わんでい
失踪はしないように頑張る
青空が広がり風が吹く。出所するにはいい日だ。
痴漢冤罪吹っ掛けられてあの女の面ぶん殴ったのがいけなかった、後悔はしないし反省もしないが。
やはり刑務所は堪えるな、人殴りそうになる。
でも何時からだっただろうか。
人が嫌になったのは、幼稚園の頃に両親に自殺に見せられたから? 小学生の時火災で置いて行かれた時?
それとも中学でいじめの主犯に仕立てられた時かな?高校でテロリストの人質になったこともある。
思い返して苦笑する。相変わらず運が悪い、そもそも人嫌いなのも生まれつきかも知れない。
さてさて、金無し親無し住所なし。逆に何が有るんだと。
今有るのはぽっけに入った千円札だけ、これで何が出来るんだよ。
まぁそれでもいい日だ歩いて行こう。
道をひたすらに歩いてく、命が消える予感がして。
今や迫り来るトラックに引かれる。
内臓が潰れる、息が出来ない、こんなに苦しいのは火事以来かな?あの時感じた炎じゃなく、命がこぼれて行くのが分かる。そう、命だ、この命の波動をなんと呼べばいい?こぼれゆく命は温かく心地良い。
やっぱこうだよ結局こうなる、これでも悪い予感は当たるんだ。
死ぬにはいい日すぎるかな?
痛みは最早無い、ただ死を待つのみ。
残された時間は少なく。笑えてくる
「ははははははははははははははははははは」
いき、たいなぁ
世界が変わる。生まれ変わる。心地よい死を迎えたはずで、そして何より目が見える。元は弱視だったのに。美しい世界が広がる。
「此処は…」
美しい森、美しい湖、美しい体。
?…っは、ぼーっとし過ぎた、なんなら全てが変わっている、場所も体も全て、こんな森ではなかったし見下ろせばあるべき物がなく胸に緩やかな双丘が。当然服も着てないし極めつけにけもみみとけも尾が生えていた。
ただ困惑する、股に手を当ててもあるべき物がない。何十年と付き合ってきたのに無くなっても何とも思えないのが悲しい、恐る恐る体をいじくる。
「んっ」
…………止めよう、女の体がどうととかより自分がこんな嬌声を上げたのが怖い。どう考えても精神が変わってる気がする。なんだか現状を受け入れ過ぎているが……
湖に顔を近づける。すると白髪黒目のけもみみを生やしたクリクリおめめに小さく主張しない鼻、そして口角を上げれば誰もが可愛いというパーフェクトフェイスが写る。体も滑らかな曲線に釣り合った四肢は貧相というより無駄なく機能美と言う印象だ。この洗礼された自分の体を貰えたことに感謝する。
バキバキバキバキバキ
いきなりあらわれたソイツは、回りの大木を吹き飛ばし、7mはある巨体を震わせ、こちらを睨んでいた。
明らかに異常だ、この巨体は。こんなに恐ろしいのに、体はピクリとも動かない。それどころか嗤っている。この状況を。
こんな雑魚に睨まれるのは不愉快だ、体がそう訴える。こんな物はただの餌だと、結局俺が認めたくないだけだろう、自分が獣でどうしようもなくイカれていることを。ここは日本じゃない、もう我慢するのは止めよう。
ソイツは決心したように突進を繰り出す、怖いんだろう?自分が。矮小な存在でも、力量位は分かるらしい。
殺意を込め、怒りを乗せ、ただ殴る。
「シネ」
巨体と拳がぶつかれば、体格差を嘲笑う様に巨体が宙を舞い、地面に激突する。分かりきってた事だ。自分が勝つ、でもアイツが挑んで来るとは思わなかった。
だがこれでしばらく食料の心配は無さそうだ。
でもまだまだ安定には程遠い、全部受け入れてるのは気に食わないが、まず生きてることに感謝しようか。
少し体を動かせば高性能さがわかる。体が羽のように軽く、跳べば20mはある木を軽く飛び越した。簡易的100m走は軽く駆け5秒ほどだった。間違いなく世界新記録更新してる。
これは夢か現実か…
現実っぽいな。
辺りを見渡せば紙が一枚、内容は。
「この世界は運命の収束場であり特異点、此所に必然的に辿り着く等どんな人生を送ってきたのかを見てみたいものです。奇妙な運命を持つ者へ、幸あれ。」
ラプラスより
いまいちわからない
というかもう日が沈んでいる。謎が多いがとりあえず
おやすみなさい。