第8.5話 夢の中で
今、思い返してみるとこの二日間みたいに自分で何かすることはなかった。中学一年の三学期に転校してきた私は、東京の学校に圧倒されていた。田舎の学校から引っ越せばそうなるだろうとは思っていたが、みんながモデルのような体系で、美人ばかりだ。そして、初めに話しかけたのは金森だ。すぐに、気持ち悪いやお前誰?とあざける態度をとられた。
そこからは、地味子と呼ばれながら日々一人で過ごしてきた。
ある日、お弁当を学校の屋上で一人で食べていると、そこに鈴木がやってきて、少し話しかけられたのをきっかけにどんな人なのか気になって先生に聞いてみると、みんな口をそろえて、才色兼備で学年の中心にいつもいる優しい人。そう答えた。それから、私もこんな風な人になれたらいいなと、思うようになった。
遠くから聞こえる誰かの声。だれかを呼んでいる?誰かが呼ばれている?そして振り返るとそこには笑顔な鈴木とクラスの女子が話をしていた。麻実は息をひそめながら様子をうかがった。
「杏奈は、だれが好きなの?」
「わ、私!?いきなりどうしたの?」
あまりにもいきなりの質問に鈴木はみるみる顔が赤くなっていく。
「べっ、別に好きっていうか気になってる人はいるっていうか.......そのなんていうか.......」
「そうだまりなさんな。で、だれなのその気になってる人は?」
「香口君.......かな」
その声は、麻実の中でこだました。
そして、忘れられなくもなった。
目を覚ますとそこは、教室ではなく保健室のベットの上だった。隣には、居眠りをしている香口君の姿が見えた。さっき夢の中で思い出した言葉がいまにも聞こえそうになった。
(鈴木さんは香口君のことが好き)
「月見、起きたんだ。大丈夫か?」
「まあ大丈夫。気分うなったから」
「いや、倒れてたからびくっりしたからさ」
「なんでここにおるの?舞台は、どないしたの」
すると、智樹は時計を見て「あっ」とつぶやいた。時間は、もうとうに過ぎていた。時間からするともうみんな片付けを始める時間だった。
よいお年を!今年もよろしくお願いします。