-2話 幼馴染は本物か-
-2話 幼馴染は本物か-
朝、僕はいつも通りに目覚めた。いつも通りに着替え、いつも通りに毛並みを整え、いつも通りにご飯を食べる。そして鞄を手に取って玄関を出ると…
「よう、時間ぴったりだな…?」
そこには数日前僕の横にいたあのハスキー、オガモトがいた。
「あー、えっと…オガモトくん、だっけ…?」
僕は突然の事に少し戸惑いながらも極めて自然に話そうと努めた。でもそれはどうやら彼にはお見通しのようで、
「ああ、悪い…ちょっと心配でさ、迎えに来ちまった…」
「そっか…大丈夫だよ、道順はちゃんと覚えてる。」
「だ、だよな…! じゃあ、行こうぜ?」
まあどうせ同じ学校に通う相手なら、一緒に歩いても問題はないだろう。ある程度歩いてればどこかで僕自身の知り合いにも遭遇するだろうし、もし全くの無関係な人だとしたらその時に不審がられるだろうし。
「そういやさ…?」
少しの間互いに無言で歩いていたが、相手は突然その沈黙を破った。
「この前ボードゲーム部のメンバー覚えてるって言ってたよな?」
「うん、覚えてるけど…」
僕はそれに続いて一人ずつ部員の名前を挙げていこうとした時だった。背後から僕らを呼ぶ声が飛んでくる。
「おー、氷鉋に鋸本じゃないか! おはよう!」
それは僕にとって聞き馴染みのある声で、正に今名前を挙げようとした人物の一人でもあった。
「ああ、ワタルくん…!」
彼の名前は鉈橋 渡、ハイエナ獣人でボードゲーム部の部長だ。
「…どうしたんだお前ら、いつもらしくないな?」
少しの間僕とオガモトくんを交互に繰り返し見た後、ワタルくんは僕らに聞いてきた。
「あ、えっと…」
僕が返す言葉に詰まっていると、
「あぁー… あんま気にすんなワタル、俺がちょっとシュウの相談に乗ってやってるだけだ」
「まあそれなら良いが…部活の時間までには解決しとけよ?」
ワタルくんは僕らに向かってぱっちりとウインクをして見せた。
「鉈橋くん…そのくらいにしてもう行こう…?」
ワタルくんの陰から、おずおずと小柄な虎獣人が…黄色と黒ではなく白黒の模様の虎獣人が出てくる。
「ん、そうだな釘谷」
この虎は釘谷 琥珀、見ての通りあまり友好的とは言いがたい控えめな性格だ。そして彼も同じ部の部員だ。
「そんじゃ氷鉋に鋸本、また部室でな!」
「おう、じゃーなー!」
普通にオガモトくんとワタルくんが話していたし、コハクくんもそれを全く不審がっている様子はなかった。
やっぱりオガモトくんは僕の知り合いだったんだろうか。
色々と考えながらオガモトくんと話していたらいつの間にか自分の教室へと着いた。
その時は突然の部員の登場に驚いてしまってもう一人の部員については話せなかったが、また休み時間にでも話せば良いと、僕はそう判断した。
どうやら僕と彼は同じ教室らしかったが、僕は少し頭の中を整理したくてその後は授業が始まるまで彼との話は一旦中断した。