オオカミに1000回以上食われてた後、世界最強のロリになって再出発します
こういうのエモいよね
クスノキ達は話が盛り上がっている。傷は大丈夫か?とか今後の予定とか色々と。
だが忘れてはいけない、この勝利の一時の余韻こそが敗北する一番の原因なのだから。
カウノとカオリが盛り上がっている中クスノキだけは上位種を見ている。
(……立ったままだ。立って死ぬタイプか?武人だなー。
……ちょっと待て、あいつ切られた時確かに倒れたよな?待て、待て、じゃあまだ!あいつは!)
ほんの一瞬の判断。それが、生死を分ける。
クスノキはカオリを押して、カウノの方にに倒れさせた。
カオリ顔に怒りマークが出来る。いきなり身体を押されたのだ。振り返り怒りを顕にした。
「なんですか!いきな……り─────」
その言葉はクスノキには届かない。手をクロスにして防御姿勢を取っている。手の交わった中心には上位種の蹴りが直撃していた。
「───────!」
クスノキは何も喋らない。否、喋ったがカウノ達には聞こえなかった。
「逃げて!」と言ったのだが聞こえるわけも無い。クスノキは蹴りで遥か彼方まで吹き飛んだのだから。
クスノキの背中に大きな衝撃が走る。何か確認したかったがその衝撃で身体が回転してしまって視界がぶれていた。
次に視界が安定したのは、地面に落ちて草原の匂いを嗅いだ時。
(草?エレシュキガルの床は全て石だったはず。だとすれば俺は国の外まで吹き飛ばされたのか?)
クスノキは笑うしかない。あの背中の衝撃は国を囲む壁を突き破ったものだった。
その事実も笑い物だったが、もうひとつ要因がある。
「私は幸運ですね。乖離を使わずに倒してしまった時は残念でしたが、まだあなたが居るのなら試せる場所がある。国の外ならもう遠慮はいらない、第2ラウンドです!」
国の防壁の上に上位種が立っている。上からクスノキを見おろすためでは無い。それよりも国の、いやギルド館を見ている。
屋敷の上でバタバタとなびく旗。上位種はそれから目が離せない。先程少しだけ何かを思い出した気がする。
そんな吹けば飛ぶ紅茶の葉のような淡い疑問を心の底に押し込めて目の前の敵と戦う。
上位種は既にクスノキを敵としてみなしているのだから。
上位種は足に力を込める。姿勢はまるでクラウチングスタートだ。
壁に大きなクレーターをつけて、視線をクスノキに定めて突撃した。
地面の砂煙で2人の姿は見えない。
(さて……ここからだ。使ってみるか、乖離の力!ムーンはデメリットとか話してなかったけど無いんだよね?不安になってきた……)
──────────
「カオリさん!行っちゃダメです!」
「離しなさいよ!私はあいつを追わなきゃ……貴方意外と力が強いのね、痛たた!!わかった!わかったから!」
カウノもそれに気づいて頭を下げる。だが我を忘れるほどカオリをあちらに行かしたくは無かったのだ。
「カオリさん大丈夫です。クスノキさんは勝ちます。もう負けません」
「はぁ?!何言ってるの?負けてたじゃん。言っちゃ悪いかもしれないけどあの実力差は小手先の技術じゃ埋められない。勝てる見込みなんて──────」
カオリはカウノを見る。その目はクスノキを妄信的に信じている訳じゃないことが分かる。
確信があるようだ。クスノキが勝つ何かが。
「カオリさんは見えなかったかも知れませんが、クスノキさんは昨日までとは違います。根本的に変わったというか、なんと言えばいいのか分からないんですけども多分大丈夫です!
でも……カオリさんがどうしても行くというのなら止めません。クスノキさんをよろしくお願いします!そして、私は図書館で情報を集めておきます!」
と、一方的にカウノはカオリに喋って図書館に行ってしまった。カウノの言葉も一理ある。
カオリがクスノキに追いついた所で何を手伝えるのか?邪魔にしかならないのでは無いか?と守りたいものを守るためにカオリは分別をつける。
(信じるのもまた信頼か。勝ってね、クスノキさん)
そう思いカオリはカウノの手伝いをする。自分には自分の出来る仕事を、そこだけは日本もこの世界も変わらないやり方だった。
──────────
時は少し遡り、上位種が砂煙を起こした直後。
─────最初に手を出したのはクスノキだった。
「まずは1発お返しです!」
乖離を発動して手に+の魔力を込める。
勿論-の魔力が無いので発動出来ないが、それを自然から前借りする。
+と-の魔力が混ざり、炎の魔法が生まれクスノキは拳に纏わせた。
『乖離の形 壱の跡『猛』!!』
クスノキが上位種の腹を殴るとそれと同時に火柱が出る。
拳の衝撃と急激に温められた大気の膨張により、上位種は吹き飛んだ。
それをクスノキは見逃さない。
「ファイヤーボール!!」
プスッとクスノキの掌から空気だけが出た。
ムーンは魔法が使えると言ったがやはり詠唱は必要らしい。それを見る事も学ぶことを出来ないので、クスノキにはやはり乖離の形しか無かった。
「やっぱり詠唱がないとダメですか!仕方ありません!だったら足に!」
クスノキは足に乖離を使う。足にどんどん電気のようなエフェクトが走り事実電撃を帯びた。
『乖離の形 弐の跡 『雷』!!』
上位種の腹に電流が走る。見るとクスノキの足が直撃している。
少しづつ実力差が開いていく。
──────────
一体誰か信じるだろうか?、一体誰が話すだろうか?
望んでいなかった転生で──────────
『オオカミに食べられた後、世界最強の幼女になって再出発したヤツがいる』等と。
だがそれでも存在している。実在している。
ならば認めるしかない、拍手をするしかないのだ。
クスノキも笑っている。自分はこの時の為にあんな地獄を味わったのだと。
きっと自分は過去に戻り未来を選べたとしてもこの未来を選んだはずだ。ここまで来たのも、これから進むのも全てを持って『クスノキ』なのだから。
クスノキは高らかに叫ぶ、その宣言を──────
「上位種よ!私を舐めていませんか?あなたが相手にしているのは─────見ての通り贋作の英雄ですよ!」
─────その時だった。目覚めたのは何故か?偶然が必然か。
ついに意識を取り戻したのだ。
名をアルグワ・バッタンテール。
この国で初めて『固有反転』を習得した人間だ。
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