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やさしい おねえちゃん ください

作者: 後藤文彦

もうすぐクリスマスだ。幼稚園(ようちえん) 年少(ねんしょう)のミルミルには 小学三年のキルキルおねえちゃんがいる。

「ミルミル、サンタさんに なに おねがい すんのや?」

おとうさんに言われて、ミルミルは考えた。ミニカーが いいかなー。びーだまころころが いいかなー。ミルミルが まよっていると、キルキルおねえちゃんが言った、

「へっ、ミルミル、サンタさん いると おもってんの? ミルミル ばかじゃないの?」

「こらっ、キルキルっ、ちっちゃい子に そいなごど 言ったら わがんねべっ」

おとうさんに おこられると おねえちゃんは さからって ますます ひどいことを 言う、

「キルキルなんて、幼稚園(ようちえん)のとき もう サンタさん じつは とうちゃんだって 知ってだよ。ミルミル まだサンタさん 信じてんだ。やっぱり ミルミル ばかだなあ。キャハハハハハッ」

キルキルおねえちゃんは いじわるだ。

ミルミルと なかよく あそんでくれる ときもあるけど、ミルミルが おねえちゃんの いうとおりに できなかったり、なにか しっぱいすると、すぐに「ばーか」だの「きもい」と言って、ミルミルを たたいたり つねったりする。

「ミルミル、やさしい おねえちゃんが ほしいなあ」

「んだなあ、それいいな。サンタさんに やさしい おねえちゃん おねがい すっか」

おかあさんが言った。

「なに言ってんの、サンタさんなんて いるわけね。ばーか」

おねえちゃんが そう言うと、おとうさんは、

「いいおんな、ミルミル。サンタさんに やさしい おねえちゃん おねがいすんだおんな」

と言った。


クリスマスの日の朝、ミルミルが目を覚ますと、おねえちゃんが ねている ふとんの中に、ものすごく大きい はこが おいてあった。ミルミルは びっくりして、おとうさん と おかあさんを 起こした、

「たいへんだっ! でっかい はこだ!」

おとうさんは、

「やっぱり サンタさん きたんだなあ。ミルミル、あげでみらいんっ」

と言った。ミルミルは、でっかい はこを つつんでいる でっかい 紙を やぶって、でっかい はこの でっかい ふたを あけてみた。中には、キルキルおねえちゃんが 入っていた。キルキルおねえちゃんは 起き上がると、ニコニコしながら

「ミルミル、やさしい おねえちゃんだよ」

と やさしく言った。おかあさんも、

「ミルミル、よかったねー。サンタさん、やさしい おねえちゃん プレゼントしてくれたんだよ」

と言った。ミルミルは、よく いみが わからなかった。でも、しばらく やさしい おねえちゃんと いっしょに いると どういうことか わかってきた。やさしい おねえちゃんは 「ばーか」と言ったり たたいたり しないし、いつも やさしく ミルミルと あそんでくれたし、おやつも ミルミルに わけてくれた。やさしい おねえちゃんは、キルキルおねえちゃんと同じ顔をして、キルキルおねえちゃんと同じ声をしていたけど、やさしい おねえちゃんは、どう考えても キルキルおねえちゃん ではない。今まで いっしょに くらしてきた あの いじわるなキルキルおねえちゃん ではない。ミルミルは、

「いじわるなキルキルおねえちゃん どこに いったの?」

と おかあさんに きいても、おとうさんに きいても、なんかい きいても

「サンタさんね、いじわる おねえちゃん を やさしい おねえちゃんに とりかえて くれたんだよ。よかったねー」

みたいにしか こたえてくれない。いじわるな ほんとうのキルキルおねえちゃん は どこに いって しまったんだろう? それから毎日、ミルミルは やさしい おねえちゃんと いっしょに くらした。やさしい おねえちゃんは ほんとうに やさしかった。でも、ミルミルは いじわるな ほんとうのキルキルおねえちゃん と 会えなくて、なぜか、さびしいと 感じた。次のクリスマスが近づいてきて、

「ミルミル、サンタさんに なに おねがい すんのや?」

と おとうさんが言った。ミルミルは、

「いじわるな ほんとうのキルキルおねえちゃん に あいたい」

と言ったら、おとうさんは、

「えー、せっかく やさしい おねえちゃん プレゼントしてもらったんだがら、もっと ミルミルの ほしいもの おねがい したら いっちゃ」

と言った。おかあさんも、

「んだんだ。おかあさんも、いじわる おねえちゃん よりも いまの やさしい おねえちゃんのまま の ほうが いい。もっとミルミルのほしい びーだまころころ とか ミニカーとか おねがい したらわ」

と言った。おとうさんも、

「んだあ、とうちゃんも、いじわる おねえちゃん なんか もう いらねえ。びーだまころころ おねがいすっぺ」

と言う。ミルミルは、どんどん かなしくなって、

「いじわるな ほんとうのキルキルおねえちゃん が ほしい!」

と なきながら、さけんだ。すると目が覚めた。クリスマスの朝だった。ミルミルの まくらもと には、プレゼントの はこが おいてあった。ミルミルが はこを あけてみると、びーだまころころ だ。ミルミルが びーだまころころ を くみたてようと していると、キルキルおねえちゃんが やってきて、

「あー、ミルミル、やりかた まちがってる。こんなのも わかんないんだ。ばーか」

と言って、ミルミルの びーだまころころ を よこどり して あそびだした。

キルキルおねえちゃんは いじわるだ。



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