奏ろ生前葬を
あらすじ カウノはどこーだ!
『正義は必ず勝つ』
……という言葉がある。恐ろしく傲慢で勝者の文言だ。
ある意味、敗者が言える言葉かもしれないが、それでも表すのはいつも勝者の姿だ。
つまり負けるのは悪であると?負けたから悪なのか、悪だから負けたのか、まぁ平行移動だ。
これで言い争いたい訳でもない、ただ少し思うのだ。
正義が勝つのではなく、勝つから正義なのでは?と。
──────────
「イタタタ。まさかこんなにも消耗させられるとはね、時間も無駄に使ってしまったな。
……さて責任を取ってもらおうか?アズマ」
勝者は大空。負けたのはアズマ。
アズマはボロボロになり、体から大量の血を出している。
だが、奮戦はした大空も服が焼けて、火傷をおっていた。転生者とこの世界の人間、これ程の力が離れていてここまでの功績は褒めるべきだろう。
「さて───答えろアズマ、グリュエは何処にいる?」
大空の問いに何も話さないアズマ。答えた所で結末はわかっている。グリュエが殺されて終わりだ。
大空が剣でアズマの体を攻撃しようと、アズマは口を開かなかった。
「仕方ない、足を使って探すしかないか、見つければこちらの勝ちだ。10秒あれば殺せる」
─────その時初めて大空は足に熱さを覚える。見ると少し融解していた。
「へぇ、」と言いながら振り返ってアズマの顔面を蹴る。
アズマはその勢いで壁に背中からぶつかり大きな嗚咽をする。
「……驚いたな。まだ勝てると思っているのか?いい加減諦めろ。『正義は必ず勝つ』なんて言葉があるが、本気で信じているか?そんな訳ねぇーだろ。
人間の根本は悪正論だ。生まれた時から俺達は悪なんだよ。お前の家族を守りたいだの、グリュエを守りたいだのの願望は、傍から見たら美しいだろうな。だが、それも全てはお前が願う傲慢。お前からの一方的で返却不可の適当な正義なんだよ」
妥当な正義。それは簡単に作れて簡単に実行出来るアズマらしい願望だった。
そんな事はアズマはわかっている。だが、それでも体が勝手に起き上がる。
例え、自分が悪だろうと。
例え、自分の正義がガラスのように触れれば壊れる脆い玩具だとしても。
『目の前の悪を許してはならない』
体がそう訴える。前に動く、戦おうとする。
アズマの心の中にあるのは家族ではなく1人の幼なじみ。
分かっていた。自分は家族の敵を取りたいのではないと、1人の弱い馬鹿を守りたいだけなんだと。
体が熱くなる。固有魔法がさらに光る。
「やめておいた方がいい。君の固有魔法『超絶熱戦』は使えば使うほど身体組織が灰になっていく。
……どうせ早く強くしたいから、デメリットをつけたのだろう?愚かな行為だ。自身に枷をつければそりゃあ強くなる。だが諸刃の剣だよ」
大空の言う通り、アズマに残っている時間はもう少ない。固有魔法の使いすぎで身体組織はボロボロ。
正直大空が相手にしなくても勝手に死ぬのだが、それで死なれては夢見が悪いので相手にしている。
大空はどんなに強い攻撃でも負けない自信があった。
それはアズマも承知だ。
(大空には……どんな攻撃しても弾かれるだろう。だから一点突破だ。俺の全ての力を込めて打ち出すしかない、俺の最大の攻撃を!!)
アズマは足を突き出し、右手を出す。まるで射的をするかのように手をピストルの形にして、打ち出す体制にする。
高らかに叫ぶ。これがアズマが奏でる最後の生前葬だ。
「超絶熱戦!点火!!」
アズマは身体中の熱を手に集める。これで終わりだと。ここで終わらせるのだと全てをかけて熱を放つ。
大空は知らない、人が1番力を発揮するのは力を使い切った後ということを。
読んでいただき本当にありがとうございます!
アズマの話は1話で行こうかと思いましたが、当たり前のように3000時越えたので2話分割です。
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