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第8話 トラウマの解消
放課後で、部活に行っている生徒が多く普通教室はがらんとして活気がない。教室の窓の外からは公邸で部活動をしている運動部の掛け声がリズム感よく聞こえる。
「それで私のところに来たの?」
誰もいない教室に一人、窓の外を無心で眺める月見は、深くため息をついた。熱い熱風じんわりと流れていく。
「香口君はどうしたいと思っているの?」
「時間を巻き戻したいっていうかその……」
月見の呆れた顔に目をそらすと、月見は静かに言った。
「私の魔法はそこまで完璧じゃない。それはよく知ってるでしょ?それにあんまり連発はできない」
「なんか理由があるのか?」
「それ以上言ったら協力しない」
「なんかいい案あったのか?」
少し考え込むように腕を組んで首を垂れる。
「優子さんだっけ?その子はトラウマがあるんでしょ?ならその環境を再現できればいいんだけど」
「再現って」
「自分で考えて。じゃあ私は帰るから」
くるりと方向を変えると無作為に置いてあるバックをとって教室から出ていった。その後ろを見送りながらふと教室全体を見る。西日が強く黒板の縁に反射して輝いて見えるのがなぜか不気味に感じた。