第一話「超常現象クラブ」
4月、高校生になった藤代ツボミはある決心をしていた。
「ツボミ、お姉ちゃんが入っていた超常現象クラブに入る」
ツボミの姉、藤代サクラは5年前に行方不明になっていた。姉は超常現象クラブに所属し、部長をしていた。
その当時、警察が捜索したが姉は結局見つからなかった。5年前のサクラはなぜ、姉はいなくなったかわからなかった。
「私、超常現象クラブの部長やってるのよツボミ。だから偉いの」
そう言って姉はツボミに偉そうにしていたのはよく覚えていた。超常現象クラブに入れば何か手掛かりが得られるかもしれない。ツボミは確信はなかったが、そう思っていた。
高校も姉が入っていた大佐古高校に決めた。レベルは高くない高校だったので受験勉強は特に苦労はしなかった。あっさりと合格し、今入学式も終わり、オリエンテーションも終わった。ただ、誰も知らないのだ。超常現象クラブの存在を。
「なんで誰も知らないんだろう。もう無くなっちゃたのかな」
ただ、ツボミは超常現象クラブがあった場所だけは知っていた。姉が知りたくもないのに呪文のように喋っていたのを覚えていたからだ。
「あのね。超常現象クラブは部室棟の2階の一番奥にあるの。ペンギンが扉の前に貼ってあるからすぐ分かるはずよ。今度、一回でいいから来てよ」
そう言って、なぜか熱心に私のことを引き込もうとしていた。聞くと、部員が2人しかいなくて、来年誰も部員が入らなければ部から同好会になってしまうとのことだ。まあ、超常現象クラブがどんなことをする部活なのかは知らないけども、名前からしてろくでもないことはツボミでも分かった。そんな怪しいクラブに入ろうとする人がいるとは到底思えなかった。その時は興味がなかったので、断っていた。
ダメもとでツボミは部室棟の前まで来ていた。階段を上がり、2階まで来た。適当に奥まで歩いていくと見つけてしまったのだ。ペンギンの絵が貼ってある扉が。
「本当にあったんだけど……」
ツボミは躊躇していた。見つけたのはいいが、活動していなかったらどうしようかと。誰も知らないということは部室は残っていても、誰も活動していない可能性が高いはずだ。
「よし、行くぞ……」
誰もいないが言葉に出して、拳を胸の前でしっかりと握った。意を決して扉のノブを回して扉を開いた。
そこにはテーブルに座った茶色がかった髪をした一人の女の子がノートのようなものを読みながら座っていた。
「え……」
誰もいないかと思っていたツボミは、思わず言葉を出していた。その言葉に気が付いたのか、座って何かを読んでいた女の子も顔をあげこちらを見上げた。
「あら……珍しいわね。新入生かしら」
それが、ツボミが姉探しのスタートラインに立った瞬間だった。