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ねぇ、これは私の偏見なんだけどね、あなたって麻雀ゲームでポン、チー、カン、ロンが同時に出たらカンするタイプよね?

作者: 絶飩XAYZ

 こんにちは、ウチは八神夏帆と言います。姫カットした黒髪が似合うとよく言われる女子高生です。大阪府の理生舎高校から愛媛県の松山城下高校に転校したとこや。


 今は昼休みで顔を右肘で支えて、ウトウトしていました。春眠暁を覚えずとはこういうことを言うんやろか? いや、違うかな? するとそこへ私の眠りを邪魔させることが起きた。


「ねぇ、これは私の偏見なんだけどね、あなたって麻雀ゲームでポン、チー、カン、ロンが同時に出たらカンするタイプよね?」


 腰に届く程の長い黒髪をツインテールにしてる彼女、湯山鈴がウチに向かって言う。


 明らかに眠そうなウチに何故か全然麻雀の話をし出したんやけど? なんやこの子は? しかも転校して今日で四日目ぐらいやけど殆ど話したことないし、席も近くないのになんやねん? ポン、チー、カン、ロンじゃなくてトンチンカンか?


 後、麻雀は四人でやる中国発祥のボードゲームでウチはよう分からん。正月に従兄弟がやりよったのを見よったけどあんま分からんから従姉妹と大富豪ばかりしよった。


「だからさ、あなたはカンするタイプよね?」


「あ〜ウチ……ごめん、麻雀分からへんねん……」


「いや、でも分かってるじゃないの、麻雀の話だって……」


「もう〜ウチは眠たいねん、寝させてや……」


 すると、遠巻きからクスクス笑い声が聞こえる。


「また湯山が麻雀の話しだしたよ、あいつあんなに麻雀の話するのにあんまり強くないんだろ?」


「転校生だから話しかけようとしてるんだな」


 特に男子の声が聞こえる。鈴は確かに日の浅いウチが分かるぐらい麻雀の話ばかりする。正直、どんだけ好きやねんってツッコミたくなるぐらいや、でもそんな鈴がウチに話しかけようとするのはきっと麻雀をとっかかりにウチと仲良くしようとしてるのだろうと思う。


「へぇ〜鈴ちゃん、また麻雀の話してるんだ」


 今度は女子の声がして、こちらに近づいてくる。その女子は眼鏡をかけた可愛らしい市松人形のような子だった。彼女の名前は草野芽依、一部の男子に大変人気のある子だ。この子が話すと男子がうるさくなるからちょっと苦手だ。


「ねぇ? 鈴ちゃん? 僕も麻雀出来るよ?」


「あぁ〜草野さんも出来るよね、知ってるよ……」


 明らかにテンションが駄々下がりの鈴を更に芽依は鈴に詰め寄る。


「なんで僕と話さず、八神さんと話すの? 僕は寂しいな……」


「いや、今は八神さんと話したくて……」


 すると、芽依の後ろから男子の声が聞こえた。


「芽依ちゃんに負けるから? 麻雀十段の芽依ちゃんの牌効率とか手の読み方とか上手いからついていけないよなぁ〜」


 芽依の取り巻きの一人で岸田裕哉と言う。こいつはやたらと芽依の言うことをよいしょするから好きじゃない。しかし、それはどうやら芽依もあまり好んでないようだった。


「ごめん、キッシー、今は僕が鈴ちゃんと八神さんと話してるから……」


 すると、岸田は黙った。


「……え〜と、別に負けるからとかじゃなくて……ね」


 鈴の声が段々小さくなっていく。最初は教室一杯に広がるような声で話していたが今は自信がなくなり、今にも泣きそうな表情をしている。あんま、女の子が泣く姿見たくないからウチは心にないことを言う。


「ふ〜ん、じゃあ、明日土曜日やからウチら三人で麻雀しに行こうよ、ゲームだと面白くないから全自動卓がある所に行こうよ」


 しかし、心の中では断れ、断れと念じていたが「僕は良いよ、分からないことも教えてあげる」と芽依があっさり答えた。更に鈴も小さい声で「私も行きたい」と答えた。当てが外れたと思ったがこれも良い機会だと思って割り切ることにした。


「……でも怖い雀荘はアカンでウチら未成年やから」


「JRの前にある雀荘鬼亮なら大丈夫だよ、僕もよく行くから分かるよ」


「あんた……お金かけてやってへんよな?」


「それはヒ・ミ・ツ」


 芽依は右目でウィンクした。


「それに僕聞いたことあるんだけどね、お金かけても捕まらなかった政治家がいたって話だから大丈夫だよ」


「お金は賭けたらアカンけど……」とウチが言いかけると「服は賭けてもえぇで」と芽依が言った。


「そんなん当たり前やん、服は掛けるもんやない?」


「やかましいわ」


 昼休みが終わるチャイムが鳴り響いた。


「じゃあ、八神さん、また後で話そうね」


「そうだね、あ、夏帆ちゃんの連絡先教えてよ」


「わ、私にも教えて!」


 二人はスマートフォンを取り出した。


「えぇで」


 ウチもスマートフォンを出して、二人に連絡先を教えた。


「えへへ、ありがとう」


 芽依はそう言って自分の席に戻った。


「じゃあ、また後でね……」


 鈴も自分の席に戻った。すると、同じぐらいのタイミングで教室のドアが開いた。


「はい、授業始めるぞ」


 そう言って、先生が教壇の前に立つ。日直の号令と共に立ち、ウチらは一連の流れを行い、席に座る。


 すると、ウチの机の中から何かが静かに震える。それを取ると画面に「よろしくね!」とメッセージが来ていた。ウチもメッセージを返すと鈴はこちらを見た。ウチは鈴をニヤニヤして見てやると鈴は顔を赤くして机の下で指を動かす。またウチにメッセージが来た。


「ロン」


 次にウチは岸田の方を見る。相変わらず芽依の方を見てはニヤニヤしている。そんなに好きなら頭良いねとか偉いねとか流石芽依ちゃんとかなんか言うよりもうちょっと普通に接したらえぇやんと思った。すると、またメッセージが来た。


「ロン」


 今度は鈴がニヤニヤしている。ウチはこう返した。


「ダブロン」

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― 新着の感想 ―
[良い点] あはは、ダブロンありなんですね。 しかも麻雀の話題だけで麻雀しないで話が落ちるところがいいです! [一言] 関西弁と会話のテンポが秀逸でした!
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