第12話 初恋(2)
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優子は、目の前にいる彼に何と声を掛けたらいいかわからず立ち尽くすばかりだった。
「久しぶりだね。ゆうちゃん」
三田は、爽やかな笑顔を見せると、優子の近くまで寄った。
「元気だった?僕も一緒に中学校いけたらよかったんだけどね」
さっきっとは違って少し寂しそうに笑うと、優子の胸をズキズキとさせる。あの日のことが蘇りそうで……怖くてたまらない。でも、目を逸らさずにはいられなかった。
「ほら、優子!大丈夫だから、なんか言ってあげよう?」
まりはゆっくりと私の後ろに回って背中を軽く押した。その反動で、三田君の顔が近くて息ができない。
「……ご、ごめんなさい」
優子が絞り出したのはあの時の謝罪だった。
「謝らなくていいよ。優子ちゃんは何も悪くない。僕が悪かったんだ。優子ちゃんのせいにすることでしか自分を保っていられなかった僕が」
「でも……」
「僕は、あの日、ゆうちゃんが作りかけの千羽鶴持ってきてくれた時はまだ僕にも居場所があるって一瞬思ってうれしかった。でも、ゆうちゃんが来る前に、中学になるまでは学校に戻れないって聞いてたからそんなのがあれば未練になりそうで怖かった……だから、ゆうちゃんにひどいこと言った。でも、何度もあの後謝りたくてゆうちゃんが来てくれるの楽しみにしてたんだ。けれど、一度も来てくれなくて……」
三田はうつむいた涙が、夕日に照らされてキラッと光った。あの日も、優子が病室を去る時こんな風だった。
「だから、今謝りたい。本当にあの時ひどいこと言ってごめん。もしよかったら、また友達としていてください」
優子は、目に涙を浮かべた。意識してないとこの涙は止まりそうもない。あの日みたいに、涙は冷たくなかった。
「私こそ、まだ友達でいて」
「もちろん!」
涙をぬぐう優子に、三田はゆっくりと抱きしめた。その手はあったかくて、包まれていて、優子よりちょっと背が高い男の子だ。優子の胸の鼓動は鳴りやまなかった。
「もう、病気は大丈夫なの?」
優子は抱きしめられながら囁く。
「もう大丈夫だって。通院は必要になるけど、夏休み後には、一緒に通えるよ」
優子のうれし泣きは止まらず夜空の涙になっていく。
「二人は、もうしっかりつながってる」
鈴木は、優子と三田君が抱き合っているのを見て少し寂しそうにつぶやいた。
「俺たちもつながってる」
鈴木は少し目を見開いて斜め下をみて、そうだね。とボソッと言った。
丘から見える星は少しぼやけて光っていた。