。
こやつの二つ名は【本の虫】ニャークル・ブックアウトじゃ」
へぇ、面白いやつだな。俺も話してみるかってもう目の前にいる!
「お前は誰にゃ?」
「こんにちは、私の名前はクスノキです」
「クスノキ……よろしくだにゃぁ。お前はいい匂いがするから私の喉をゴロゴロしても良い権利をあげるのにゃ」
「あ、ありがとうございます」
初対面だが、結構懐かれたようだ。言葉通り俺がニャークルの喉をさすると、ゴロゴロと重い声を出してにゃー来るが喜んでいた。天国かここは?
「それで、王女様はなんの為に来たのにゃ?」
「む? おお忘れておったわ! 今日もいつも通り、ワシがずっと図書館で勉強していたと誤魔化してくれ!」
「嫌にゃ」
「な、なんじゃとー!!」
ちゃんと誠実な人のようだ。そりゃあ悪い事を担ぐなんてやりたくないよな。
「王女様は前にその悪事がバレた時、にゃーを売り飛ばしたのにゃ、あの恨みを忘れてないのにゃ」
「うぐぅ! そ、それは!」
前言撤回、普通に常習犯だったらしい。てかこんなに悠長にしてていいのか? 見張りの人がいつ来てもおかしくないと思うけど。
「仕方ないのじゃ、来月のマタタビを二倍に増やすと今約束するのじゃ!」
「足りないにゃ」
「3倍じゃ!」
「(首をブンブン降っている)にゃあ」
「ご、五倍じゃあ!!!」
「さてと、王女様の勉強に使う本を持ってくるのにゃ、待ってて欲しいのにゃ」
「勝ったのじゃ!」
勝ってねぇよ。何に勝ったんだよ。お前のプライドの負けだ。
マタタビってそんなにいいものなのか? ただの粉だと思うんだが、五倍になったら砂丘になるぞ。
しばらくしたらニャークルが、勉強用の本を二セット持ってくる。
そう二セットだ。「お前もここで勉強していくといいにゃ」という事で勉強に付き合わされた。
ムーンのおかげで文字は読めるがよく分からん。なんだ邪神アルカディアって、中二臭いな。
「王女様、周りの騎士にもアリバイを作って起きましたにゃ」
「そうか、フフお主も悪よのぉ」
「いえいえ、王女様程じゃありませんにゃ」
あー聞かないふり、聞こえない。きこえなーい!!
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