アルグワ・バッタンテール
乖離の形を使い俺がさらに追撃を仕掛けようとした時のこと。
「──────!!」
俺の足が止まる。同じはずだった。先程と何も変わらない上位種のはずなのに、何かが変わった気がする。
まるで機械だったものが、人間になったような……
”万物を溶かせ 我は虚空なり 全てを壊す壊滅の光となして 明日を見れると思うな ”
!────上位種が詠唱を始めた。いやそれは今重要では無い。問題は発動した魔法が、とてつもない威力を持っているとここからでも分かること。
これは素手じゃ受けられない!
「フォールアウト! 起動!」
上位種の手から太陽のような火球が放出される。
温度が高いからだろう、周りの空気が歪んで見えている。
少しだけフォールアウトが早かった。反射神経で火球を切り裂いて空に上げる。
火球は空高くで爆発して雲を焼き切り、空を出す。
あれが国に、自分に当たっていたらどうなっていたか?と想像するだけで冷や汗をかいてきた。
「……ったく、死んだと思ったら、ボコボコにして起こしやがってよ。
ん?ガキじゃねえか、まぁいい俺の名はアルグワ・バッタンテール、ただの凡人さ」
そう言いながら上位種は髪をオールバックにしてこちらを顔を出す。見た目のおじさんの白髪でムキムキだ。
ヤバいな、勝てるかどうか。さてどうする─────
「キャアアア!! 来ないでぇ!」
────か弱い悲鳴が鳴る。俺からすれば聞いた事のある声。
確かに言っていた、『後で合流すると』。だが、今ここでかよ!!
「グリュエさん!大丈夫ですか!」
「うん! 無理! 助けて!」
ゾンビに襲われてる。しかもひとりやふたりじゃない。今からすぐに助けに行かないと!
でも、それじゃあ目の前のこいつを…………どこに行った?上位種はどこに?
「てめぇ、うちの娘に何してんだ! かっくらすぞ!」
えー、なんかボコボコにしてるー。ゾンビを一体一体確実に殺しているよ。
……つまり、こいつはまだ理性があるということ。
だとすれば俺がやる事はこいつを殺すことじゃない。
『こいつを味方に引き入れること』
いつの間にか上位種……じゃないや、アルグワがゾンビを殺している。
落ち着いたし、少し話して───────
「アルグワさん」
「うるせぇ、黙ってろ」
ハイすいません。じゃなくて! 仲間に入ってくれませんか?
「は?なんで俺がお前らの仲間にならなくちゃいけないんだよ。死人に助け求めんな、見苦しいぞ」
ド正論で腹が立つ。どうすれば……ん?グリュエ?
「お父さん……お願い。手伝って?」
「いいぞ」
あっ、こいつ親バカだ。
付け入る隙がありそうですな。さて─────協力も得れたことだし、作戦を……?
「アルグワだ。よろしく頼む」
アルグワが手を出している。なるほど握手か。
「クスノキです。よろしくお願いします」
握手はすぐに終わると思った。だが、アルグワの手の力がどんと強くなっていく。俺の手がミシミシと音を上げて。
少し俺も力を入れた。アルグワの目が変わる。両方とも負けず嫌いだ。2人の骨が折れる寸前になってグリュエに頭を叩かれて握手は終了した。
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