友人がそこにいた
あらすじ 特になし
「…さて王手を取りに行くか」
ボソッと呟いたアリスは、城の中にいる兵士達を殺しながら地下へと進む。
ホコリが蔓延る地下を降りながら少しアリスは考える。エルフ神国は【ある事件】を解決してから強い国力を手に入れた。
それまでは弱小国家と言えるほど衰退していた。
だがそれも過去の話、アリスはその事件の原因に向かって歩いている。
【転生者】
このerrorWorldにも数え切れない転生者が、旅行のようにこちらに迷い込む。
だが本来はありえない光景だ、魂だけになろうと世界を渡ることは許されない、それは世界のルールに触るからだ。
だがそれでも、迷い犬のようにこちらに来るのは目の前のこいつのせいだろう。
全てだ、全てこいつのせい。アリスが転生したのも、クスノキが転生したのも、原因はこれだった。
アリスはほとばしる顔の神経を隠して、それに攻撃を加える。
見た目は貯水槽のようだが、中身はぼやけて見えない。だがアリスには分かる。ヒビから水が出る。
そして空気圧の現象で貯水槽全体が割れる。中身が出てきたのはそこだった。
「よぉ、息災か? なぁ【全能神ムーン】」
「ゲボっ! ゲボ! はぁ、はぁ、久しぶりですね、アリス。 見違えたように大きく──────!!」
アリスはムーンの首を掴んで、締め上げる。ギギギと首から音が鳴る。
ムーンは涙目になって息ができずピクピクと動いている。アリスはギリギリの所で手を離す、彼女は息を荒らげながら床に倒れる。
「…無様だな、自らの愉悦のために作った人間に殺されそうになるとは」
「人間? ご冗談を、貴方のような化け物が人間なら世界は滅んでますよ」
「口が減らねぇな」とアリスは笑みを浮かべる。
ムーンは神域で生きている。クスノキが会ったムーンはあくまで法の【全能神ムーン】
つまり、ロボットのようなものだ。
エルフ神国はムーンから魔力を永久的に借用する事で、無限の魔力と国力を手に入れた。
それも今日で終わる。このあとアリスが皆殺しにするからだ。
「ムーン、これからどうする? 俺たちと来るか?」
「いえ、私には会いに行かなきゃ行けない人がいます」
「クスノキか? あいつならプリスジャンヒールもいるぞ。アルピスをめざしてな」
「プリスですか、まためんどい人を。え? アルピスに向かっている? 良いのですか? だってあそこは─────」
アリスは頷いた。アルピスにはムーンを崇める宗教団体が存在する。
つまり、ムーンの王国といえる。そこで会えとアリスは伝えている。言葉は少ないがそれでもムーンには伝わった。
「感謝します、魔王アリス」
「うぇ、お前に感謝されると背筋が凍る。さっさと行け、俺はこの国を固有魔法で滅ぼしたら違う国を目指す。
涙王に会いにいためにな。───じゃあなムーン」
その時には彼女はもう居なかった。
アリスも何も言わず地下を出る。最後の仕上げがあるからだ。
殺した。殺した。向かってくる兵士も、殺さないでと懇願するメイドも、何も知らない赤ん坊も全て殺した。
「人間は生まれた時は悪では無い」と言う言葉があるが、少し違う。
「人間は生まれた時には悪では無いが、体を巡る血は悪の塊だ」これがアリスの心理。
人が悪になるのは、環境でも、対人関係でも無く、生まれた時からの意思が、血が、本能が人間を悪に変える。
なので全員殺さなくては、悪を滅ぼすためには血筋を全て絶やすしかない。
アリスは城の人間を殺し尽くした後、城の最上階から出るベランダに降りる。
「いい景色だ。ここなら発動できるだろう」
アリスは正義の味方じゃない、れっきとした悪役だ。だからこそ出来る正義がある。暴力で解決できるものがある。
彼はグリシャに連絡を取る。
「グリシャ、終わったか?」
「おうよ。自我がある転生者は全員保護した。研究所にあった資料もついでに回収したぜ、滅ぼすにはもったいないからな」
「そうか、ならお前も早く帰れ。固有魔法で死にたいか?」
「へいへい」とグリシャもこの国から消える。残ったのはエルフの残党とアリスのみ。
先程アリスの悪だから滅ぼすみたいな正義を語ったが、今回エルフ神国を滅ぼす理由は至ってシンプル。
昔から居た友人が監禁されていれば誰でも怒るだろう? そういう事だ。
”固有魔法 不思議な世界”
アリスが固有魔法を発動する。空に何かが現れる、ブラックホールのような大きな黒い穴は全てを吸い込んでいく。
まるで空の穴に落ちるかのように、エルフ、建造物も全て飲み込んでいった。
残ったのは瓦礫と何も無い更地だけ。アリスのエルフ神国殲滅はこれで終わった。
少しだけため息をついてアリスも異空間に戻るのであった。
読んでいただき本当にありがとうございます!
なぜムーンがいるのか不思議でしょう? また今度説明します!
神国殲滅編は次の話で終わりです。
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