東証一部上場企業のOL、凛子の日常は何と幸いなことか。
初めての投稿です。
少しの文章を書くのも実に十年ぶりで
今、読み返して、恥ずかしくなってしまいました(笑)
まだ、評価が付いてないので、
皆さんにもっと面白く読んでもらえるように、
推敲しようと考えています。
今朝は曇天。
今にも灰色の雲が水滴に変わり、
雨となってコンクリートを叩き出しそうである。
但し、仕事は雨天でも決行なので、
取りあえずこの都心の高層建築物には出勤しているのである。
杉並凛子はため息を吐いた。身体が少し重く、だるい。
デスクの右隣にあるマグカップを手に取り、中のコーヒーを一口すすった。
大好きなブラックコーヒーが今は、
全身を重くする事に協力しているんじゃないかって程に胃がもたれている。
嗚呼、コーヒーの飲み過ぎか。マスクを取り手にはあっと息を吐いて、においを嗅ぐ。
案の定、少し酸味を帯びた様なにおいがする。
「先輩、東証一部情緒って何ですか?」
この発言は、2年後輩の安藤美咲。
「東証一部上場のこと?」
「え、情緒じゃないんですか?あの古文とかによく出ている、“あはれなり”の意味で・・・源氏物語によく出てくるイメージ。てっきり、株取引は情緒的な内面で感性を豊かにしながら行おうってことなのかと」
「っ」
凛子は笑いを堪えた。
「安藤さんって面白いね。そんな風に推測するんだ。株取引に関係するってとこが分かってる所がツボ(笑)」
「私、古文は結構好きだったんですよ」
「私は習ったけれど、もう忘れちゃったかな」
「ジョウジョウってどんな漢字書くんですか?」
凛子はデスクの引き出しから付箋をとり、
「東証一部上場」と書いて美咲に渡してやった。
美咲はいたく喜んでいた。
「東証一部上場企業」
凛子は株のことなんてわからない。
けれど、この言葉は知っていた。
お客様からの信用がある会社。
経営が安定していて、福利厚生が充実している会社。
誰もが認める大企業。
そんな会社に入りたかった。凛子は目を細める。
でも、美咲みたく純粋に知らない人もいる。
古典か・・・懐かしい。
美咲のことを一風変わった人として遠ざける社員もいる。
でも、凛子にとっては年が近く友達のような感覚で話せる貴重な後輩だった。
少し天然が入ったところはあるが、中々仕事も楽しんで取り組めている様だ。
エクセルが得意で、重宝されている。
「あ、これが本当の天然記念物か。人事のセンスも馬鹿にできないな」
美咲には失礼な言い回しかも知れないが、凛子は心の中ではそんな事を思っていた。
自分よりも天然な人に会ったことがなかったから、凛子はその点も嬉しかった。
良い意味で凛子をカバーしてくれている。
昔、好きだった彼に「天然なのは良いけど、度が過ぎる!」
と言われたトラウマが払拭できる様な気がした。
人選万歳!
「東証一部上場企業のOL、凛子の日常は何と幸いなことか!」
思わず声に出してしまった凛子は少し慌てたが、
小声だったので誰も気がつかなかった様だ。
当の美咲も斜め向かいの席でパソコンとにらめっこしている。
先ほど感じた身体の不調は和らいでいた。
こうして、凛子の仕事生活は続いていくのだった。
お読み頂きありがとうございます。
稚拙なりにも頑張ってゆきたいと思っております。