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永劫回帰は夢を見ない  作者: ユナ
第3章 腐都乖離編
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忘れじの灰

”あなたがもし 星を掴むなら 私が星となり

そばに居よう


君がもし 星を見たいのなら 俺が輝いて 星になろう”


『何もかも中途半端』


これがアズマの人生を表すのに最適な一言だろう。

アズマは元々魔力が低く、家族から厄介払いを受けていた。

特に理由のない暴力ほど厄介なものは無い。なぜなら『止められる理由』が無いからだ。

それでもアズマの心は家族を守りたいという一心だった。

固まった油のような不出来な心にできた不純物、それがアズマの『正義』に他ならない。


それでも、ある人物がある思いを託してくれた。

アズマと同じく不出来ではあったが、それでも才能に満ち溢れ、そして大切な幼なじみだった。


「それでもあんたは負けちゃいけない。家族の虐待が苦しいのは分かっている。でもね、貴方はまだ生きているんだから」


2割嬉しいの8割の怒りだった。お前に何がわかるんだと、ふさげるなと言ってやりたかった。

だが2割の嬉しいが全てを満たす。ボロボロだった盃に零れてもバレないほどの水が注がれていく。

初めてアズマはその時”愛”を知ったのかもしれない。


────────



超絶熱戦(オーバーヒート)!最終調整!」


アズマの最後の力がほとばしる。明日も笑っていたかもしれない。明後日は泣いていたかもしれない。

そんな、未来を全て生贄にして誰かの明日を作る為に攻撃を放つ。

アズマの炎は少しづつ色を変え、淡い虹色を映し出す。

全てを破壊する虹色の光。正真正銘最後の一撃を放とうとしていた。

もう目がほとんど見えないアズマだが、それでも分かる。大空はまだ目の前にいると、弾き返せるとまだ油断している。

なら自分の仕事はここだ。ここで大空を倒す。後のことは失礼だが、全て信頼出来る人間に任せるしかない。


(クスノキ、俺は最後まで分からなかった。目の前にいるやつも巨悪だ。お前はそんなやつでさえ、殺す時は安らかに殺すのか?

明日が見れなかった人間にも見る権利はあったはず、そうだろ?いつか、お前が天国に来たら教えてくれ、どうしたら『お前のように、優しくなれたのか?』と)



アズマは目を開ける。渾身の一発を放つ、巨悪を貫通し、正義を燃やす、そんな幻想でありながらも美しい朧かな夢を。


超絶熱戦(オーバーヒート)!奥義!熱戦融解(アマテラス)!」


炎がアズマから放たれる。音速に近いスピードだが大空は反応して見せた。

「勝った……」と油断する矢先、イレギュラーが起こる。

矢が曲がる。灼熱の温度で周りの空気が曲がったのだ。少し大空の剣がぶれる。

本来心臓に当たるはずの矢は大空の剣によって下にそれ腹を貫通する事になった。


「ば……かな」


大空が腹を触る。そこからは血が吹き出し今にも破裂しそうな程の傷口だった。

大空の負けだ。最後の最後で逆転負け、1番ドラマチックな負け方である。


「ばかな!ばかな!このキズはまずい!直ぐに治療しなければ!」


そう言って大空はその場から消える。音もなく逃げたのだ。

もちろんアズマはそんなこと分からない、だってもうそれを見る目も聞く耳も何も機能していないのだから。


(終わり……か。随分とあっけない最後だったな。家族のみんな、仇をうてなくてごめん。

それからごめんな──────)


その時、アズマの体が誰かに受け止められる。もう目も耳もないアズマだが涙は機能していた。

1粒の涙が目から落ちる。知っているのだ。

受け止められた手を、いつも自分が落ち込んでいる時支えてくれた小さい手のことを。

自分がプレゼントであげた、香水の匂いの事も。

それが誰かって?いつも喧嘩していた馬鹿(グリュエ)しかいない。


「アズマ!何してんの!こんなボロボロで!今すぐ治療するから……待ってなさい、直ぐにここから避難しないと!」


(最後ぐらい、手を握ってやらないと)と思いながらも手が動かない、もう手は無いのだ。少しづつアズマの体は灰になっていく。


「あ……あんた体が……嘘でしょ、イヤ!イヤイヤ!クスノキさんは!カオリさんは!誰もいないの?

お願い、神様でもいいから!アズマを助けて!幼なじみを助けてよ!!」


グリュエの涙が、アズマの顔に当たる。当たっては蒸発しているが、アズマには届いたのだ。


──ありがとう、グリュエ───


「嘘よ!嘘!こんなの夢に決まってる!いやお願い死なないで!まだ私あなたにお礼を言ってない!」


───最後まで、迷惑かけたな─────


「お願い!止まってよ!死んじゃやだ!初めて、初めて好きになった人なのに!」


アズマの体が最後まで灰になる。少しの風に吹かれて飛んでいく。どこか遠い国か、海かは分からないが、誰かの目に映るためにその灰は世界を飛んでいく。


(ありがとな、グリュエ。こんなろくでなしの俺だが最後には希望を残せたみたいだ。

本当にありがとう、お前の熱はこんなにも……暖かかったんだな)



そしてアズマは消滅した。何も残さず、すべてを廃にして、グリュエの前から消えていったのだ。


「ア……アアア!!アズマァァァ!!!!」


グリュエの泣き叫ぶ音が国に響く。たった1人の男の為に、ここまで走ってきた女の果たせぬ約束が、彼女を泣かせていた。


『いつか、ゾンビが居なくなってこの国が平和になったら、海を見に行こう!約束だぞ?なぁ、グリュエ?』


読んでいただき本当にありがとうございます!


アズマは最初から死ぬキャラとして生み出しました。後悔はしていませんが、少しやるせないですね。


星を増やしてくれるとありがたいです。


面白かったと思ったらブックマーク!


感想やレビューもお待ちしております!


星ももちろん大歓迎!


具体的には☆☆☆☆☆を★★★★★にね。


そうするとロリのやる気が上がります。

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