第三話「メモ」
ツボミは帰宅すると、早速、姉の部屋へと急いだ。姉の部屋はいなくなった当時のままにしてあった。いつ帰ってきてもいいよにというママとパパの配慮からだった。ツボミも姉がいなくなったさびしさからしばらくは姉の部屋で寝泊まりしていたが、1年、2年と経つにつれ次第に姉の部屋にいくこともなくなった。この部屋に来るのも何か月ぶりだろうか、少し前に定期的な掃除と空気の入れ替えの時に入ったきりでしばらく来ていない。ドアを開けて入ると懐かしい姉の部屋の匂いが漂ってきた。
「たしか、引き出しの二番目に……。あった」
姉が失踪してから手掛かりが無いかと色々と探していた。色々なメモが見つかったが、それもどれも意味不明なものばかりだった。ツボミはその中でアヤカさんが見つけたノートとつながるものがあったのを思い出した。
『部室 ○月○日 S時SW分SW秒』
というメモだ。
このS時というのは姉が作った数字の符丁で良くツボミに向かって使っていたので、よく覚えていた。ツボミはこれが一般的に使われている言葉だと思って、友達に使って恥ずかしい思いをしていた記憶が蘇った。
「たぶん部室は超常現象クラブの部室のことで、○月○日の3時33分33秒にいけば何か分かるかもしれない」
○月○日は明後日だ。危なかったこの機会を失ったら次は一年後、ツボミは決心した。姉を探すためにこの時間に部室に行こうと。